酒田「相馬樓」で艶やかな「酒田舞娘」さんに心奪われて!

酒田「相馬樓」で艶やかな「酒田舞娘」さんに心奪われて!

更新日:2016/08/04 09:45

今村 裕紀のプロフィール写真 今村 裕紀 旅先案内人
江戸時代、河村瑞賢によって北前航路が整備されると、山形県酒田は物流の重要な拠点となり、「西の堺、東の酒田」と言われるまでに繁栄しました。ものの動きは同時に文化、芸術を伝播し、にぎわいを生み、京文化の影響を受けた茶屋文化、料亭文化として酒田の地に実を結びました。今回、当時の雅びが舞娘さんたちの踊りとともに鮮やかに甦った「相馬樓」をご紹介します。

甦った料亭 「舞娘茶屋 雛蔵畫廊 相馬樓」(まいこちゃや ひなぐらがろう そうまろう)

甦った料亭 「舞娘茶屋 雛蔵畫廊 相馬樓」(まいこちゃや ひなぐらがろう そうまろう)

写真:今村 裕紀

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山形県、日本海を望む港町、酒田。江戸時代に興隆を極めた北前船は、京の文化をこの地でも開花させました。時は流れ、かつては全国に名を馳せた酒田花柳界も、一旦は時代の流れとともに衰退をたどりましたが、江戸時代から酒田を代表する料亭「相馬屋」が、平成12年に「舞娘茶屋 雛蔵畫廊 相馬樓」(まいこちゃや ひなぐらがろう そうまろう)として開楼しました。

写真が、「舞娘茶屋 雛蔵畫廊 相馬樓」の外観です。茅葺の屋根と朱色の塀が印象的です。この建物、実は、明治27年の庄内大震災の大火で焼失してしまいましたが、その直後に、残った土蔵を取り囲んで、新たに建てられたものです。料亭としては時代の流れに抗しきれずに幕を下ろしましたが、その後、新たな息吹を加えられて、観光施設として今日の美しい佇まいに甦りました。

燃えるような緋毛氈に導かれて迷宮へ!

燃えるような緋毛氈に導かれて迷宮へ!

写真:今村 裕紀

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玄関を入ると、正面に鮮やかな金箔の松竹梅と扇、鼓のレリーフが迎えてくれます。樓内は赤の絨毯と見紛うほどの、燃えるような緋毛氈に導かれる迷宮の別世界です。艶やかな赤の毛氈が敷かれた廊下が、「茶室」「蔵座敷」「客間」など料亭時代の部屋を繋いで異界へと導いてくれます。

樓内は、加えて「雛蔵畫廊」の名前が示すように雛人形が常設された「雛の蔵」。樓主、新田嘉一氏のコレクションである、横山大観や河合玉堂といった名だたる芸術家たちの美術品等が展示された「蔵画廊」と繋ぎ、かつての厨房は、舞娘さんたちのお踊りのお稽古場に改装されていて、毎日14時からの演舞観賞会の前であれば、時間ぎりぎりまでお稽古をしている様子が、障子越しに少しだけ窺えることもあります。

また、受付のすぐ横は、二十畳の「くつろぎ処 茶房」として、富岡鉄斎の水墨画が飾られた落ち着いたカフェになっていて、中庭を眺めながら抹茶や珈琲、ぜんざいなどを楽しむことが出来ます。

竹下夢二の世界をじっくりと堪能

竹下夢二の世界をじっくりと堪能

写真:今村 裕紀

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この樓内の1階で最も広いスペースを占めて併設されているのが、「竹下夢二美術館」です。「相馬樓」は「竹下夢二美術館」でもあるのです。
夢二は酒田が気に入ったようで、三度、滞在して精力的に創作活動を行ったため、この地に残された多くの肉筆画や版画に触れることが出来ます。

さらに、この美術館の大きな特徴は、夢二自身が撮影した美人写真が、いくつかの瓜二つの美人画の横に添えて展示されていて、写真から夢二がイメージして作品へと昇華させた過程に思いを馳ることが出来ることです。じっくりと見比べて見てくださいね。これは、この記念館の名誉館長さんである夢二のお孫さんが、その写真を受け継いで来たことにより、実現出来たことなんです。

舞妓さんは、京都にしかいないと思っていませんか?

舞妓さんは、京都にしかいないと思っていませんか?

写真:今村 裕紀

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2階に上がると、そこは舞娘さんの踊りと食事が楽しめる宴舞場です。入樓料700円に300円をプラスすれば、休樓日を除き、毎日14時から舞娘さんたちの艶やかな演舞を観賞することが出来ます。演舞は3曲で、およそ20分程です。酒田での「雅」体験、いかがですか?

紅花染めで彩られた畳が、市松模様状に敷き詰められた大広間。
ここで繰り広げられる、あまりの美しい舞い姿に、思わず、たじろぎます。
圧倒されるほどの艶やかさに、ちょっと、舞い上がります。
やがて、美しさと艶やかさに魅入られて、心奪われます。

しかも、舞娘さんたちの活躍の場は、この観光施設としての「相馬樓」はもとより、お座敷に呼ばれれば、踊りや唄で宴会に華を添えて、接待のお手伝いもする本格的な職業としての舞娘さんなのです。なお、「相馬樓」の「舞娘」さんたちは、厳密には京都の「舞妓」さんとは帯結が異なります。ですから、「舞娘」と名乗っています。

「酒田」の伝統を守るために

「酒田」の伝統を守るために

写真:今村 裕紀

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演舞観賞会に参加しますと、観賞会の後に舞娘さんとの記念写真が撮れるというのが嬉しいです。

酒田舞娘さんは、現在六人ですが、今回、お話を聞くことが出来たお二人は、ともに地元出身で、いずれも、この伝統に関わりたいという動機から志し、その伝統を受け継いでいく、という強い思いをお伺いすることが出来ました。ひとつの伝統を受け継いでいくことの「覚悟」と「尊さ」に心打たれる思いがしました。美しい舞娘さんたちと一緒に写真撮影をして、間近でお話をすると、ドキドキしてしまうとは思いますが、酒田の地で舞娘さんたちとの出逢いを、ぜひ、体験してみて下さい!

※なお、演舞会参加の後の舞娘さんとの記念撮影を除き、演舞中の舞娘さん、ならびに館内は一切撮影禁止です。

最後に「相馬樓」―「美の廻廊」にして「美の楼閣」

港町 「酒田」に開楼した「舞娘茶屋 雛蔵畫廊 相馬樓」いかがでしたか?

美しく、妖しくもある樓内は、料亭時代の面影を偲ばせる意匠や美術品の数々、そうして竹下夢二の作品を繋ぐ、赤い「美の廻廊」です。さらに、そこに艶やかな舞娘さんたちが加わり、「相馬樓」は、まさに日本の伝統美が凝縮された「美の楼閣」なのです。

日本海を望む港町「酒田」で、六人の舞娘さんたちは、日々、お稽古を重ねながら、艶やかにキラキラと輝いています。酒田観光の際には、ぜひ、「相馬樓」を訪れて、美しい舞娘さんたちに、心奪われて下さい!

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掲載内容は執筆時点のものです。 2016/06/14 訪問

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