ロンドン「大英博物館」で垂涎のアンティーク食器と出会う

ロンドン「大英博物館」で垂涎のアンティーク食器と出会う

更新日:2018/07/19 12:19

Lady Masalaのプロフィール写真 Lady Masala 知られざる名所案内人、蚤の市マニア
「アンティーク」を求めてイギリス、ロンドンを旅する方も多いでしょう。マーケットめぐりの合間には、ぜひとも「大英博物館」を訪れてください。
館内には、古今東西のありとあらゆる貴重な品々が展示されています。収蔵品のほとんどは、最高級のアンティーク。目の保養に、各国の「焼き物」コレクションを見学してみましょう。

世界中の王侯貴族が憧れた焼き物の草分け「中国の陶磁器」

世界中の王侯貴族が憧れた焼き物の草分け「中国の陶磁器」

写真:Lady Masala

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エジプトのミイラやロゼッタストーンは大変な人気で、その周囲にはいつも人だかりができています。それらの王道ともいえる見学ルートも捨てがたいですが、自分の趣味に合った独自のルートを開拓してみてはいかがでしょうか。

アンティーク食器が好きという方にお勧めしたいのは、古今東西の「陶磁器」に的を絞った見学ルート。どの国にも独自の焼き物文化がありますが、世界中の王侯貴族が憧れたという中国食器の美しさは群を抜いています。

英語で磁器のことを「チャイナ」とよびますが、中国で焼き物がつくられるようになったのは、紀元前600年頃のこと。実用品というだけではなく、その美術品としての価値は世界中に知れ渡り、盛んに輸出されるようになりました。

館内にある「Sir Percival David Collection」には、紀元2世紀から20世紀に至るまでの、1,700点もの貴重な陶磁器が展示されています。王宮で使用されていた高価な物が中心ですが、地域や時代を象徴する庶民的な物も同時に集められています。

14−15世紀頃、河南省にある禹州市(うしゅう-し)でつくられたという青磁「Jun Ware」の美しさは格別。表面は紫に近い桃色で内側は薄緑色。どのような技術で、このような微妙な色づかいを表現できたのでしょうか。時間を忘れて見とれてしまいそうです。

展示室:95「Chinese Ceramics」
Sir Joseph Hotung Centre for Ceramic Studies
Sir Percival David Collection

オスマン帝国の傑作「イズニク陶器」

オスマン帝国の傑作「イズニク陶器」

写真:Lady Masala

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中国でつくられた美しい陶磁器をこぞって買い求めた世界中の王侯貴族たち。彼らは、それを模倣することからはじめ、やがては、独自のスタイルを切り開き、自分たちの陶磁器文化を発展させてゆきます。

オスマン帝国時代のイズニクでは、14世紀頃、モンゴル帝国経由で伝わったとされる中国の染付に影響を受けた「イズニク陶器」がつくられるようになりました。花や植物をモチーフに、トマトのようにと形容される赤や、ターコイズブルーで鮮やかに彩色された食器の美しさは、見る者を虜にしてやみません。
「イズニク陶器」が最盛期を迎えた16世紀頃には、チューリップやカーネーション、ヒヤシンスなどの大ぶりな花がモチーフにされることが多かったのだとか。

19世紀に入ってから、その美しさに魅せられたヨーロッパの国々が、多くの類似品を商品化しました。イギリスのドルトン社は、展覧会に出品するために皿を作製しましたが、苦心してもその独特な色合いを出すことができなかったといいます。
展示室では、ドルトン社製イズニクと本家本元とを見比べることができます。どちらがより美しいのかは、ご自身の目でお確かめください。

展示室:34「The Islamic world」

繊細で緻密な「ヨーロッパ」の芸術

繊細で緻密な「ヨーロッパ」の芸術

写真:Lady Masala

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トルコにあるトプカプ宮殿をはじめ、宮廷やモスクは、イズニク製のタイルで装飾されているといいますが、19世紀のイギリスでは、そのエキゾチックなスタイルが盛んに模倣されました。

イギリスのミントン社は、国内でのタイル製作にかけては草分け的な存在で、教会や公共の建物、または家庭用に、さまざまな大きさやデザインのタイルを生産しました。
館内に展示されているミントン社製のタイルは、アラブ風でありながらも、花模様のかわいらしさがヨーロッパの上品さを感じさせてくれます。

展示室「46」・「47」には、15−19世紀までのヨーロッパの食器が集められています。18世紀にドイツでつくられたという黄金のティーカップは必見。一つ一つ丁寧に描かれた花模様の繊細さには息をのむばかりです。実物に限りなく近い姿を描こうと筆で表現された花弁の濃淡。その緻密さは芸術の域に達しているといっても過言ではありません。

展示室:46「Europe 1400–1800」
展示室:47「Europe 1800–1900」

世界に誇る「日本の伝統工芸」を知る

世界に誇る「日本の伝統工芸」を知る

写真:Lady Masala

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中国を皮切りに、中東、ヨーロッパと順を追って焼き物の展示を見てきました。初期には、どこの国でも多かれ少なかれ中国の影響を受けて発展してきた陶磁器文化。やがては、自国の文化や宗教観を反映して、独自のスタイルを確立していったことがわかります。

最後に、世界の中の「日本」を見て、大英博物館の見学を終えたいと思います。古今東西から集められたという貴重な展示物のなかには、我が国が誇る職人芸の数々も含まれています。
日本を代表する磁器として展示されているのは、江戸時代につくられたという「柿右衛門」。その器に描かれた朱色の花模様からは、調和のとれた日本的な美しさが感じられます。

今までに見学したどの展示にも勝るとも劣らない日本の伝統工芸。我が国の伝統文化の良さを、再確認することができるのではないでしょうか。

展示室:92−94「The Mitsubishi Corporation Japanese Galleries」

世界中のアンティークを収蔵する「大英博物館」

大英博物館に収蔵される、世界中から集められた第一級のアンティーク食器。思わずため息が出てしまうほどに美しい展示品の数々は、ここロンドンでしか見ることができません。垂涎のアンティークを求めて、ロンドン「大英博物館」を訪れてみませんか。

※広い博物館内を効率よく見学する方法はこちら。
関連MEMOに掲載の『駆け足でも見ごたえ充分!ロンドン「大英博物館」攻略法』も併せてご覧ください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2016/03/12 訪問

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