「京は大きい都会としては、木の葉の色がきれいである。(略) 五条や堀川のしだれ柳の並木などは、町なかにあって、すぐ旅人の目につく」(『古都』きものの町より)
しだれ柳は京都でおなじみの街路樹のひとつです。ヤナギ並木の人気スポットといえば、やはり白川。せせらぎを渡る風に、しだれ柳が青葉を揺らせます。汗ばむ陽気には、涼しげなしだれ柳はなんともよいものですね。
「高雄の神護寺、槙尾の西明寺、栂尾の高山寺の、もみじの青葉も、千重子と真砂子は、ここまで来れば、やはり見てゆくことになった」(『古都』北山杉より)
高雄の集落は峨野嵐山のほぼ真北、御経坂峠の先にあります。集落の裾野を洗う清滝川を挟み、対岸の山腹、木々越しに神護寺(創建西暦824年)の甍がのぞきます。楼門に至る石段はなかなかのものですが、疲れを覚えたら、途中の茶店で一休みしましょう。
境内に建てられた伽藍の数々は迫力に富みます。深い山中にいることをしばし忘れるほどです。また神護寺は かわらけ投げ発祥の地ともされています。境内奥の展望広場から錦雲峡へと、かわらけ(お皿)を力一杯投げ下ろせば、気分爽快になること請け合いです!
「真砂子は高山寺より奥へ行ったことがない。ここがまあ、観光客のとまりである」(『古都』北山杉より)
高山寺は三尾(高尾・槙尾・栂尾)の北の外れにひっそりと佇んでいます。周山街道から伸びる石段を登ると、杉木立を縫う石垣の連なりが目に入ります。かつて、たくさんのお堂を擁していたという高山寺の盛時の名残りです。
境内の麓寄りに建つ石水院は、唯一棟残る創建時(鎌倉時代)の建物。こちらの広縁から眺める、新緑に彩られた北山の山並みの美しさは、格別です。
主人公・千重子が、奥嵯峨の尼寺にいる父へのおみやげとしたのが嵯峨豆腐「森嘉」のお豆腐です。
「森嘉のな?お父さん、およろこびやしたやろ。湯豆腐にして…?」(『古都』尼寺と格子より)
千重子の母のせりふの通り、森嘉の嵯峨豆腐は、固すぎず、柔らかすぎず、湯豆腐にほんとうによく合います。京豆腐の原点ともいえる嵯峨豆腐を「森嘉」のご当主が開発されたのは、戦後間もなく、『古都』の新聞連載が始まる少し前のことだとか。嵯峨嵐山にお越しの折りには、おみやげにおひとつ一丁いかがでしょうか?
京都の町は、周囲を山並みに囲まれています。街中から少し足を伸ばすと、すぐそこに山の緑が迫ります。初夏、陽光を浴びた山の木々は、若葉を次々と芽吹かせ、瑞々しい輝きを放ちます。
川端康成先生は『古都』の作中、新緑の頃の京都を「若みどりの町」と表現しています。五月晴れの一日、一冊の本を片手に新緑の京の町巡りをしてみてはいかがでしょうか。
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(2024/4/26更新)
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