写真:西藤 カオル
地図を見る井伊家二十二代当主・直盛には男児がいませんでした。それゆえに、幼い一人娘(後の直虎)にはすでに従弟の許婚がおり、いずれは二人で井伊家を盛り立てていくはずでした。しかし、今川義元の支配下にて、謀反の疑いをかけられた許婚の父親は自害。許婚自身も行方知れずとなり、悲嘆にくれた彼女は龍潭寺で「次郎法師」の名を授かり出家をしてしまいます。
運命の悪戯に、出家の後に許婚・直親は生還。幼いころの約束をかかえたまま二人が一緒になることは叶いませんでした。時は戦乱の中、父も直親も命を絶たれ、いよいよ井伊家は後継者危機に陥ります。そこで次郎法師が「井伊直虎」と名を変え城主となるのです。かつての許婚が残した嫡男、虎松(後の直政)を護るべく……。
龍潭寺は、そんな直虎と幼少の虎松が過ごしたとされるお寺です。
写真:西藤 カオル
地図を見るそれでは本堂の中へ参りましょう。入ってすぐに板張りの長い廊下が見えます。歩みをすすめると、足元よりキュッキュッと音が!そうです、これが有名な「鴬張りの廊下」です。もともとは外敵の侵入を知らせる防犯要素があるのですが、静寂な本堂に響きわたる、高音で鶯のさえずるようなこの音には情緒があります。
この廊下を作成したのは、江戸時代の名工・左甚五郎。日光東照宮の眠り猫でも知られる伝説的な彫刻職人です。彼の作品はこのほかにも、本堂出口の上に龍の彫刻があります。まるで命を宿しているようなその様から、“夜な夜な寺から抜けだして悪さをしているため和尚様に片方の髭を抜かれた”なんて逸話もあるほど。折れた髭の部分も、ぜひ見つけてみてください。
写真:西藤 カオル
地図を見る龍潭寺には数々の寺宝が所蔵されています。中でも、県指定文化財で江戸の庶民のくらしや風俗を描いた六曲一双の「龍潭寺屏風 遊楽之図」は興味深いものです。屏風いっぱいに人々が囲碁や花札、釣りや舟遊び、さらには盆踊りに興じる姿まで楽しく描かれています。
また、井伊家ゆかりのお寺ならではの「井伊家赤備え具足」も必見。細部にわたり揃っているのは現存する甲冑の中でも貴重といいます。「井伊の赤鬼」と称され徳川四天王筆頭に数えられる猛将にまでのぼりつめた虎松こと井伊直政。彼を支えた直虎の功績も大きいでしょう。
直虎と虎松といえば、静岡県在住の彫刻家・池谷雅之氏の作品も奉納されています。木彫像二体一組で、幼い虎松が手に橘をもって直虎を見上げる様子は、一本の杉の木から掘り出されたとは思えないぬくもりのある作品です。
写真:井伊直虎と虎松(池谷雅之氏作)
写真:西藤 カオル
地図を見るここまで、井伊家や直虎についてお話をしてきましたが、龍潭寺を訪れる人の多くがこれを目当てにきているであろう素敵なお庭のこともご紹介しましょう。
龍潭寺は奥浜名湖に位置し、初山宝林寺、方広寺、摩訶耶寺、大福寺とともに湖北五山のひとつ。この本堂の北庭として江戸時代初期に築かれたのが「龍潭寺庭園」です。徳川将軍家の茶道指南役もつとめた茶人であり、作庭の名人でもあった小堀遠州の作。
池泉鑑賞式庭園で、小高い丘と綺麗に刈られた木々は山脈を表現し、手前の池は「心」の字を形どっています。丘の中腹に立つ守護石(写真:中央)、右手には亀が這う様に突き出た亀出島(写真:右下)、左手には飛たつ鶴を模した鶴出島もみられます。苔をまとった山石が木々や池と絶妙に調和し、見るものを優美な世界へと誘うことでしょう。国指定の名勝です。
写真:西藤 カオル
地図を見る書院では、庭を眺めながらお抹茶を頂くサービス(予約制/有料)もあります。腰掛ける場所もあるので、ゆっくりこの世界観を堪能しませんか。繰り返し庭の説明案内がテープでながれ、前知識がなくても十分に楽しめます。
ひとしきり小堀遠州の世界に浸ったら、本堂の先にある井伊家霊屋に参りましょう。開山堂を過ぎたその先に、井伊家一千年の歴史を祀る井伊家霊屋があります(写真:中央)。ここには直虎の位牌や、直盛公と直政公の木像も安置されています。
この霊屋の西側には直虎と井伊家墓所があり、五つ並ぶ墓石に目をやると、左から直政、直親・正室、直親、直虎、直盛・正室とあります。直虎はかつて結ばれることのなかった許婚・直親の隣で眠っていました。
平成29年度NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」の舞台、寺宝も豊かな龍潭寺はいかがでしたか。2016年9月からクランクインし、このあたりは益々話題のスポットになりそうです。放映後の混雑をさけるならば、放映前がチャンスになりそうですね。ドラマをより面白く見るため予習におでかけされるのもよいでしょう。
「紅葉まつり・秋の寺宝特別展示」も開催中です。
【期間】2016年10月1日(土)〜12月10日(土)
【拝観料】大人500円/小中学生200円
【拝観時間】9時〜16時30分(17時閉門)
展示内容は、催事により変わりますのでMEMO欄の「龍潭寺」公式ホームページより詳細をご確認の上、おでかけください。
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(2024/4/27更新)
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