平家の落人伝説の伝わる秘境の地、祖谷山へ 山間部ならではの文化財探訪のススメ

平家の落人伝説の伝わる秘境の地、祖谷山へ 山間部ならではの文化財探訪のススメ

更新日:2013/10/16 13:24

徳島県三好市の祖谷山地区はほとんどが山地の秘境です。そのため昔からの風習がよく残されています。特に昔からの技術でつくった「かずら橋」は有名で、多くの観光客が訪れています。ところが、他にも貴重な文化財があるにもかかわらず訪れる人は少なく、なんとももったいない状況です。本記事では重要文化財の古民家2件と重要伝統的建造物群保存地区1件、さらにあわせての訪問をおすすめする2か所を紹介します。

伝統的な山村集落として価値の高い落合地区

伝統的な山村集落として価値の高い落合地区
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祖谷に訪れたなら絶対に行くべきというのがこの集落です。徳島県の山地は山の斜面を開いて集落をつくるところが多く、独特な景観をみせるのですが、この落合地区は規模も大きく古い建物も多く残るということで、文化財としての価値が高く評価されています。2005年には重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)として国の文化財に選定されました。国の保存地区になったことで、茅葺屋根の葺き替えがされたりして、伝統的な山村集落の雰囲気がより感じられるようになりました。明治34年に建てられた長岡家住宅(写真の中央少し左下の茅葺の家屋)は内部も公開されており、無料で見学することができます。保存地区内には江戸時代の中期から後期に建てられた建物が多く残っていますが、屋敷地の石垣や、里道や水路など周辺環境も昔のままです。ぜひ集落内をゆっくりと散策してみて下さい。ちなみに、写真は谷をはさんで反対側の中上地区から撮ったもので、展望台もきちんと整備されています(展望台の少し下で撮ってますけど)。

祖谷最古の民家 重要文化財の木村家住宅

祖谷最古の民家 重要文化財の木村家住宅
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祖谷に残る2件の重要文化財の古民家のうちの1つです。棟札があることから建てられた年が明らかで、元禄12 (1699)年の築。祖谷では最古とされています。古民家の中でもかなり古いものなのですが、住宅としては現役で「木村さん」が住んでいます。建物の公開されている部分ではカフェをやっています。少し高い値段ですが(たしかコーヒーが700円だったかと)、実質的には文化財保護協力金のようなものなので、ぜひ一服していって下さい。太鼓が呼び鈴のかわりになっているので、どんどんっと叩いて家の人をよんで下さい。

江戸末期築の素朴な民家 重要文化財の小采家住宅

江戸末期築の素朴な民家 重要文化財の小采家住宅
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祖谷にある重要文化財の民家のもう一つがコレ。実は数年前まで廃屋同然でボロボロの状態だったのですが、近年修復されました。天保(1830〜1844)頃の江戸末期に建てられたもので、古民家としては比較的新しく構造にも発達した点がみられます。規模の小さい素朴な建物です。ここは無料で自由に見学することができます。

とびきりの秘境を感じたいなら奥祖谷の二重かずら橋へ

とびきりの秘境を感じたいなら奥祖谷の二重かずら橋へ
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「かずら」とはつる性植物の総称ですが、かずら橋は「しらくちかずら」という植物をつかった橋です。山間の秘境らしい野趣あふれる橋です。江戸初期の文献にはこの地方に多数あったことが記されているのですが、ほとんどは現存していません。そのため、かずら橋といえば善徳地区にある橋を指すのが一般的で、重要有形民俗文化財の指定もうけています。こういった橋をつくる技術が継承されていること自体は素晴らしいのですが、秘境の雰囲気にそぐわない巨大な駐車場があったりで、満足はできないかもしれません。ということで、さらに山奥に入って、「二重かずら橋」を訪れることをお勧めします。橋は名前のとおり2つならんでいて、奥祖谷といわれるようにかなりの奥地で秘境ムードがぷんぷんしてます。キャンプ場も整備されているので、ゆっくりとアウトドアを楽しんでもいいかも。

旧喜多家住宅は山間部には珍しい武家屋敷

旧喜多家住宅は山間部には珍しい武家屋敷
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重要文化財の古民家を2件紹介しましたが、それ以外にも古い家屋が多数残っています。そのうちの大枝という集落に保存してあるのは旧喜多家住宅。宝暦13 (1763)年の築。旧喜多家も木村家や小采家と同じように茅葺の建物ですが、入口は立派な式台になっていてちょっと雰囲気が違います。これは山間部には珍しい武家屋敷なんです。式台の他にも書院風の座敷があったり、中廊下があったりと、民家とは異なった造りになっています。

建物は現在地に移築して保存してありますが、もとあった場所も同じ集落内。ここも山の中腹にあってなかなかに不便な場所です。こんな不便な場所に武家屋敷があることが不思議に感じるかもしれませんが、昔は山の中腹を伝って集落間を移動するのが一般的。不便と感じるのは、谷筋の下部に通る車道で移動する現代人の感覚なんですね。

最後に

祖谷の紹介でしたが、秘境といいつつもやはり現代日本なので、秘境ムードはいくぶん失われてしまっています。一方、祖谷の文化を守ろうとする動きもあります。本文で述べたように落合地区は2005年に国選定の重要伝統的建造物群保存地区となり、地区内で茅葺の建物を見ることができるようになりました。さらに2010年には市の「歴史的風致維持向上計画」が国の認定をうけたことで、歴史的なまちづくりがより進むことと思います。「地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律」(通称:歴史まちづくり法)に基づく歴史的風致維持向上計画の認定については下記の教育委員会のリンクを参考にして下さい。この資料は旅にも役立つと思うのでぜひご覧下さい。祖谷がどう変わっていくか楽しみですが、今しか見られない変わりつつある祖谷を体験してみてはいかがでしょうか。

掲載内容は執筆時点のものです。 2013/08/20 訪問

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