鉱山跡に咲く奇跡の高山植物!愛媛・別子銅山のツガザクラ

鉱山跡に咲く奇跡の高山植物!愛媛・別子銅山のツガザクラ

更新日:2016/04/23 20:16

日本三大銅山のひとつ、愛媛県「別子銅山」。かつては世界一の銅の産出量を誇り、住友グループの発展の礎となりました。閉山後は住友の手によって深い自然に戻されていますが、1万人以上が住み、工場が煙を上げていた鉱山跡に、信州にしか咲かない高山植物「ツガザクラ」が咲くのです。遠く離れた四国、町に程近い標高1200メートルあまりの山で高山植物が見られるとあり、花の時期には多くの登山客で賑わいます。

産業遺産てんこ盛りの登山道は楽しすぎる!

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ツガザクラが咲く場所は標高1294mの銅山越付近。別子銅山の中では最も標高の高い場所になります。もちろん登山準備は必要ですが、かつては多くの人が住み、住宅や店や病院、工場があった場所です。比較的安全かつ快適に歩く事が出来ます。登山口は新居浜側の「東平」(とうなる)と山向こうの「日浦」の2か所があります。公共交通機関は頼りにできませんので車でのアクセスになります。銅山越までの歩行時間は約1時間30分と、どちらも同じくらいですが、ツガザクラを見るにあたってのおすすめは「日浦」になります。日浦は山を越えるため運転時間は長くなりますが、東平への道と違い狭路区間が連続しないため渋滞が発生する可能性が少なくなっています。また、ツガザクラは南側斜面の日浦側に多く生息しているため、見どころが多くあります。

シーズン中の日浦登山口の駐車場は満車確実です。少し道を進むと広い路肩が何か所かあるのでそちらに駐車して登山道まで少し歩いて戻りましょう。銅山越までの登山道には多くの産業遺産が残っています。鉱山町の跡や歌舞伎が演じられた劇場跡、多くの子供が通った小学校跡。さらには工場跡や坑道口など見どころは目白押し。先述の歩行時間1時間30分では絶対に足りません。倍近くの時間をたっぷりとって、ゆっくり見学しながら登りましょう。

なお、東平には「東洋のマチュピチュ」と人気の貯鉱庫などの産業遺産が残っています。どうしても東洋のマチュピチュも見ておきたいという方は、車が混みあう前の早朝のアクセスがお奨めです。

四国には別子銅山跡にだけ、日本最南限に自生する高山植物「ツガザクラ」

四国には別子銅山跡にだけ、日本最南限に自生する高山植物「ツガザクラ」
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「ツガザクラ」はサクラという名前を持っていますが、まったく別の植物。花は米粒くらいのとても小さなもので、釣鐘状に白い花を多数つけます。砂礫地や岩場に這うように咲くので、普通に山を登っているとその存在に気付かないくらいの小さな植物です。葉が針葉樹のツガ(栂)に似ている事、花の色が桜に似ている事からツガザクラという名前がつけられました。

ツガザクラは信州や東北の高山に7〜8月の夏に花をつる高山植物です。四国ではこの別子銅山付近にだけ自生し、日本最南限の自生地とされています。信州から遠く離れた四国に自生するのは、鉱山独特の砂礫地帯と海から一気に立ち上がる厳しい環境が自生する条件と奇跡的に合致しているからと考えられています。標高も1200mほどの低い場所に咲くため、銅山越のツガザクラは毎年5月20日前後に見どころになります。

余談ですが、登山道を歩いていると非常にツガザクラに似た釣鐘状のピンク色の花が目につきます。これは「アカモノ」という別の植物。四国では比較的よくみられる植物でツガザクラよりもひとまわり以上大きな花を咲かせます。アカモノの葉は広葉樹のように広がっていますので、判断の基準になります。アカモノも美しい花なのでしっかりと愛でましょう。

ツガザクラ観賞は「牛車道」ルートがオススメ

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小足谷の鉱山町跡を通り過ぎ、道を進むとやがて「ダイヤモンド水」がある広場に出ます。ここは調査採掘の際、地下深くから湧き出した美味しい水が味わえます。この先「目出度町」(めったまち)と「第一通洞」方向へ道は分岐しますがどちらも銅山越に続きます。ツガザクラを少しでも多く見たい方は「目出度町」、通洞などの産業遺産を見たい方は「第一通洞」へ進んでください。

やがて道は別子銅山最初の坑道「歓喜坑」手前で合流します。その先、再び道は二股に分かれます。ここは左へ進む「牛車道」に進みましょう。牛車道は歓喜坑で産出された銅を海がある新居浜市まで銅山越を越えて牛車で運んだ道。閉山後もとても歩きやすく、快適な山歩きが楽しめます。牛車道付近の植生は岩や砂礫になっており、地形的に森林限界を越えた高山のようになっています。この付近から道端の岩場に目をやると、華麗なツガザクラが咲いているのが目につきます。とても小さな花なので目を凝らしてみないと気づきませんのでよく見てみましょう。牛車道からのツガザクラは崖の中腹に咲く個体を見上げる事が多く、青空と一緒に下向きの花をしっかりと写せる場所が多くあります。花の写真を撮るには絶好のスポットです。

また、牛車道に入り崖の下を見下ろすと、石で囲まれた砦のような遺跡があります。これは「蘭塔場」といい、1694年の別子の町を焼き尽くした大火災の犠牲者をまつる墓所です。ここには先述した目出度町の町跡を通るルートで登ると参拝する事ができます。この蘭塔場にもツガザクラが咲きますので、時間があれば立ち寄ってみるのもよいでしょう。

ツガザクラが咲く銅山越付近はまるで日本アルプスの風景!

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牛車道を進むとやがて「峰地蔵」の祠が安置された広場に到着します。ここが標高1294mの銅山越です。ここから新居浜側に下らず、西側の「西山」へ向かう道を進みます。ほんの少し進むだけで突然木々が無くなり、一面砂礫地帯の地形になります。その雰囲気はまるで信州の日本アルプスですが、すぐ眼下には四国有数の工業地帯である新居浜の市街地が望めます。そして、この付近にツガザクラが群生しています。

かつては工場が煙をあげ、多くの人が銅山開発に勤しんでいた場所。半世紀後にはそこはまるでアルプスのような高山を思わせる自然に戻り、美しい高山植物が咲き誇ります。小さくも誇らしく咲くツガザクラの姿は凛々しく思えます。貴重なツガザクラの自生地は現在は保護されておりロープで立ち入り禁止となっています。立ち入ると脆い岩盤は崩れ、ツガザクラはすぐに枯れてしまいます。とっていいのは写真だけ、保護場所の中には入らないように願います。

「アケボノツツジ」と「ツガザクラ」の花のコラボもすごい!

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銅山越から東に進むと標高1625mの西赤石山があります。西赤石山は「アケボノツツジ」が咲く山として非常に人気があります。アケボノツツジの見頃は5月初旬。5月中頃から末の花期のツガザクラとは年によって花期が見事に重なる事があります。ツガザクラと違い、山肌を一面にピンク色に染めるアケボノツツジは遠目にもとても美しく見えます。

西赤石山への登山時間は銅山峰から約2時間。途中にもツカザクラの群生地がいくつもあります。西赤石山は別子銅山より離れますので、本来の自然の植生が手つかずで残る山。頭上に残る鮮やかなアケボノツツジを愛でながら、別子銅山や新居浜の町、瀬戸内海を見下ろしながらの登山もまた格別です。

登山後には別子銅山の余韻を楽しみながら快適な温泉はいかが?

別子銅山登山で汗をかいたのならば、やはり下山後にはしっかり温泉で疲れを癒したいところ。おすすめは「道の駅マイントピア別子」にある「別子温泉・天空の湯」。2016年4月15日に全面改装でリニューアルされたばかりの気持ち良い温泉で、値段も大人500円とリーズナブルです。道の駅は別子銅山最後の採鉱本部があった場所。敷地内には第4通洞や観光坑道などの産業遺産も数多く残っています。別子銅山の資料なども多く展示されているので、登山の余韻に温泉と一緒に浸るにももってこいの場所です。湯上りには名物の「いよかんソフト」も楽しみましょう。

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掲載内容は執筆時点のものです。 2013/05/18 訪問

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