「東洋一の断崖」台湾東部海岸の蘇澳花蓮港道路跡を辿る

「東洋一の断崖」台湾東部海岸の蘇澳花蓮港道路跡を辿る

更新日:2018/07/31 09:22

飛騨屋 勘左衛門のプロフィール写真 飛騨屋 勘左衛門 時空写真家(特に国内外における定点写真、近現代の遺構、鉄道、動植物等)
台湾東部の蘇澳(すおう)から花蓮(かれん)港までの約120kmの海岸は大理石を主とする急峻な大断崖が連続しています。今は蘇花公路(すうあこうろ)という立派な国道が開通し快適なドライブが楽しめますが、日本統治時代は幅員40m程度の蘇澳花蓮港道路が大断崖をぬう様に走り、自動車やバスが通っていました。現在は廃道となりましたが眼前に迫る大断崖や大海原はまさに「絶景」! 今回はこの道路跡をご紹介しましょう。

昭和初期の蘇澳花蓮港道路。

昭和初期の蘇澳花蓮港道路。

提供元:新光社刊「日本地理風俗大系 臺灣編」(1931)

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日本統治時代の蘇澳花蓮港道路。現在の蘇花公路(国道9号)和清(わせい)隧道坑口付近の写真で崖が大きくオーバーハングする様子がわかります。ここをバスが通行していたのです。断崖の高さは数百メートルから数千メートルに及び、現在の蘇花公路は写真の左(西)側を隧道(和清隧道)で貫通しています。

段落1で紹介した昭和初期の写真と同じ場所を見つけました。

段落1で紹介した昭和初期の写真と同じ場所を見つけました。

写真:飛騨屋 勘左衛門

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蘇花公路の和清隧道北方坑口付近から花蓮方に蘇澳花蓮港道路跡が海岸線に沿って分岐しています。雑草が繁茂していますが、舗装されていて歩くことができます(とはいえ、服装と靴はある程度汚れてもよいものがよい)。遠くに見える白い構造物は蘇花公路の落石除けのシェルターです。

気軽に絶景を楽しむならここ。大清水遊憩区。

気軽に絶景を楽しむならここ。大清水遊憩区。

写真:飛騨屋 勘左衛門

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蘇花公路にある駐車場兼展望台でトイレもある休憩所。ここには蘇花公路の建築史やこの付近についての案内板(ただし中国語と英語のみ)もあります。ただし、売店や自動販売機はないので、飲み物等は事前に購入し持参するしかありません。

蘇花公路「大清水隧道」。

蘇花公路「大清水隧道」。

写真:飛騨屋 勘左衛門

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蘇花公路の大清水隧道を花蓮港方(南方)に向かって望んだ写真。蘇花公路は幅員も十分な立派な道路で、一部は蘇澳花蓮港道路跡を利用しています。蘇澳花蓮港道路跡は隧道坑口付近から左へ分岐して断崖沿いに走っています。現在の蘇花公路は大型バスの通行も多く、歩道もないので歩行には十分な注意が必要です。台湾の道路は右側通行ということも常に念頭に入れておきましょう。

大断崖絶壁に沿って素掘りの隧道が連続する様子はまさに奇観!

大断崖絶壁に沿って素掘りの隧道が連続する様子はまさに奇観!

写真:飛騨屋 勘左衛門

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大清水隧道蘇澳方坑口から分岐する蘇澳花蓮港道路跡を辿ると、小規模ながら崖が崩れ、雑草のみならず灌木も目立つようになります。足元も悪条件になりますので、無理しないで安全な場所で引き返すことが肝要でしょう。前方には崖沿いに走る道路跡と素掘りの隧道が連続する様子が一望できます。大海原も忘れずに!ただし、高所恐怖症の方は十分ご注意ください。

最後に

文中でも記したように、この道路は現在廃道となっており、事実上放置されたまま(一部は見学ができるように整備されています)となっています。したがって踏査される方は十分注意した上で訪問しましょう。特に夏季は雑草や灌木がよく繁茂し、蛇等の出現も考えられますので、特に注意が必要です。
アクセスは鉄道ならば北側からは和仁駅、南側は崇徳駅から蘇花公路を歩くしかありません。両駅共に停車する列車が少ないので事前に調べておく方が安全です。タクシーをチャーターするのなら南側の新城(太魯閣)駅から利用できます(大清水隧道付近まで往復で約1000NTD)。
台湾には多くの名所旧跡があり、それらを一つ一つ訪ねるのも有意義で楽しいものですが、たまにはこのような日本統治時代の遺構に触れるのは如何でしょうか。

掲載内容は執筆時点のものです。 2014/12/25−2014/12/26 訪問

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