ご紹介する「天神神社」は、下田の奥座敷として知られる蓮台寺にあります。下田市から北に約2kmに位置し、北と南を山に挟まれた細長い地形。ここはその昔、僧の行基が蓮台寺を開創し、天平年間から鎌倉時代の承久年中まで、凡そ500年の間、真言密教の地として栄えていたところ。寺は、時代の流れと共に廃寺となってしまいましたが、地名として残されています。行基が、温泉を発見したとされていて、温泉地としても有名な場所で、市街を通る県道沿いに温泉宿や民家、ご紹介している天神神社があります。
天神神社には、蓮台寺の本尊だった「大日如来坐像」が安置されており、神を祀る神社に仏がある、ちょっぴり変わったスタイルの神社なのです。早速、神社へ行こうと思うのですが、立ちはだかるのがこちらの階段。目の前に現れた階段は100段以上あり、当然登らなくては神社へ行けません。この階段は、下田旧名主から寄進された有り難いもので、神のご加護を受けるため屈せずに階段を上がってみましょう!
階段を上りきると、神社の鳥居があります。左手に手水舎、右手に御神木があり、鳥居から真っ直ぐ導かれるように舗装された参道が続いています。正面にあるこの社が「天満宮」で、左奥にある建物が大日如来坐像が祀られている堂です。天満宮は、天神様と呼び親しまれている「菅原道真」が祀られ、学問・厄除けの神としてご利益があるとのこと。天神神社は、そんな天神様から名付けられたようです。
ここに辿り着くと、いち早く大日如来坐像を見たくなってしまいますが、堂へ行く前に失礼が無いように天満宮を参拝してから行くことをお勧めします。
堂は、仏像が見られるようにガラス張りになっていて、このようにいつでも自由に拝むことができます。正面にいらっしゃるのが大日如来坐像で、4体の四天王が如来を囲むように守護している様子が見られます。
話しが少しそれてしまいますが、明治時代になると政府から、仏神分離を進める「廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)」が発布されました。多くの神社では、廃仏毀釈を行ったため、仏と神を一緒に祀っているところは珍しく稀。しかも、ここで祀られているのはただの仏ではなく、すべての仏、菩薩の元となる最高仏とされる大日如来がいらっしゃるなんて驚きですよね。
ここでは、開運の大祖神、商売繁昌、人々の守護神など、神として信仰されているそうで、だからこそ時代を乗り越えることができたのでしょう。さらに驚くことがあと一つ。それは大日如来を制作した人物です。奈良の東大寺の南大門の金剛力士立像や、興福寺の北円堂の弥勒仏菩薩など、名だたる国宝品を手掛けた仏師「運慶」が作り、そんな名工が作った仏像をすぐ近くで見れてしまうんです!
まじまじと見られ、宝飾や指の様子などといった、細やかな部分まで見られます。優しい顔つきをなさっていて、何でも願いを聞き入れてくれるかのような円満な表情です。仏を目の前に祈れば、願いを聞き入れてくれ、きっと開運に繋がること間違い無しでしょう! 国指定の重要文化財を無料で見られる場所なんて極めて珍しく、希少価値があります。
大日如来坐像を守護している4体の四天王は、平安時代後期から江戸時代のもの。市指定の文化財になっているので、こちらも見逃さずに見ておきたいところです。地元の人達が守り抜いてきた大切な場所なので、騒がないゴミを散らかさないなど、くれぐれもマナーを守って見学して下さいね!
同じく、下田市内にあるロープウェイで行く寝姿山山頂には、運慶が制作した「愛染明王像」が安置されています。同じ人物が仏像を作ったのにも関わらず、制作年代などによって、表情の違った仏像を見られるので、併せて見れば面白みが増すかもしれません。
天才仏師と称される運慶が作った仏像は、やっぱり一味違います。一見の価値あり! なので是非、下田市蓮台寺に訪れて天神神社を参拝してみては如何でしょうか?
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