日本で唯一の「黒い聖母マリア」を抱く山形県「カトリック鶴岡教会天主堂」

日本で唯一の「黒い聖母マリア」を抱く山形県「カトリック鶴岡教会天主堂」

更新日:2016/12/03 13:46

今村 裕紀のプロフィール写真 今村 裕紀 旅先案内人
思わずここは何処?と思わせるほどの素敵な洋館が密集する街、山形県「鶴岡」。日本海側の街、鶴岡の鶴岡公園周辺には、白亜の洋館が密集しているのです。そのなかでもひときわ異彩を放つのが、「カトリック鶴岡教会天主堂」です。それは、世界的にも珍しいマリア像や独自の技法で作られた「窓絵」など、国内ではこの教会でしか見られないものばかりだからです。そんなちょっと気になる教会の魅力をご紹介します。

赤い尖塔が目を引く白亜の「カトリック鶴岡教会天主堂」

赤い尖塔が目を引く白亜の「カトリック鶴岡教会天主堂」

写真:今村 裕紀

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JR羽越線鶴岡駅からバスや車で10分、鶴岡公園のほど近くに建つ、赤い尖塔がひときわ目を引く白亜の「カトリック鶴岡教会天主堂」。この聖堂は、この地で永らく布教に努めていたフランス人ダリベル神父の全財産と寄付により、明治36年(1903年)に庄内藩家老の屋敷跡のなかに建てられたものです。いまでも屋敷門だけは残っていて、「天主堂」の大きな木札が掛った屋敷門をくぐると、教会が現れるというアンバランスに不思議な気持ちにさせられます。

この天主堂は、フランスの教会をイメージして建てられたと言われ、ロマネスク様式の教会建築の傑作として、昭和54年(1979年)に国の重要文化財に指定されています。街中からも赤いとんがり屋根と十字架が美しく映えて、とても目立ちます。

白亜のアーチの空間で祈りを捧げて

白亜のアーチの空間で祈りを捧げて

写真:今村 裕紀

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天主堂の扉を開けると、高い天井の曲面が美しい聖堂が目の前に現れます。そうして白い空間のなかに踏み行った途端に、清々しさにつつまれ、祈りの場であることを肌で実感させられます。中央の身廊部には高い天井が、左右の側廊部の低い天井には、交差する曲面で構成されたこうもり傘天井が用いられ、それらが4本の肋骨で分割されて支えられています。この内部の構造は、古くローマ時代の王宮の謁見広間の建築様式が用いられています。こうした構造が採られているのも、入口を入ったすぐの頭上2階に設置されたパイプオルガンの音色や讃美歌の声などの、最もよい音響効果を引き出すためとされています。

正面には一段高く祭壇が据えられて、最上段に「イエス・キリスト」が、一段下がった祭壇の左に「小さき花のテレジア」が、その右には「フランシスコ・ザビエル」が祀られて、この二聖人を祀ること自体、珍しいとされています。キリスト教信者でなくとも、この祭壇の前にたつと、思わず、身の引き締まる思いがします。

日本で唯一の「黒い聖母マリア」像

日本で唯一の「黒い聖母マリア」像

写真:今村 裕紀

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聖堂左側の副祭壇に「黒い聖母マリア」像が祀られています。 明治36年(1903年)に献堂記念として、フランス・ノルマンディー州のデリブランド修道院から寄贈されました。これは、同教会にある「黒い聖母マリア」像の複製として、フランスで作られたものです。日本にある「黒いマリア像」はこの一体のみで、世界的にも貴重なものと言われています。マリア様と胸に抱いている赤子のキリスト様までが黒です。

なぜ、像の顔が黒いのかは、いくつか説がありますが、旧約聖書のソロモン雅歌に、聖ルカによる原肖像画のマリアの顔が熟した小麦のように栗色であった、ということがひとつの理由とも考えられています。けれど、やはり、謎多き「マリア像」です。

天主堂の「窓絵」これも日本ではここだけ!

天主堂の「窓絵」これも日本ではここだけ!

写真:今村 裕紀

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教会の窓を飾るものといえばステンドグラスですが、この天主堂の窓には、ステンドグラスとは異なる独自の技法でつくられた「窓絵」と呼ばれる聖画が嵌め込まれていています。この「窓絵」は、薄い透明の紙に描かれた、「貼り絵」と言われている聖画を二重になっている窓ガラスの内側に貼り、さらにその両側から二枚のガラスで挟んだもので、高価なステンドグラスに代えてのものと考えられますが、こうした「窓絵」は日本のどの教会でも、ここでしか見ることが出来ません。

ロマネスク寺院特有の半円のアーチ枠におさめられた「窓絵」に四季の陽光が差し込むと、聖なる空間が、この「カトリック鶴岡教会天主堂」の内に作り出されます。すると、光に照らし出された十数枚の「窓絵」たちは、訪れた人たちに、おごそかに物語を語り始めるのです。

開かれた重要文化財の教会

開かれた重要文化財の教会

写真:今村 裕紀

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教会の礼拝堂に入る、という経験や機会は、なかなかないのではないでしょうか?この「カトリック鶴岡教会」は、誰にでも開かれた教会です。

国指定の重要文化財でありながら、日常の祈りと活動の場として実際に使用されている教会です。観光客でも、自由に入場したり、見学することが出来ます。写真撮影も自由です。ただ、聖堂内でミサやお祈りが行われているときがありますので、その時は、少し時間をずらして下さいね。

最後に

「カトリック鶴岡教会天主堂」は、明治36年にこの地に誕生して以来、武家門のなかに赤い屋根を天に突いて異彩を放ちながらも、いつしか「鶴岡」の街と調和して、キリスト教布教活動の拠点となって来ました。その教会をあらためて、クローズアップして見てみると、「黒いマリア像」「窓絵」という日本で唯一の財産を有した教会だったのです。
日本海に面した「鶴岡」の街で、ぜひ、この白亜の教会の「黒いマリア」像と「窓絵」に触れてみて下さい。

また、冒頭でもご紹介しましたように、鶴岡公園周辺には、白亜の洋館が集中します。公園内には大正天皇を記念して建てられ、現在では、「鶴岡」が生んだ文豪高山樗牛らの偉業を讃える資料館となっている「大寶館」、公園に隣接する「致道博物館」内には、ともに国の重要文化財に指定されている「旧西田川郡役所」、「旧鶴岡警察署庁舎」(警察署庁舎は、平成29年まで解体修復工事中)の洋館があります。「カトリック鶴岡教会天主堂」と併せて見学すれば、「鶴岡」の魅力がいっそう深まります。

掲載内容は執筆時点のものです。 2016/06/13 訪問

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