写真:Hiroko Oji
地図を見る南イタリアのポンペイの町は、商業も盛んな港湾都市であり、火山が噴火するまでは葡萄やオリーブの産地であり、ワイン醸造・オリーブオイル生産が主産業でした。碁盤の目状に通りが走り、大きな通りは馬車のわだちが残る、石が敷き詰められて舗装されたもの。私邸、スポーツ施設、共同浴場、居酒屋、売春宿・・・など、町の中心には広場もあり、かなり計画的に設計された都市で、今と変わらない日常生活が繰り広げられていたであろうポンペイ。その町並みが、79年8月24日に起こったヴェスヴィオ火山の噴火で発生した火砕流により、一瞬のうちにのみこまれ、一昼夜降り続いた火山灰の下に埋もれてしまいました。
長年完全消滅したと思われていたのですが、近くのエルコラーノに続いて再発見され、発掘作業が断続的に繰り返され、現在では、その広大な町の遺跡内を歩き回ることができるように整備されています。この町消滅の元となったヴェスヴィオ火山は、現在は町並みの遺跡を飾る背景として、その美しい姿をのぞかせています。
写真:Hiroko Oji
地図を見るポンペイ遺跡の見学には、ヴェスヴィオ周遊鉄道のポンペイ遺跡駅(Pompei Scavi)で下車して、マリーナ門から入場するのが便利。歩行者用と荷車用の二つのアーチがある門です。
門を入った所には、ヴィーナスの神殿があり、コリント式円柱を2段重ねにした外壁と内側の太い円柱に囲まれていたバジリカ、アポロ神殿と続き、広々としたフォロに出ます。ここは、紀元前2〜1世紀、ドーリス式の上にイオニア式を重ねた2層の柱廊で囲まれ、主に商業活動に利用されていた広場です。今はその基部と柱廊の一部が残っているだけですが、規模の大きさはかなりのものです。
写真:Hiroko Oji
地図を見るフォロから東へ延びる主要道路であったアッボンダンツァ(Abbondanza)通りは、大きな石が敷き詰められ、今でいう横断歩道代わりに飛び石のような石が所々に置かれており、円形闘技場そばのサルノ門まで導いてくれます。その通りの両側には、選挙のスローガンや落書きの残る壁が残り、カウンターに壺を埋め込んだ居酒屋やパン焼き窯の残るパン屋、私邸が並びます。この通りを歩いていると、ふと現代を忘れて当時の人々が石壁の間から姿を現すような錯覚を覚えます。
また、北に延びるメルクリオ(Mercurio)通りを進めば、二つのアーチの間にある3神を祀るジュピター神殿、旧式の火鉢で暖房していたフォロの浴場と続きます。その北側にあるのが、皆さんもご覧になった方が多いかと思うのですが、写真にある番犬のモザイク画がある「悲劇詩人の家(Casa del Poeta Tragico)」です。家屋自体はこじんまりしたものですが、2軒の居酒屋の間に玄関があって、その床のモザイク画がこれなのです。今にも噛みついてきそうな勢いが伝ってきます。犬の足元には「CAVE CANEM」(猛犬に注意)の文字。この家の2階が宿屋となっていたようで、食堂の床に演劇の稽古場面のモザイクがあったことから、「悲劇詩人の家」と呼ばれるようになっています。
悲劇詩人の家から東へ続くノラ(Nola)通りを進むと、かなり広い敷地の牧神の家(Casa del Fauno)に出ます。ここは、ポンペイ最大の貴族の豪邸だったところで、開放的なアトリウムの中央には、牧神ファウススのブロンズ像が置かれています。これは複製のもので、オリジナルはナポリの国立考古学博物館に納められています。また「ダリウスとアレキサンダー大王の闘い」というモザイク画も発見されており、ブロンズ像と同じく国立考古学博物館所蔵となっています。
写真:Hiroko Oji
地図を見る写真:Hiroko Oji
地図を見る広大な敷地の北西端にあるエルコラーノ門を出て、石畳の坂を下って行くとディオメデス荘があり、さらに下ると「秘儀荘(Villa dei Misteri)」に到着します。
秘儀荘は、元々小屋だったもので、紀元前2世紀前半に建設され、その後の改築を経て現在の姿に落ち着いています。ここで見逃せないのが、「ポンペイの赤」(※)で有名な背景を持つフレスコ画「ディオニュソスの秘儀」への入信の様子を描いたものです。ヘレニズム絵画の影響を受けたカンパーニャ地方の画家が紀元前70〜60年頃に手がけたと言われているもので、宗教儀式の様子を連続絵画で表現しています。ディオニュソスが中央の玉座に納まる横で、裸の少年が儀式の作法を読み上げる様子が描かれたものから始まるこの絵画は、2000年以上も前のものとは思えない鮮やかさを今に伝えています。
※ 「ポンペイの赤」とは、秘儀荘の地下の広間「秘儀の間」に描かれている壁画の赤色がとても美しく、噴火から長年経っても色褪せずに残っていることから、この壁画に使用された赤色がそう呼ばれるようになったものです。
ポンペイ遺跡には、他にも必見スポットが盛りだくさん!
紀元前4世紀末の最初の浴場であるスタビアーネ浴場、客席上部から遺跡を見渡せる大劇場、小劇場とも呼ばれたオデオン座、6本のドーリア式円柱がある三角フォロとその入り口のイシス神殿、貝に乗ったヴィーナスと天使のフレスコ画があるヴィーナスの家、中庭を柱廊で囲み、奥の壁には水浴するディアナが描かれたロレイウス・ティブリティヌスの家、入り口の柱に生殖の神プリアポスが描かれたヴェッティの家(奥の部屋にある、ポンペイの赤を使用した、神話などをテーマにしたフレスコ画も必見です)、敷地の東端に建てられた円形闘技場など、数え上げたらきりがないほど。たっぷり時間の余裕をもって訪れてくださいね。
遺跡訪問には、鉄道利用が便利ですが、駅は複数あります。日帰り訪問には、ヴェスヴィオ周遊鉄道のポンペイ・スカーヴィ(Pompei Scavi)駅で下車して100メートルほど歩くとマリーナ門から入れます。この線は、別に円形闘技場より東にある駅に着くこともありますが、そこからなら円形闘技場横の入り口へ行くと便利です。また、ここで宿泊して訪問するなら、イタリア国鉄fs線ポンペイ駅を利用するとホテルが多い新市街へ通じます。いずれにしても、降りたい駅名と、どこから遺跡に入るのか、利用する入り口をしっかり確かめてから、ご訪問くださいね。
最後に、この遺跡にも、カンパーニャアルテカードが利用できますが、種類によっては不可の場合もあります。ご購入の際にご確認ください。
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(2024/3/29更新)
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