長野県塩尻はぶどうの産地として有名で、ワイナリーもいくつかあり、ワイナリー巡りなどが最近人気の場所です。遺跡があるのはJR中央本線塩尻駅から車で5分ほど、徒歩でも20分ほどの場所にある平出(ひらいで)地区。ぶどう畑の中にいきなり現れる復元された古代の住居たち。周りは広い芝生の空き地があり、そこだけ古代に戻ったかのような空気が漂います。背景には現代の住居も見え、そのコラボがなんとも不思議な風景が広がります。
集落の歴史は少なくとも縄文時代にまでさかのぼります。まずは縄文時代へタイムトリップ!平出遺跡の縄文時代は縄文中期(約5,000年前)が最も栄え、110軒以上の住居跡が見つかっています。
人々が初めて住居を構えて、集まって住む集落が形成された縄文時代から、次は古墳時代へ。当時の有力者の家だったと考えられる大型住居と穀物倉庫(高床式)が復元されています。周囲には桃などの果樹園・森などが整備され、6世紀末から7世紀初頭の農村の様子が丁寧に再現されています。古墳時代にネズミの侵入を防ぐネズミ返しのついた高床式倉庫も見どころのひとつです。
復元住居の中は入ってみることもできます。室内にはカマドが設けられていて、当時の生活がうかがい知れます。住居内からは土師器、須恵器といった土器や、鉄製の鋤、鎌など多くの遺物が見つかっていて、それらは遺跡からは約600メートル、歩いて7〜8分の距離にある平出博物館に展示されています。
復元された遺跡の周囲には当時を再現した畑や果樹園のほか、食用、染料、観賞用に当時使用されていたであろう植物が栽培されています。それぞれの植物の薬効などが掲示されていて、意外に身近な植物に思いもよらない薬効があったり楽しく古代の知識が身につきます。
復元住宅などがある平出遺跡公園の中にはガイダンス棟という建物もあって、休憩コーナーや展望室など、利用者が平出遺跡についてくつろぎながら学習できる施設になっています。事前に申し込みをしておけば、「火起こし」や「勾玉づくり」など、原始・古代に関するいろいろな体験学習もできますよ。
平出遺跡群の一角にある平出の泉。ここの泉は地下水がわきだすことでできている泉で、驚くほど透明な水が光を浴びて深く澄んでいます。用水路を通して農業のために使用されてきた泉で、江戸時代からは水場の争いを防ぐために厳格に水の管理がされてきたと伝えられているほど、歴史的に貴重とされてきた水。
太古から今も沸き続けるエメラルド色の神秘的な泉は水深6m。底までくっきり見通せる透明度。水温は1年を通して、摂氏10度前後に保たれており、極寒の信州の冬でも、結氷する事はありません。森に囲まれたこの「平出の泉」で何千年も昔からずっと湧き続ける水、この泉があったからこそ、この地に長く集落が存続したのでしょう。
縄文時代から平安時代までのタイムトリップが体験できる平出遺跡。博物館の近くには週末だけオープンするこだわりのきんぴら工房というパン屋さんもあり、散策の途中に立ち寄るのもいいかもしれません。西に穂高岳や常念岳など北アルプスの峻嶺を、また東に鉢伏山や高ボッチ山など東山山麓のなだらかな山並みを仰ぎ見ることができるこの地で、古代の風景に悠久の時を感じてみてはいかがですか?
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