まるで緑の中の孤島!バロックの至宝シチリア・ラグーザは2つの顔を持つ世界遺産の街

まるで緑の中の孤島!バロックの至宝シチリア・ラグーザは2つの顔を持つ世界遺産の街

更新日:2016/04/19 13:44

吉川 なおのプロフィール写真 吉川 なお 台湾在住ライター、元旅行会社勤務の旅行マニア
イタリア・シチリア島の南東部に位置するラグーザは、イブレイ山地の渓谷に挟まれた丘の上に広がる町。新市街の上の町スペリオーレと旧市街の下の町イブラという高低差がある2つの地区は世界文化遺産に登録され、それぞれ異なった魅力を持っています。

上の町から見下ろしたスぺクタルな眺めと、狭い路地の中に佇むバロック様式の建築群をそぞろ歩くのがこの町の楽しみ方。中世の面影を感じるラグーザにしばしタイムスリップ!

後期バロック様式の美しい町

後期バロック様式の美しい町

写真:吉川 なお

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ラグーザは、シチリア島南東部のラグーザ県の県都です。険しいイブレイ山地の南の渓谷の間に位置し、高台にある新市街スーペリオーレと低い場所にある旧市街イブラという2つの町からなっています。

シチリアという語源になった古代シクリ人によって築かれたこの町は、当初はイブラ地区だけでしたが、1693年の大地震によって壊滅的な被害を受け、地元の貴族たちによって新たにスーペリオーレという新市街が丘の上に建設されました。

高低差があるこの2つの町は約300段もの階段で結ばれており、互いに豊かさを誇示するため、当時最先端だったバロック様式で町を再建。美しい装飾が施されたバロックの町として見事に復活しました。

2002年、イブラとスーペリオーレにある18件の建物が世界文化遺産に指定され、シチリア東南部にある他の8つの町、「カルタジローネ」「ミリテッロ・イン・ヴァル・ディ・カターニア」「カターニア」「モディカ」「ノート」「パラッツォーロ・アクレイデ」「シクリ」と共に、【ヴァル・ディ・ノートの後期バロック様式の町々】として保護、保存されています。

上の町スーペリオーレから見る絶景

上の町スーペリオーレから見る絶景

写真:吉川 なお

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新市街スーペリオーレは、都市計画により道路が碁盤の目状に整備され、近代的な建物が多く立ち並んでいます。その中でやはり存在感を示しているのはバロック様式で再建された教会です。

目抜き通りのイタリア大通りに建つ『サン・ジョバンニ・バッディスタ大聖堂』はまさに復興のシンボルといえる建物。尖塔形の鐘楼が天空にすっくと伸び、凛と建つ姿は再興にかけた人々の思いを象徴しているかのようです。

『サンタ・マリア・デッレ・スカーレ教会』もラグーザがたどった歴史を物語る建物。被害を免れたゴシック部分と修復されたバロック部分が混在する珍しい教会で、上の町と下の町との分岐地点に建っています。

教会の前にある階段は両地区を徒歩で行き来する際の要衝で、ラグーザの絶景ポイントでもあります。ここから見下す細長いひょうたんのようなイブラの風景は息をのむ美しさ。まるで緑の中に浮かぶ陸の孤島のようで、ラグーザの受難を凝縮したような光景でもあります。

迷路のようなイブラの町並み

迷路のようなイブラの町並み

写真:吉川 なお

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旧市街のイブラ地区は迷宮のような町。町全体が坂道と階段で構成され、石畳の小さな路地が縦横に走り、スーペリオーレとは全く違う雰囲気です。

迷路のような小路を歩いていると、中世の町にタイムスリップしたような錯覚に陥ります。ひっそりとした先が見えない不思議な街を歩いていると、ふと狭い道の両側に迫るように建つ住宅のベランダに洗濯物が見え、そこで暮らす人々の息吹を感じます。

同じようにバロック建築で彩られながらも、都市化が進んだスーペリオーレ地区と廃家が多く残るイブラ地区には対極の趣があります。

ユニークなバルコニー装飾

ユニークなバルコニー装飾

写真:吉川 なお

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当時流行したバロック様式で装飾された邸宅も数多く残っています。イブラ地区の入口に位置する『コゼンティーニ邸』は財ある貴族の屋敷で、3階のバルコニーの下に目を引く装飾が施されています。

そこに並んでいるのはユニークな人物像の数々。形相はさまざまで、音楽を奏でる人、楽しそうな人、物憂げな人、中にはちょっと不気味な人もいて、表情も仕草もとてもユーモラスです。当時の人の個性的な表現力に思わず笑みがこぼれてしまいます。

シチリア・バロックの教会群

シチリア・バロックの教会群

写真:吉川 なお

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東西2キロにも満たない小さなイブラの町は、総面積に対して教会の数が多いのも特徴で、あちらこちらにシチリア・バロックで彩られた教会が点在しています。

カルタジローネ焼の青い鐘楼を頂く『サンタマリア・デッリートリア教会』、8世紀のビザンチン時代の城壁の上に鐘楼が建つ『プルガトリオ教会』など、狭い路地と路地の間や坂道や階段の先に突如見えてくる教会は古代から人々の信仰の拠り所だった場所。いまも美しい鐘の音が鳴り響きます。

イブラの中心ドゥオモ広場の周辺には、復興の立役者の一人、ロザリオ・ガリアルディが設計した2つの教会『サン・ジョルジョ教会』と『サン・ジョゼッペ教会』が建っています。この2つは大きさこそ違えど外観がよく似ており、大きな『サン・ジョルジョ教会』はシチリアンバロックの傑作といわれ、250段もある階段の上にそびえています。

柵で覆われた正面の左横に入口へと続く階段があり、中に入ると高さ40メートルのクーポラから陽光が差し込み、神々しい雰囲気に満ちています。祭壇を囲むように配置された33枚のステンドグラスの13枚には、イブラの守護聖人聖ジョルジョが殉教する場面が描かれ、美しい光を放っています。

この大聖堂は1775年に建てられたもので、震災前はイブラ地区のオアシスである『イブレオ庭園』の入口近くに建っていました。いまその場所にはカタロニア・ゴシック様式の門が残るのみで、龍を滅ぼす聖ジョルジォとアラゴン家の鷲の紋章だけが寂しく往時の姿を留めています。

自分の足で歩いてこそよさがわかる町

中世の面影を色濃く残すラグーザのよさは、自分の足で歩いてこそわかります。歩き方のコツは、やはり上の町から下の町に下っていくこと。その逆はかなりきつく、体力も消耗します。本数は少ないですが、両地区間には市バスも運行されているので、時間とルートを確認してうまく活用するのも手ですね。

世界遺産のシラクーサから車で約1時間半、チョコレートで有名なモディカからは約30分の行程です。山間部に位置するため、少々行きにくい面はありますが、夕方から夜にかけて温かみのある生活光に照らされた景色もすばらしいので、時間が許せば宿泊されることをお薦めします。

現代と中世が交差する町ラグーザ。シチリアに行かれたら、是非とも訪れてもらいたい都市です。

掲載内容は執筆時点のものです。 2016/02/07 訪問

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