飛田遊廓、嘆きの壁!大阪・通天閣界隈のディープスポット5選

飛田遊廓、嘆きの壁!大阪・通天閣界隈のディープスポット5選

更新日:2021/03/15 13:20

沢木 慎太郎のプロフィール写真 沢木 慎太郎 放送局ディレクター、紀行小説家
“大阪のエッフェル塔”で知られる通天閣。お隣には天王寺動物園があり、大阪観光で外せない人気スポットです。でも、串カツ店が並ぶジャンジャン横丁を行けば、昭和レトロな商店街と町並みがあり、かつての新世界や阿倍野界隈の面影を残しています。江戸時代には鳶田(飛田)墓地や刑場があり、大塩平八郎が処刑された地。付近には近松門左衛門の碑や、大正時代の飛田遊廓や嘆きの壁も。大阪で最もディープな場所をご案内します。

昭和レトロと哀感!飛田本通商店街

昭和レトロと哀感!飛田本通商店街

写真:沢木 慎太郎

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Osaka Metro(大阪メトロ)の「動物園前駅」。御堂筋線ホームの東改札口を抜け、1番出口を出ると、ジャンジャン横丁を通り、通天閣・天王寺動物園へ。

反対の2番出口を出ると、“ディープなタウン”として最近、売り出し中の商店街が見えます。ここが、「飛田本通商店街 (動物園前一番街・二番街)」。ノスタルジックな街並みに漂う、そこはかとない哀感と、レトロな美しさを感じたい方におすすめのスポットです。

昭和レトロと哀感!飛田本通商店街

写真:沢木 慎太郎

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レトロな喫茶店や居酒屋、レストランが並び、B級グルメの宝庫。雑貨・衣料品店、劇場、銭湯。スーパー玉出も店舗を構えています。

薄暗く、人通りが少なく、「治安は?危険では?」と思われる方も多いでしょう。かつて西成区の飛田地区に住んでいたので、ここが怖いという感覚がないのですが、地元の女子高生や若い女性が普通に歩いている姿も見かけます。

昭和レトロと哀感!飛田本通商店街

写真:沢木 慎太郎

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飛田本通商店街は、江戸時代に処刑場や鳶田(飛田)墓地があった太子と、「飛田新地(とびたしんち)」がある山王の境を通るアーケード商店街。飛田遊廓(とびた・ゆうかく)が開業した1916年(大正5年)ごろに自然発生的に店が増え始めたのが、商店街のはじまり。

レトロな商店街沿いには、老舗の大衆演劇場もあるので巡ってみましょう。旅まわりの役者さんにも会えますよ。新世界や阿倍野界隈はすっかり観光地になりましたが、今でも昔とほとんど変わりません。

<飛田本通商店街の基本情報>
住所:大阪府大阪市西成区太子
アクセス:Osaka Metro「動物園前駅」すぐ

心霊パワースポット!松乃木大明神

心霊パワースポット!松乃木大明神

写真:沢木 慎太郎

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飛田本通商店街の路地裏に、ひっそりたたずむ小さな神社が「松乃木大明神(まつのきだいみょうじん)」。霊木の松はすでになく、霊力は地中に。

聖域は独自のオーラが放たれ、空気の質が明らかに違います。霊感の強い方であれば、ぞっとするような怖いほどの心霊パワーが感じられ、厳かな気配に身震いすら感じるのではないでしょうか?

心霊パワースポット!松乃木大明神

写真:沢木 慎太郎

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神社内にある「猫塚」もディープ。三味線の胴の形をしていますが、これは三味線のために犠牲となった猫たちの供養塔です。

繊細で軽やかな良質の音を出すためには、薄い猫皮が必要。飛田遊廓の時代も、芸事で三味線を使うことが多く、遊芸関係者の寄付金で1901年(明治34年)に建てられました。

心霊パワースポット!松乃木大明神

写真:沢木 慎太郎

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近松門左衛門の碑も、見どころのひとつ。『曽根崎心中』の代表作で知られる、江戸時代の人形浄瑠璃(文楽)の脚本家、近松門左衛門を顕彰した記念碑です。

「松乃木大明神」も、飛田墓地や処刑場があった太子に位置し、この付近は自爆した大塩平八郎の遺体が磔(はりつけ)にされた場所。すぐ近くには、太子という地名の由来になり、飛田墓地内にあった「太子地蔵尊」があったのですが、残念ながら撤去されました。

<松乃木大明神の基本情報>
住所:大阪府大阪市西成区太子2丁目3−19
アクセス:Osaka Metro「動物園前駅」から徒歩約5分

神田川の哀感!山王市場通商店街

神田川の哀感!山王市場通商店街

写真:沢木 慎太郎

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「山王市場通商店街」もディープ。飛田本通商店街のスーパー玉出今池店前から、枝分かれしているアーケード商店街。こちらも古い商店街特有の温かみがあります。ゆるくS字に曲がり、理想的なカーブが美しい。

神田川の哀感!山王市場通商店街

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道幅が狭く、昔ながらの和菓子屋や韓国居酒屋、パブ、昭和レトロな大衆食堂、居酒屋、立ち飲み屋が並んでいます。

生活感あふれる商店街には、ドヤ街、釜ヶ崎・あいりん地区に不可欠な下町銭湯があり、まるで1970年代のフォークソング『神田川』の世界にまぎれこんだよう。行燈(あんどん)のような電飾看板にも郷愁を誘われます。

神田川の哀感!山王市場通商店街

写真:沢木 慎太郎

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写真は、まるで時代劇に出てくるような大衆食堂。レトロな美しさがひっそり輝いています。古き良き日本の風景と町並み。大阪の真ん中で、ディープなタイムトラベルを体験できます。

<山王市場通商店街の基本情報>
住所:大阪府大阪市西成区山王
アクセス:Osaka Metro「動物園前駅」から徒歩約4分

龍神パワーも!新開筋中央商店街

龍神パワーも!新開筋中央商店街

写真:沢木 慎太郎

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「新開筋中央商店街」は、山王市場通商店街と並行するアーケード商店街。シャッターを閉めた店舗を多く見かけますが、明りの灯る赤ちょうちんもあり、こちらも昭和フォークの『赤ちょうちん』『赤色エレジー』、さらには宮城まり子の歌『ガード下の靴みがき』の哀感が漂います。

龍神パワーも!新開筋中央商店街

写真:沢木 慎太郎

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色あせたアーケード。レトロな照明。公衆電話。古い木造家屋。コクヨの看板も泣きたくなるくらいに昭和レトロ。

写真は、街角のタバコ屋さん。赤いちょうちんが店先にぶらさがっています。セピア色の街に、赤いポストが色鮮やかに映え、とても美しい。

龍神パワーも!新開筋中央商店街

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さきほどのタバコ屋さんの真向かいは、飛田遊廓の北門跡。白龍の優美な彫刻を見ることができます。この場所は、「北門白龍大明神(五龍神結界)」。商店街沿いにあります。

飛田地区には昔、大きな池があり、大蛇が棲んでいたことから、「天龍」「白龍」「黒龍」の3つの大明神を祀り、飛田遊廓を戦災から守ってくれたと信仰されています。

飛田遊廓付近は良質な水脈が多く、5龍神(天龍、金龍、銀龍、黒龍、白龍)の結界で守られていました。「龍神信仰や日本の伝統美をいつまでも残したい」という地元の熱い想いが、歴史から消えていた「北門白龍大明神」を復活。飛田のパワースポットも、ぜひ巡ってください。

<新開筋中央商店街の基本情報>
住所:大阪府大阪市西成区山王
アクセス:Osaka Metro「動物園前駅」から徒歩約5分

飛田新地の遊廓建築、嘆きの壁も

飛田新地の遊廓建築、嘆きの壁も

写真:沢木 慎太郎

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「飛田新地」とは、大阪市西成区の山王地区にあった遊廓街「飛田遊廓(赤線)」の通称。大正時代に築かれた日本最大級の遊廓街です。通天閣の新世界からほど近く、昭和初期には200軒を超える妓楼が並んでいました。

1958年の売春防止法施行後からは料亭街となり、非常に貴重な木造の遊廓建築が数多く残っています。なかでも、写真の「鯛よし百番」は現存する遊廓建築としての歴史的価値が高く、2000年に国の登録有形文化財に登録されています。

飛田新地の遊廓建築、嘆きの壁も

写真:沢木 慎太郎

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日が暮れると、ちょうちんに明かりが灯り、独自の風情が漂います。「百番」という屋号は、遊廓でも最上級の格。日光東照宮の陽明門をイメージした応接間や、安土桃山時代風の豪華絢爛な装飾が素晴らしい。幽霊が出てきそうな独自の雰囲気もたまらない。
赤ちょうちんの遊廓建築は、アニメ映画『千と千尋の神隠し』や『鬼滅の刃遊郭編』の世界観も感じられます。

風情が漂う街並みですが、「鯛よし百番」以外の遊廓建築の写真撮影は厳禁。観光地ではないので、冷やかしや遊び半分で訪れると、きびいしい目を向けられます。一般女性の立ち入りも厳禁です。

飛田新地の遊廓建築、嘆きの壁も

写真:沢木 慎太郎

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飛田遊廓の大門(おおもん)跡もすぐ近く。飛田遊廓は当時、高い壁がぐるりと取り囲んでいました。これは遊女が逃げ出さないよう、外の世界から切り離すための壁。“嘆きの壁”と呼ばれ、今も一部が残っています。

借金の肩代わりとして、身売りに出された女性。壁の外に出ることができず、死ぬまで働かされ、若くして病気で亡くなった女性も多いです。

親のために働き、家族に看取られることなく亡くなった女性も多く、彼女たちの悲しみをいつまでも忘れないよう、地域が大門を守り続けています。

<鯛よし百番の基本情報>
住所:大阪府大阪市西成区山王3丁目5−25
電話番号:06-6632-0050(要予約)
アクセス:Osaka Metro「動物園前駅」から徒歩約10分

ディープな街!孤高の旅人におすすめ

通天閣(新世界)や天王寺動物園。「あべのハルカス」がある阿倍野地区は、大阪の人気観光地。でも、すぐ近くには昭和レトロな街並みが今も残っています。観光地ではないのですが、大阪の歴史や文化をより深く感じることができるディープなスポット。

遊廓建築は、女性の人権と尊厳が損なわれた「負の遺産」とする見方もありますが、飛田新地の「鯛よし百番」は、嘆きの壁のなかで愛を求めた女性の悲しみを今に伝え、大阪にゆかりのある文人たちの聖地にもなっています。文学賞を受賞したり、小説や詩を出版したりすると、大正時代の遊廓建築の料亭で祝賀パーティが開かれるのです。

そのパーティに出席したことがありますが、「文学を志すのであれば、闇に光をあてなさい」と作家先生から教えられたことがあります。そんな闇と光を感じたい、孤高の旅人に、ご紹介したスポットはおすすめです。

なお、大阪でおすすめのディープスポットなどについてもまとめていますので、ご興味のある方は関連MEMOに張り付けたリンクからのぞいてみて下さい。

2021年3月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2013/09/29−2021/03/03 訪問

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