写真:藤井 麻未
地図を見るピッグ・ビーチとは、正確にはエグスーマ諸島に浮かぶビッグ・メジャー・キーという無人島のビーチのことだ。バハマの首都ナッソーがあるニュープロビデンス島からは空路約30分、スタニエル・キーもしくはブラックポイントから更に小型ボートで小一時間ほどの場所にある。
そして、ボートに乗り換え目当てのビーチに到着するまでも侮るなかれ、息を呑む絶景が繰り広げられるのだ。何色かと問われると「カリビアン・ブルー」としか答えようがない眩いブルーの煌めきの中を、波しぶきを上げながらボートはグングン走っていく。照り付ける太陽、そして360°魅力的に輝くカリブ海をまるで我が物にしたかのような爽快感は、一度は経験してみなければもったいない。
写真:藤井 麻未
地図を見るお目当てのビーチは、遠くからみると美しい白砂の広がる小さな無人島だ。その溢れんばかりの美しさの他には一見変わった様子は何も無い。ところが、ボートがビーチの20メートルほどまでに近寄った時、突如異変に気付くだろう。
茂みから次々と飛び出してくるのは、なんと・・・豚!?そう、中型犬ほどの大きさの生き物が群れをなして突進してくると思ったら、それは紛れもなく豚なのである。驚くべきことに彼らは水を微塵たりとも恐れない。豚の本能に泳ぎが組み込まれているのかは分からないが、とにかく彼らは驚くべき達者な泳法でスイスイとボートまでやってきて、餌は無いかとねだるのだ。
写真:藤井 麻未
地図を見るなぜこんな無人島に豚か生息しているのか。それには諸説あるが、かつて難破船に乗っていた豚がこの島に流れ着き、島に真水の湧き出る泉があったことから環境に適応し、そのまま繁殖したという説が有力だ。
今では時折やってくる観光客から餌をもらい、でっぷりと肥えた身体で気持ちよさそうに海を泳いでいる。彼らの鼻は私たちが知っている豚のものとは少し違う。もっと長くて上を向いているのだ。おかげで泳ぐ時も鼻を難なく水面から出して息をすることができる。海という環境に適応するため、彼らの体が進化したのである。
野生化した豚ではあるが餌をくれる人間には慣れている。そこで、ここでは豚に触れたり一緒に泳いだり、ということができてしまう。カリブ海で豚と泳ぐ・・こんな珍体験ができるのもおそらく世界中でここだけだろう。
写真:藤井 麻未
地図を見る海で豚と泳いだら島に上がって茂みを覗いてみよう。時期によっては子豚が潜んでいることがあるからだ。思いのほか迫力満点の親豚と比べ、子豚はやはり愛らしい。野菜くずやパンの端きれを持っておびき寄せると簡単に抱くことができる。
孤立無援の無人島に降り立った時、初代の豚はどのように感じたのだろうか。そんなことは知る由もないが、今こうして小さな命が確かに受け継がれている。
カリブ海×無人島×豚。このありえない組み合わせはいかがだっただろうか。
そのミスマッチさに最初は誰もが驚く。しかし、実際ピッグ・ビーチに生きる豚たちを目の当たりにすると、まるで海に生きるのが生まれ持った本能であるかのように彼らは我がもの顔でカリブ海を泳ぎ回っているのだ。そのあまりの自然さに、豚が海で生きていてもおかしくないのかも・・・とさえ思ってしまう。
全ての生き物は見事に環境に適応する能力をもっている。そんな生き物の生命力、進化の力を見せつけられるような、力強い姿がそこにはある。この一見ありえない光景を目の当たりにして何を感じるか、試しに絶景のカリブ海に浮かぶ「ピッグ・ビーチ」を訪れてみてはいかがだろうか。
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(2024/5/3更新)
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