写真:吉川 なお
地図を見る台湾の北東部、宜蘭県の太平洋岸に位置する蘇澳(スーアオ)は、三方を山に囲まれた港町です。南方澳と北方澳という2つの漁港を持つ近海漁業の基地で、また世界でも珍しい炭酸冷泉が湧く街としても知られています。
台湾でも冷泉に入れるのはここだけで、源泉は台湾鉄路(台鉄)蘇澳駅の北側約300mのところ、背後にそびえる七星山西麓から流れ込んでいます。
冷泉には炭酸ガス(二酸化炭素)が溶け込んでいます。そのため生物は生息できず、その昔、この地に住んでいた人々も七里山から流れ出る湧き水には魚がおらず、昆虫までもすぐ死んでしまうことから有毒だと思い込み、近づきもしませんでした。
その水が有害ではないことを証明したのは、日本統治時代に蘇澳にやってきた一人の日本人でした。1895年、輸送船の指揮官だった竹中信景は七里山を行軍中、喉が渇いてその湧き水を飲んだところ、気力が回復し元気が出たことから無害だと確信。この水に興味を持ち、1897年に退役すると蘇澳に定住して研究を始め、やがて大量の二酸化炭素を含む炭酸泉であることを突き止めました。
その後、その研究の成果はラムネ製造という事業に結びつきます。清らかで甘みのある炭酸泉の利点を生かして作ったラムネが大ヒットし、大量生産するため工場も建てられました。その工場の跡地は現在、冷泉公園として整備され、当時使用されていたレンガ造りの建物の中で今も変わらず冷泉が湧き出ています。
写真:吉川 なお
地図を見る冷泉公園は「大衆池」と呼ばれる露店浴池と個室風呂がある湯屋区に分かれています。大衆池はプールのように広く、水は茶色く濁っているように見えますが、これは底に敷き詰められている石が硫黄成分によって茶色く変色しているためで、水は驚くほど透明で無臭です。
水温はヒヤッとする22℃。温水プールは28℃前後なので、そのひんやりした感覚はご想像いただけるでしょう。地下1kmは45℃〜50℃の高温ですが、上昇する過程で地下水が熱を吸収して22℃にまで下がり、年間を通してこの温度を保っています。この豊富な地下水と石灰岩の地層を透過して湧いてくる炭酸水が蘇澳の冷泉を形成しています。
大衆池にザブンと入る場合は水着が必要です。しかし充分な水位ではないので、まずは足をつけてその温度を体感しましょう。よく見ると石の隙間から小さな泡が絶えずプクプク浮いてきます。この泡が血管を拡張させ血流の流れをよくさせます。最初は冷たかったはずなのに、次第に温かさを感じるようになるから不思議です。
写真:吉川 なお
地図を見る足湯を楽しんだら、次は全身入浴です。大衆浴池の奥にある湯屋区にある個室風呂の入浴時間は40分で、「冷泉だけ」と「冷泉と温水の三温暖」の部屋があります。冷たくなったら身体を温め、繰り返し入れる三温暖がお勧めです。
冷泉の浴槽は1畳くらいで、右に行くほど深くなります。温水は小さなヒノキ風呂の蛇口から熱湯が出てくるのでご用心!
温水でかけ湯をしたら、いざ入浴です。まずはゆっくりゆっくり冷泉に腰までつかり約3分。慣れてきたら胸まで入って約5分、動かずじっとキープです。すると刺すような冷たさを感じつつも、徐々に温かさを感じるようになってきます。肌には炭酸の泡がびっしりつき、だんだん冷たさも心地よくなってきて、頭の中まですっきりしてきます。この爽快感、たまりません。
冷泉に浸かる時間は10〜15分、それから温水浴を10分。この順番で繰り返すのがベストで、時間的には2クールが限度です。時間を無駄にせず冷泉を楽しみましょう。
入浴することで慢性肺炎、通風、糖尿病、肥満症、皮膚病、腎結石、膀光結石などに、飲用すると胃痛や胃酸過多に効能があると言われています。受付の前に瓶が用意されているので、実際に飲むこともできます。
写真:吉川 なお
地図を見る日帰りではなく、ゆっくり宿泊して冷泉を楽しみたい方には『RSL コールド & ホット スプリングス リゾート(瓏山林蘇澳冷熱泉度假飯店)』がお勧めです。ひなびた温泉街の中でひときわ目立つ12階建ての5つ星ホテルで、少しリッチな気分で快適に滞在できます。
異国でありながら、和室の部屋が多いのが特徴で、畳に布団という和風スタイルでのんびりできます。もちろん部屋の風呂で冷温泉、両方の湯が楽しめるので、好きな時に好きなだけ温泉に浸れます。
露天風呂がある展望大浴場やスパ、フィットネスセンター、室内温水プールや屋外プールなど設備も充実しており、お子様向けにキッズルームやDIY体験プログラムなども用意されています。
日帰りの方でもきれいな個室浴場が利用できるので、冷泉のはしごもいいですね。
たっぷり冷泉を楽しんだら、そこからバスで約10分で行ける南方澳漁港で新鮮な海の幸を堪能してみてはいかがでしょうか。南方澳漁港は台湾三大漁港のひとつで、「進安宮」のバス停周辺にはその日水揚げした新鮮な魚介が味わえるレストランがたくさん並んでいます。
水槽の中から魚を選び、調理法を指定することもできますが、店によってはバランスよく組まれたセットメニューも用意されているので、中国語が分からなくても大丈夫です。鮮度抜群、価格の安さも魅力です。
写真:吉川 なお
地図を見る冷泉と海産物が堪能できる蘇澳には、台北市内から直通バスが運行されています。台鉄でも行けますが、東部路線は本数が少なく指定席も確保しにくいので、必ず座れて安くて便数も多いバスが便利です。
行き方は2通り。MRT大坪林駅4番出口を出て右手100メートルのバス停から「大都会汽車客運【9028】」、またはMRT圓山駅(南港駅、南港展覧館駅でも上下車可)から「国光客運【1879】※羅東経由」でどちらも「蘇澳站」下車、所要時間は約2時間です。
南方澳漁港へは、蘇澳站駅前からバスに乗り「進安宮」で下車するといいでしょう。南方澳漁港から帰る際は「進安宮」のバス停から蘇澳方面に約5分歩くと「国光客運【1879】」のバス停があります。往路と同じくMRT圓山駅、南港駅、南港展覧館駅に停車します。
お土産には蘇澳ならではの特産品を。蘇澳站から徒歩5分の「鳳鳴蘇澳羊羹本舖」(近所の類似店に注意)のようかんは冷泉を使って作られた世界でここだけの品。旅の記念に最適です。
夏の暑い日は身体の芯までひんやりする冷泉が何よりの清涼剤!心身ともにリフレッシュできますよ♪
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(2024/3/29更新)
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