北前船交易の栄華の面影を訪ねて山形 港町「酒田」

北前船交易の栄華の面影を訪ねて山形 港町「酒田」

更新日:2016/11/08 11:08

今村 裕紀のプロフィール写真 今村 裕紀 旅先案内人
日本海に面した山形県酒田は、江戸時代から北前船交易で栄えた港町です。北前船がもたらした栄華の面影は、街のいたるところに残されています。交易によって、人とものが行き交い、富が生まれ、文化が流れ込み、酒田はきらびやかな時代の薫りにつつまれました。
そんな酒田が辿って来た歴史の遺構を追いながら、栄華の面影を辿り、また、新たに生まれた芸術や食の拠点と併せながら、酒田散策のおすすめスポットをご紹介します。

やすらぎの散策を「酒田夢の倶楽部 山居倉庫(さんきょそうこ)」

やすらぎの散策を「酒田夢の倶楽部 山居倉庫(さんきょそうこ)」

写真:今村 裕紀

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出羽丘陵から酒田港に注ぎ込む新井田川の河口に建つ山居倉庫は、明治26年に建造された米の保管倉庫で、現在も農業倉庫として使用されています。土蔵造りの12棟からなる倉庫で、ケヤキ並木と倉庫は酒田のシンボル的な観光拠点ともなっていて、「JR東日本」の「大人の休日倶楽部」でも紹介されています。吉永小百合さんが、この倉庫を背景にしたポスターを目にされたことがある方もいるのではないでしょうか。倉庫の端の1棟は「庄内米歴史資料館」に、反対側の端の2棟がレストランと土産屋さんになっています。

倉庫とケヤキ並木に挟まれた、うららかな木漏れ日につつまれた小径を散策する―きっと、こころ癒すひとときをもたらしてくれることでしょう。もしかしたら、ここは「酒田の哲学の道」かもしれませんね。

「日和山公園(ひよりやまこうえん)」で歴史に触れる散歩日和

「日和山公園(ひよりやまこうえん)」で歴史に触れる散歩日和

写真:今村 裕紀

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酒田湾を望む小高い丘に「日和山公園」はあります。写真の帆船は、北前船交易で活躍した千石船を実物の二分の一に縮尺して再現したもので、往時の面影をこうしたかたちで象徴しています。

千石船の向こうに見えるのが、明治28年に建築された「六角燈台」で、正確には「旧宮野浦灯台」と言います。昭和33年に役割を終えてこの公園で保存されている白亜の燈台ですが、珍しいことに木造です。木造燈台として残っているものとしては、日本最古のものと言われています。今ではもう、海は照らしてはいませんが、「日和山公園」から、酒田の海を静かに見つめ続けています。

その他にも、大正時代に本町通りに建てられた木造洋風建築の「旧白崎医院」が、園内に移築されて、内部を見学することが出来ます。公園内には、港の繁栄を示す多くの遺構が点在していて、酒田の凝縮された歴史に触れることが出来ます。また、この公園は、日本海に沈む、夕日のビューポイントでもあるのです。

「旧割烹 小幡」はいま?

「旧割烹 小幡」はいま?

写真:今村 裕紀

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鉄筋3階の洋館と木造2階の和風建築で構成された風変わりな建物。それは映画「おくりびと」で、主人公が就職するNKエージェントビルの社屋という設定で登場する建物。もとは、昭和元年頃に建てられ、十数年前までは料亭として営業していた「旧割烹 小幡(おばた)」です。

映画の後は内部が公開されていましたが、平成26年9月に終了しました。訪問時には、たまたま、あるNPOが建物の前で「日和山カフェ」として営業していましたが、これは期間限定で、現在は、外観のみの見学になります。施設の老朽化により、今後の活用については、酒田市で検討中です。ただ、「日和山公園」の丘を下って来たところにあり、映画のロケに使用されなくとも、かなり異彩を放っています。

「土門拳記念館」で迫力ある世界に触れる

「土門拳記念館」で迫力ある世界に触れる

写真:今村 裕紀

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「山居倉庫」を右に見据えてそのままを進み、最上川に架かる「出羽大橋」を渡った対岸に広大な緑地「飯森山公園」がひろがります。その公園の奥にこの記念館はあります。日本を代表する写真家のひとりで、酒田市出身の土門拳氏の「土門拳記念館」です。自らの全作品を故郷に贈りたいという氏の要望に酒田市が応え、1983年に完成した記念館です。丘と自然林を背景に前面に池を配して、白い建物が、自然に溶け込んで美しく佇みます。

館内には氏の7万点に及ぶ全作品が収蔵され、ライフワークであった「古寺巡礼」をはじめ、「風貌」「筑豊の子供たち」などが順次、公開されています。「古寺巡礼」の「西芳寺書院前四半石」などは、緑苔に囲まれた飛び石に落ちた一葉の枯葉―これは、もはや写真と言うよりも絵画の様相さえ呈しています。「風貌」での川端康成、藤田嗣治、岡本太郎などなどの面々。。。土門拳氏の迫力ある芸術空間がここにひろがります。ここは必見です。

お食事は「さかた 海鮮市場 海鮮どんや とびしま」 がおすすめ

お食事は「さかた 海鮮市場 海鮮どんや とびしま」 がおすすめ

写真:今村 裕紀

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お食事処は、「さかた 海鮮市場」2階にある「海鮮どんや とびしま」がおすすめです。営業は午前の部と午後の部に分かれています。土日休日の午後の部は行列必至です。でも、並ぶだけの価値はあります。庄内浜でとれた旬の魚をふんだんに使った御膳が10種類以上あり、質と量の割には断然、お得な値段で食べられます。

いつも行列が絶えないためか、ベテランの女性店員さんがマイクを持って店内の様子を見ながら、お客さんの入場を整然と管理しています。次の方、店内に入ってください。STOPラインまで進んで下さい。注文して下さい。こんな感じです。新鮮なお魚がおいしく、そのうえ気持ちよく食事出来るお店です。でも、いえ、だからこそ、行列を覚悟してください。

酒田のまとめ

日本海の港街、酒田、いかがでしたか?
北前船がもたらした繁栄によって、この街には歴史ある遺構が随所に残されています。ご紹介しましたポイント以外にも、井原西鶴の日本永代蔵にも登場する廻船問屋「鐙屋(あぶみや)」をはじめ、豪商「本間家旧本邸」に代表される旧家の建物も公開されています。こちらも併せて見学されると、酒田の歴史、酒田の栄華の変遷の理解が、いっそう深まるものと思います。

また、筆者が別にご紹介しました酒田の「相馬樓」、「山王くらぶ」等の料亭に関連する記事もご参照下さると、酒田の街の魅力がいっそうひろがります。歴史ある酒田の街は、京文化の影響も受けて、魅力あるポイントがいっぱい詰まっているのです。

なお、酒田市内の移動には、酒田駅構内の観光案内所で無料で借りられる自転車利用が、断然、便利です。

掲載内容は執筆時点のものです。 2016/06/14−2016/06/16 訪問

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