江戸時代初期、城下町としてスタートした高岡市。しかし一国一城令によって高岡城が廃城になり、町は存続を賭けて商業・工業都市として舵を切ったという歴史があります。武士の町・金沢とは対照的に商人や職人から成る、町人の町として発展してきました。
さて、高岡の中心地として栄えた山町筋(やまちょうすじ)に、お洒落な雰囲気の1軒のスタジオが。
古い町家が利用されているこの建物、表玄関からはカフェか何かのようにも見えます。中の賑わいと活気につられて、一体ここはなにをしている場所なのかな?とつい玄関をくぐってみたくなります。
実はここ「HAN BUN KO(はんぶんこ)」は、高岡の伝統的な産業技術を用いて、昨今「高岡クラフト」と呼ばれる現代的な作品を生み出している作家の商品を並べたギャラリー・ショップと、ものづくりを実際に体験できるスタジオで構成された、ものづくりの精神をカタチにしたテーマパークなんです。
来訪者がものづくりを体験できるワークショップが開催されていますが、特に人気なのが、「錫(すず)でのぐい呑作り」です。現代の高岡では錫製品の生産も盛んですが、もともと一番の長い伝統産業である銅器は、型に金属を流し込んで作る鋳物です。錫製品にも培ってきた鋳物の技術が利用されています。
融点の低い錫は扱いやすい金属で、ワークショップで作るのに向いているそう。鍋の中に入れて家庭用のガスコンロの熱で溶かすことができます。参加者が自分で砂を固めて作った型にそれを流し込み、冷えて固まったものを磨き立てると完成。ちょうど写真はその、磨き立てる工程を行っているところです。出来上がったこのオリジナルのぐい呑で、富山の美味しい日本酒を味わうと、また格別の味が楽しめそうです。
ぐい呑作り体験は事前申し込みが必要なので、注意事項などと合わせてMEMOのリンクで確認してくださいね。他にもワークショップやイベントが開催されているので、同じくMEMOの公式サイトでチェックしてみてください。
さて、山町筋でもひときわ目をひくかつての豪商菅野家の向かいに、こぢんまりとしたセンス溢れるお店があります。手作り和雑貨のお店「いっつ」です。やはり古民家を利用したお店で、もともとは同じ高岡市の別の町で営業していましたが、縁あってこの山町筋で店をリニューアル・オープンしたそうです。場所は、高岡市出身、明治時代の作曲家室崎琴月の生誕の家とのこと。歴史を感じさせる店の中には、古い布を使ってひとつひとつ手作りで丁寧に作られた作品が所狭しと並んでいます。ちりめん細工や、ポーチ、人形、タペストリー、どれもこのレトロな町並みにしっくり馴染むような空気をまとっています。
店では和小物を作る教室も開催していますが、作品の土台に使う布は、非常に吟味されたものであることが人気を呼んでいます。年代や素材にこだわった縮緬などの、古くて上質な布で作られた作品はどれも、飽きのこないものに仕上がっています。
富山県は、重厚な作りの、広い日本家屋の多い土地柄です。なるほど、この店で扱う、和風の布を押絵の技法を用いて作られた暖簾やタペストリーなどは、そのような広大な屋敷によくマッチするものばかりです。そして長持ちする重厚な家同様に、その落ち着いて心温まる雰囲気の和小物たちも、いつまでも大切にしたいと思わせるものばかり。
この富山ならではの日本家屋に合うように発展してきた現代のインテイリア布小物をお土産に見立てて持ち帰り、お部屋のイメージチェンジをしてみるのはいかがでしょうか。
他にも古い着物や骨董品も扱われており、商品を眺めているだけでも楽しいお店です。
最後にご紹介するのが、「COMMA, COFFEE STAND」です。COMMA(コンマ)は、山筋町のひとつ小馬出(こんまだし)町にちなんでいます。東京在住だったオーナーの大菅夫婦は、東日本大震災後、生活の拠点を故郷の富山県に移し、この店をオープンされたそうです。
ホテルやレストランで仕事をしてきた中で、コーヒーという飲み物を通して人とのつながりの生まれるバリスタという職業に魅力を感じるようになったという妻の麻希子さん。故郷の高岡の山町筋にある古い商家が利用されず空いているのを利用しないかという話がちょうど、建築の仕事をして、まちづくりにも関わり始めていた夫の洋介さんの元に入ってきます。それをきっかけに夫婦でカフェを始める夢を実現させていくことになりました。
元々、古いものをすぐ壊すのではなく、それを活かして長く使うということを念頭に仕事をしてきたという洋介さん。その思いに共感していた麻希子さんとふ たりで、なるべく元の古い建物を生かしたお店を手作りしてきたそうです。例えば、一度他の施設に利用されたときに、内部の壁をリノベーションしてあったそうなのですが、それを取り除いて、せっかくなので残っていた昔ながらの土蔵の壁を見せて、その風合いを生かすことにしたそう。また、建物に昔から使われていた扉も、別の場所に移して利用しています。
長い時を経た古い家だけが持つ美しさに、現代ふうのアレンジも自然に調和して、なんとも居心地のいい、それでいてスタイリッシュな空間となっています。いつでも観光客と地元の人で賑わっている店として知られるようになりました。
さて、このお店の一番人気はなんといっても特製シュークリームです。大菅さんが惚れ込んだという東京の人気店、「菓子工房ルスルス」でこのシュークリーム の作り方を教えてもらい、試行錯誤を重ねて完成したそうです。地元高岡の前崎養鶏の卵と、やはり富山県、八尾町で生産された低温殺菌牛乳から作られたカスタードクリームが たっぷり詰まっており、東京の人気店と富山の素材のコラボレーションから生まれた、究極のシュークリームとなっています。丁寧に生産された卵の滋味溢れる、豊かで優しい 味わいは、いくつでも注文したくなる美味しさですが、このシュークリーム目当てのお客さんがあとを絶えないので、さすがに独り占めはできません。でもどう してもあとひとつ食べたくなる、そんな美味しさです。
シューの生地はまとめて作るのではなく、1日に何度もこまめに焼いて、しかも注文を受けてからカスタードクリームを絞っているそう。できたての美味しさは格別です。 またコーヒー豆もシングルオリジンにこだわって吟味しているそうで、シュークリームをお供に香り高いコーヒーが味わえます。
他にも、生産者の顔が見える地元産の素材を生かした食事メニューも評判で、週に3度もランチを食べに通う常連さんもいらっしゃるそう。 食事のメニューはランチタイムだけでなく、夕方のラストオーダーまで注文できます。 金曜日・土曜日のみ夜22時まで営業。アルコールのメニューと、アラカルトのおつまみもあるので、山町筋のゆったりとした夜の時間の流れをこちらで感じてみてはいかがでしょうか。
いかがでしたか?
土蔵作りの個性的な建築物を眺めるだけでも楽しめる山町筋ですが、この通りの魅力と共鳴しあう個性が光る、3つのおすすめスポットをご紹介したので、ぜひぜひ立ち寄ってみてくださいね。
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