“その日”空を見続けた人の記録が残る・広島「江波山気象館」

“その日”空を見続けた人の記録が残る・広島「江波山気象館」

更新日:2016/09/14 15:45

麦吉 ぼにのプロフィール写真 麦吉 ぼに ライター、イラストレーター
広島市の南西にある「江波山気象館」は、全国でも珍しいお天気の博物館。かつて広島地方気象台だったこの建物は「被爆建物」、原爆をくぐり抜けて現在に残る貴重な建築遺産です。ここには、気象台だった頃の原爆当日の当番日誌が残っています。気象ファンや建築ファンはもちろん、もっと多くの人に訪れて欲しいスポットです。

古き良き時代の面影を残す、優美な表現主義建築

古き良き時代の面影を残す、優美な表現主義建築

写真:麦吉 ぼに

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広島市江波山気象館(旧広島地方気象台)は、昭和9年に建築された鉄筋コンクリート造。昭和初期の鉄筋コンクリート建築ですが、建物のあちこちに意匠をこらした美しい装飾が施され、まるで石造りの古典建築のようです。

広島市の重要有形文化財に指定されているこの建物は、広島県でほぼ唯一の表現主義建築。近現代の建築が好きな方には、一見の価値アリ!です。

8月6日も途切れることなくつづられた当番日誌

8月6日も途切れることなくつづられた当番日誌

写真:麦吉 ぼに

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2階への階段を上がってすぐに、「気象台の思い出」という部屋があります。ここには、気象館が広島気象台だった当時の記録が残されています。

1945年8月6日原爆投下の日、被爆地から約3.6q離れた気象台では、爆風で窓ガラスが吹き飛び、多数の怪我人が出ました。それでも気象台職員の方たちは、怪我人を救護しながら気象観測を続けています。原爆雲という見たこともない雲が発生して猛烈な黒い雨を降らせた、その経過が克明な記録として残っています。ガラスが刺さった壁や曲がった窓枠、そして書き続けられた記録を読むと、あの日懸命に空を見続けた人を思わずにはいられません。

広島の街を一望する屋上から双眼鏡でタイムスリップ

広島の街を一望する屋上から双眼鏡でタイムスリップ

写真:麦吉 ぼに

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江波山気象館へ来たら、ぜひぜひ屋上へ行ってみましょう。さすが元気象台だけあって、屋上は広島市街から宮島までを一望できる最高のビュースポット。ベンチもあるので、のんびりと広島市街を一望できます。

写真は旧館の測風塔。片袖の上り階段や幾何学模様にくり抜かれた壁など、美しい装飾の建屋です。ここも立ち入り可能なので、ぜひ上ってみてください。瀬戸内海の多島美がすぐ目の前に広がっています。

風向風速計の向こうの空に、のんびり流れる平和な雲

風向風速計の向こうの空に、のんびり流れる平和な雲

写真:麦吉 ぼに

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屋上には双眼鏡がたくさん設置されていて、無料で見ることが出来ます。気象館の入館料はわずか100円(2016年現在)!観光地なら双眼鏡をのぞくだけで100円かかるのに、なんとも大らかな料金設定ではありませんか。

屋上のベンチに座り、海風に吹かれながら回る風向風速計と青く広がる空を見ていると、シンプルに、何よりも平和が大切としみじみ思ってしまいます。

突風カプセルやタイフーンボックス、自由研究にもぴったり!

突風カプセルやタイフーンボックス、自由研究にもぴったり!

写真:麦吉 ぼに

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旧広島地方気象台、現在は「江波山気象館」というお天気の博物館です。2階には風速20mの風が体験できる「突風カプセル」や30万ボルトの落雷を再現する「フランクリンの実験室」など、気象体験コーナーがあります。

写真は、人工的に作った台風の眼の中に入れる「タイフーンボックス」、雲の中気分が楽しめてお子さん連れにもオススメです。情報コーナーでは、自分が生まれた日の広島の天気もわかっちゃう。気象館は、夏休みの自由研究に最適です!

広島市内観光、ちょっとだけ足をのばして江波山気象館へ

江波山気象館は、市内中心部から少しだけ離れているため観光で訪れる方は少ないのですが、ここには素晴らしい気象と歴史と建築の記録があります。広島へ旅行を計画する時は、ほんのちょっと足を伸ばして、「江波山気象館」を訪ねてみてください。

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掲載内容は執筆時点のものです。 2016/06/20 訪問

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