岐阜・秋の高山祭(八幡祭)は歴史と伝統あふれる美祭の舞台

岐阜・秋の高山祭(八幡祭)は歴史と伝統あふれる美祭の舞台

更新日:2016/09/03 17:50

和山 光一のプロフィール写真 和山 光一 ブロガー
日本三大美祭として名高い「高山祭」。10月9・10日の2日間、飛騨路の中心都市、高山市で盛大に催される秋の八幡祭は、華やかな屋台に代表される飛騨匠の技を目の当たりにすることのできる時代絵巻の舞台です。町のあちこちに歴史と伝統が息づく情緒あふれる古い町並みが残る飛騨高山。秋の足音が聞こえ始めるこの季節に相応しいこの町で、時の流れを感じつつゆっくりと散策しながら、祭りの宴に入り込んでみてください。

季節を告げる屋台の列「高山祭」

季節を告げる屋台の列「高山祭」

写真:和山 光一

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飛騨の山里を華麗に彩る高山祭は、春の山王祭と秋の八幡祭のふたつをさす総称です。16世紀後半から17世紀の起源とされていて、その伝統は飛騨高山の人々に受け継がれてきました。仁徳天皇65年に、2面4手4足の両面宿禰という怪人を難波根子武振熊に命じて征伐させた際、戦勝祈願して祀られたと伝えられるのが櫻山八幡宮です。

毎年10月9日10日に行われる秋の高山祭と呼ばれる八幡祭は、旧高山城下町を流れる宮川の北半分の氏神で、戦の神である応神天皇を主祭神としているその櫻山八幡宮の例祭なのです。安川通りの北側・下町に国の重要有形文化財である11台の屋台が曳き揃えられ、八幡祭だけの屋台曳き廻しも執り行われます。からくり奉納や宵祭などの伝統行事も見所です。

秋めいた紅く色づいた木々の中、古い町並にきらびやかに繰り広げられ、まさに一枚の錦絵さながらの美しさを描きます。

伝統衣装をまとった人々が古(いにしえ)を偲ばせる「御神幸(祭行列)」

伝統衣装をまとった人々が古(いにしえ)を偲ばせる「御神幸(祭行列)」

写真:和山 光一

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巡幸行列は、獅子舞、大太神楽、闘鶏楽、雅楽、一文字笠の裃姿の屋台警護などの数百人にのぼる盛大なものです。動きのある獅子舞、太太神楽、地元で「カンカコカン」と呼ばれる鉦を打ちながら練り歩く闘鶏楽に雅な音楽を奏でる雅楽など伝統の装束をまとった人々が、現代にタイムスリップしたようで飽きることがありません。台名旗を立てた台車である旗指し台を曳く氏子の装束も屋台組によって模様が異なり、昔ながらの装束も見どころのひとつなのです。町を巡ったあとは御旅所に集まり八幡宮に戻ります。

櫻山八幡宮の表参道にずらりと並ぶ豪華絢爛「屋台曳き揃え」

櫻山八幡宮の表参道にずらりと並ぶ豪華絢爛「屋台曳き揃え」

写真:和山 光一

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秋の高山祭「屋台曳き揃え」には、「動く陽明門」といわれる国の重要有形文化財である屋台10台が櫻山八幡宮正面の記念道路(表参道)に一斉に勢揃いします。布袋台だけは、からくり奉納のため9日・10日とも八幡宮境内に置かれます。それぞれの台紋が付いたはっぴを着た屋台組の男たちが、そのすぐ傍らで屋台を見守っています。

高山祭の屋台は、桃山時代の煌びやかな美術と建築を母体としています。屋台の隅々まで施された繊細な彫刻や透かし金具などの金工、屋台を華やかに彩る胴幕や見送り幕、そして屋台それぞれの飾り人形など、その華麗な意匠を細かな部分まで鑑賞でき、職人たちの技に感動し、見ていて飽きることがありません。

春祭より一台少ない11台の個性豊かな屋台は、回を重ねるごとに他の屋台よりも美しく、豪華にと装飾を競い合ってきました。江戸中期、天領として幕府が直轄地としたほどに経済的な潤いを見せたことや、飛騨の匠と呼ばれる凄腕の大工や塗師、彫刻師たちの高い技術がそれを後押ししてきたといいます。

八幡宮だけの特別な祭行事「屋台曳き廻し」

八幡宮だけの特別な祭行事「屋台曳き廻し」

写真:和山 光一

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動く屋台の魅力を堪能するなら、表参道から出発する八幡祭だけの特別な祭行事「屋台曳き廻し」です。、毎年登場する神楽台と鳳凰台に抽選で選ばれた2台が合わさって合計4台の屋台が、大空の下町をゆっくりと巡り、優雅な姿をみせてくれます。高山祭屋台独特のしなやかな動きが観賞できますよ。高山の屋台の大きな特徴はその台座と車輪にあり、戻し車と呼ばれる車輪を使い、屋台の向きを変える技術などや特に角を曲がるときに車軸を利用し180度方向転換する様はまさに圧巻と言える見ごたえです。

秋祭りの見ものは最高傑作との誉れ高い「布袋台」の「からくり奉納」

秋祭りの見ものは最高傑作との誉れ高い「布袋台」の「からくり奉納」

写真:和山 光一

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桜山八幡宮の境内では、祭りの両日に午前と午後の2度ずつ「布袋台」のからくりが上演されます。上演の時間は20分ほどですが、秋祭のからくり屋台はこの布袋台だけですので、是非お見逃しないように。からくり人形は高山屋台の特徴のひとつ。様式にこだわらない高山の人たちが、上方のものであったからくり人形を組み込み、見所の一つとして取り入れたものです。

このからくりは、綾渡りと呼ばれる三十六条の手綱を八人の綱方で布袋と二人の唐子を操るのですが、唐子が布袋の手を離れて綾と呼ばれるブランコを回転しながら飛び伝ってゆくという巧妙なものです。このからくり屋台の仕組みは全国でも稀にみる複雑さで、唐子がブランコを無事渡り終えて布袋の肩に乗ると、観客からは大きな拍手が巻き起こります。ここから布袋に肩車をされていた唐子が浮く妙技は最高傑作といわれていて、見物客のため息を誘います。

文化の結集・高山祭

絢爛豪華な祭屋台が飛騨高山の町を練り歩く高山祭の起源は、飛騨の領国大名金森氏の時代(1585年から1692年)、屋台の起こりは1718年頃といわれています。今回ご紹介した秋の高山祭(八幡祭)と春の高山祭(山王祭)を総称して高山祭と呼ばれます。

春の高山祭は毎年4月14・15日に行われ、通称・春祭と呼ばれる山王祭です。この祭は高山市城山に鎮座し、高山市を中心に宮川の南半分の氏神となっている日枝神社(山王様)の例祭です。この時期の高山市は新緑と桜に彩られ、まさしく春の訪れを告げるお祭りです。朱色欄干が美しい中橋を渡る屋台の写真は有名です。

春秋の2度にわたって繰り広げられる高山祭の日程は、土日、祭日に関係なく毎年決まった日に行われるので、見る機会も限られます。そんな人のためにいつでも祭が見学できる施設が、櫻山八幡宮のすぐそばにある「高山祭屋台会館」です。屋台は通常町中にある屋台蔵に納められていますが、八幡祭の屋台11台は、年3回の入替展示で1年中、ここで一般に公開されています。

祭りのスケジュールは開催一カ月前に決定されるのでホームページで必ず確認してお出かけください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2015/10/10 訪問

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