知的好奇心を刺激する「大阪・道修町ミュージアムストリート」薬の歴史と文化を知る旅

知的好奇心を刺激する「大阪・道修町ミュージアムストリート」薬の歴史と文化を知る旅

更新日:2016/05/14 15:31

日本の医薬品産業発祥の地と言われる大阪・道修町(どしょうまち)。通りには大手製薬会社の本社ビルから小中の製薬会社まで多くの製薬会社が並びます。道修町通りの約300メートル、徒歩5分ほどの圏内には、近年、医薬品にまつわる展示施設が点在し、「道修町ミュージアムストリート」と呼ばれています。歴史のある薬の街で、あなたの知らない大阪を発見してみませんか?

まずは薬の神様へお参りを

まずは薬の神様へお参りを
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大阪・北浜のオフィス街、「神農さん(しんのうさん)」の愛称で親しまれている少彦名神社(すくなひこなじんじゃ)。参道にずらりと並ぶガラスケースには、製薬会社が寄贈した薬品が展示されていて、CMや薬局でお馴染みのあの薬も、この薬も!オフィス街にひっそりと建つ小さな神社は、江戸時代に薬問屋が並んでいたこの町にまつられた薬の神様で、ここ10年、病気の家族を抱える参拝者の数が10倍以上になっていると言われるほど、朝早くから来る人が絶えません。

魔よけ・健康祈願の「お守り」としての神虎

魔よけ・健康祈願の「お守り」としての神虎
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病気の治癒を願う人だけでなく、薬学の国家試験合格祈願や、抗がん剤などの薬効を願う絵馬がたくさん奉納されていて、医薬医療者にとって聖地のような場所であり、薬に関わる人たちからの切実な祈りをしっかりと受け止めてくれる神様として心を寄せられています。iPS細胞でノーベル賞を受賞した山中伸弥教授も、ここでお守りを授かり、お礼の手紙が展示されています。

少名彦(すくなひこな)神社のシンボルとなっている神虎(張子の虎)。虎は古来より邪を祓い、鬼を退治すると言われていて、大阪の郷土玩具である張子細工で虎をつくり、お守りとしてきました。現在は、万病平癒、無病息災のお守りとして多くの人が買い求めに訪れています。

神社の横にある社務所ビルの3階には、「くすりの道修町資料館」があり、無料で見学することができます。生薬の材料を触ってみることができたり、江戸時代から高い信頼を得てきた薬の品質管理のこと、張子の虎の由来や少彦名神社の歴史などがわかりやすく展示されています。江戸、戦前、戦後の道修町の歴史をVTRで見ることもでき、現在道修町にたくさんある大手製薬会社の本社の成り立ちを知ることができます。くすりの道修町資料館は日・祝休みですのでご注意ください。

次は杏雨書屋(きょううしょおく)へ

次は杏雨書屋(きょううしょおく)へ
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少彦名神社から徒歩数分のところにある杏雨書屋。ちょっと入りにくい雰囲気の建物ですが、こちらも見学は自由にできて入場無料(土日祝休み)。杏雨書屋は、武田科学振興財団により運営管理される図書資料館。武田薬品創業家の五代武田長兵衛が、関東大震災で多くの貴重な書物が失われてしまったことを悔やみ、私財を投じて東洋の古医書を中心に和漢の善本を収集して社会のために役立てようとしたことから始まった施設です。

「杏雨」とは、「杏林(医学)を潤す雨」という意味。100万冊におよぶ蔵書の80%は江戸時代の医学書という古さ。私たちが教科書でお馴染みの解体新書といった有名なものから、国宝三点・重要文化財八点など、杏林界を潤す貴重な世界有数の東洋医書コレクションとして広く利用されています。

気軽に立ち寄れる大日本住友展示ギャラリー

気軽に立ち寄れる大日本住友展示ギャラリー
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杏雨書屋から数メートル歩いたところには大日本住友製薬の本社ビルがあり、その100年を超えるあゆみをビルの一階に外側から見学できるように展示してあります。海老江工場(大阪市福島区)で長年使用されてきたドイツ製の蒸留缶やろ過器、製薬所の再現模型などを通りからガラス越しに気軽に見ることができます。

時間に余裕のあるなら、田辺三菱製薬資料館も。こちらは事前に予約が必要なのでご注意を。田辺三菱製薬本社の二階にあり、道修町の歴史、田辺三菱製薬のあゆみ、そして次世代へ繋ぐゾーンでは、3DCG映像やタッチパネルによるクイズ形式で、子供から大人まで楽しめる展示になっています。

最後に

安土桃山時代、豊臣秀吉の商業政策により108軒の薬種商が集められ、薬の町として始まった道修町。江戸時代には、清やオランダからの薬を一手に扱う「薬種中買仲間」が店を出し、日本に入ってくる薬は、いったん道修町に集まり、全国に流通していったという歴史のある場所。大阪のオフィス街に残る貴重な施設で「大人の社会見学」を楽しんでみてはいかがでしょうか?

掲載内容は執筆時点のものです。 2016/04/26 訪問

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