イチョウの根元に、10センチ四方のコルテン鋼のブロック約1万個を円形に敷き詰めた作品です。イチョウの緑の葉とブロックのオレンジ色の対比が鮮やかです。このイチョウは美術館の敷地にありますが、いつもは近くまで行くことはできません。今回の展示期間だけ、そばに行くことができます。
このイチョウは1945年の東京大空襲で爆撃を受けたといわれ、70年もの歳月を生き抜いてきました。作家は自らの仕事を「風景芸術」と呼び、ここにも新たな風景を誕生させました。
【写真】田窪恭治《感覚細胞−2016・イチョウ》2016年
展示室に入ると木の香りが広がり、10メートルを超える天井の近くまで丸太が積みあがっています。大きな渦のようにも、大蛇のようにも見え、エネルギーの源のようでもあります。丸太の間にはところどころに手のひらにのるほどの大きさの陶片が挟まっています。作品のタイトルはイタリア語で記されたイタリアのことわざです。この作品をつくるのに2週間かかったそうです。作家は「静かに行く人は、遠くに行く。」ことができたのでしょうか。
【写真】國安孝昌《CHI VA PIANO VA LON TNANO 2016(静かに行く人は、遠くに行く。)》2016年
作家は木を削って色を付け、精密で繊細な本物のような草花の作品をつくり、展示する場所も含めて、ひとつの作品にします。写真の《バラ》にはたくさんの小さな穴が開いていて、光が漏れています。見過ごしそうな場所に作品が置いてあることが多く、どこかにそっと隠れている草花を見つけるもの楽しいものです。
ギャラリーAに3点、館内のアートラウンジ、美術情報室にそれぞれ1点ずつが展示してあります。ぜひ、見つけてください。
【写真】須田悦弘《バラ》2016年
暗い入口から入ると、ぬくもりを感じるような肌の動物たちが待っています。近くに寄って、立つ位置を変えながら見ると、表情が違って見えます。写真の《子犬》はもう少しすると目を開けて歩き出しそうです。
作家は犬や猫のような身近な動物、麒麟や竜のような神話や伝説の動物を、木を彫刻して色を付けてつくります。目には水晶やガラスが入っているので、動物たちに表情があるように見えるのです。《羊》には細い巻き毛が描かれ、《縞猫》は木目が縞もようのようです。《獅子》はわずかに着色し、木の肌を生かしています。
【写真】土屋仁応《子犬》2011年 個人蔵
提供元:撮影:齋藤さだむ
http://www.tobikan.jp/作家は一貫して木彫による肖像をつくってきました。像の眼は大理石に色を付けています。その眼はぼんやりと遠くを見つめるようですが、しっかりとした意志をもっています。
《水に映る月蝕》《言葉をつかむ手》《遠い手のスフィンクス》など、タイトルの詩的な言葉にも心を留めて見てください。
作家は彫刻に取り掛かる前にイメージを具体化するため素描を描き、刻むべき形を探ります。今回は素描も展示されています。
【写真】舟越 桂《海にとどく手》 2016年 作家蔵
東京都美術館はJR上野駅「公園口」から歩いて7分、隣には恩賜上野動物園があります。美術館の周りには大きな木がたくさんあって、木に守られているようです。「木々との対話」展を見た後の帰り道は、木々が少し違って見えるかもしれません。
「木々との対話――再生をめぐる5つの風景」展
2016年7月26日(火)〜10月2日(日)
東京都美術館
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(2024/4/19更新)
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