ドラマチックに展開する関西唯一の高原ハイキング 〜大台ヶ原(奈良県上北山村)

ドラマチックに展開する関西唯一の高原ハイキング 〜大台ヶ原(奈良県上北山村)

更新日:2021/06/12 11:05

津田 泰輔のプロフィール写真 津田 泰輔
奈良県上北山にある大台ヶ原は、標高1500mから1600mの関西唯一の高原台地である。
気温は平地より10度近く低い上、台地状の地形のため標高差が少なく、夏でも快適なハイキングを楽しむことができる。
大台ヶ原ドライブウェイが頂上付近まで通っており、アクセスも簡単。信州のような高原散策が、関西から日帰りで楽しめる場所なのだ。

空が近くに感じられる

空が近くに感じられる

写真:津田 泰輔

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大台ヶ原のハイキングルートは大きく2つに分けられている。
自然がそのままの形で残る西大台ルートとハイキングコースが整備された東大台ルートの2つ。
西大台ルートは自然保護の観点から入山人数が制限されており、ルートも不明瞭な箇所が多いので、経験者向きのコースのようだ。
今回紹介するのは、一般向けに開放されている東大台ルート。
こちらのルートの方が大台ヶ原の醍醐味を味わえる見所を巡ることができる。

まず目指すのは、大台ヶ原ビジターセンターから苔探勝路を抜けて、大台ヶ原の最高峰日出ヶ岳。
苔むす遊歩道を散策し、時折木々の隙間から見上げる青空を楽しみながら、ゆるやかに登る日出ヶ岳への道を進んでいこう。
空気が澄んでいるせいか、空が近くに感じられる。

日出ヶ岳山頂に雲が迫る

日出ヶ岳山頂に雲が迫る

写真:津田 泰輔

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日出ヶ岳山頂へは歩き出してから40分程度で到着する。最後に少し急な木の階段を登らなければならないが、次第に視界が開けて素晴しい景色が広がってくるので、今までの疲れも吹き飛ぶことだろう。
日出ヶ岳山頂の展望台は世界遺産の大峰山脈から、尾鷲の熊野灘、冬の空気の澄んだ日はなんと富士山まで見えるという。
とにかく、360度の眺望で天気が良ければ素晴らしい景色を楽しむことができる場所なのだ。
ただ、大台ヶ原は世界でも有数の多雨地帯。台地状に盛り上がっているため、湿った空気が大台ヶ原にぶつかって雲に変わり大量の雨を降らすという。
この日も山頂の休憩所で休んでいると、みるみる下から雲が上がってきて、一瞬であたりがガスに包まれてしまった。
1年で400日雨が降るといわれている大台ヶ原。ここを訪れる際は必ず雨具を持って行きたい。
天候が悪くなると、気温もぐっと下がる。いくら整備されているとは言え、ここは1500m以上の高地。最低限の登山装備は用意していきたい。

正木ヶ原に広がるトウヒの立ち枯れ

正木ヶ原に広がるトウヒの立ち枯れ

写真:津田 泰輔

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日出ヶ岳からいったん山を降り、正木峠を越えて、大台ヶ原でも有名なスポット正木ヶ原へ。
ここはかつては森林であったのが、1959年の伊勢湾台風で木々が多く流されたため、原生林は明るくなり、今まで苔に覆われた地面が笹に変わってしまった。その笹を食べるために鹿が集まり、鹿は笹だけではなく木の皮もはがして食べてしまうため、木々は次々と枯れてしまった。
それがトウヒの立ち枯れというこの景観を生み出してしまった経緯である。
ガスに覆われた正木ヶ原は幻想的で、森の墓場とも言えるこの場所で霧に包まれるなんて、なんともドラマチックな展開。
天気の変わりやすい大台ヶ原は一瞬でガスに包まれるなんて日常茶飯事。こんなドラマチックな展開に出会える可能性は高い。

鹿の群れに良く出会う牛石ヶ原

鹿の群れに良く出会う牛石ヶ原

写真:津田 泰輔

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正木ヶ原を抜けると、次は牛石ヶ原。ここは平坦な高原っぽい雰囲気の場所が続く。そして、鹿と出会う確率も高い場所。
この日も親子連れの鹿が駆け抜けて行き、遠巻きにこちらを眺めている。ほんとに鹿が多い場所なので、どこかで必ず出会えるのではないだろうか。
同じ奈良でも、奈良公園の鹿は大人しいが、こちらの鹿は自然の鹿なので活発に動き回っている。その活発さが森林を50年余りで枯らしてしまうのだが…

800mの断崖絶壁「大蛇ぐら」

800mの断崖絶壁「大蛇ぐら」

写真:津田 泰輔

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大台ヶ原のクライマックスは800mの断崖絶壁。絶壁の端は鎖の柵だけで高所恐怖症の人は恐らく近寄れないかも。
800mの深い谷の向こうには、2000m近い大峰山脈の山容が一望できる。
右手には大台ヶ原が台地であることを示すような切り立った絶壁が続き、遠くに落ちる落差250mの大瀑布「中の滝」がわずかに見えて、かすかに滝の落ちる水の音が谷に響いている。

この断崖絶壁を造り出したのは、年間4000mm以上の雨だそうだ。長い年月をかけて隆起したこの台地を、また長い年月をかけて雨が削り取って行ったらしい。

東大台ルートのモデルコースでは、ここからシオカラ谷へ降りてビジターセンターに戻ることになっているが、最後に急な登りが待っているので、体力に自信がないのなら引き返して中道でビジターセンターに戻ることをお勧めする。
そのルートでトータル約3時間。シオカラ谷を回ると約4時間ほどになるだろう。ルートはスタート地点のビジターセンターでも確認できるので、出発前にチェックしておきたい。

刻々と変化する天候。次々に移り変わる風景。
大台ヶ原にはそんな見所満載のドラマチックな展開が待っている。

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掲載内容は執筆時点のものです。 2011/07/09 訪問

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