北アルプスを背にする松本城の雄姿も!湧水の城下町を歩く

北アルプスを背にする松本城の雄姿も!湧水の城下町を歩く

更新日:2016/03/27 18:43

和山 光一のプロフィール写真 和山 光一 ブロガー
北アルプスを背景にした国宝松本城に代表される松本市。城下町の面影を残すコンパクトな街並みは「歩く町」としての楽しみがあります。街なかには、美ケ原に端を発する薄川と中心市街地を流れる女鳥羽川の伏流水によるいくつもの湧水があり、それらを合わせた「松本城下町湧水群」は環境省の「平成の名水百選」にも認定されました。松本城を中心に名水を巡りながら市内に点在している名所を訪ね、松本の魅力に触れてみましょう。

風格ある漆黒の天守は松本のシンボル

風格ある漆黒の天守は松本のシンボル

写真:和山 光一

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城下町とともに戦乱の世を生き抜いた「松本城」。雪を抱いた北アルプスや美ケ原高原の山並みを背景に天に屹立する黒く凛々しい城は松本市のシンボルであり、日本全国数多くある城の中でもたった五つしかない国宝に指定される日本最古の五層天守閣を誇ります。松本城は戦国時代、石川数正、康長父子が文禄2年(1593)頃建てたと推定され、戦闘に有利な山城が多く築かれた戦国時代の中で、異色の数少ない平城です。

火縄銃全盛の時代に建てられた天守だけに100以上の鉄砲狭間を有し、実践的な石落としを持つなど、戦闘に特化した城と言えます。一方で、泰平の世になった江戸時代に増築された「月見櫓」は、天守の黒塗りと違い、朱塗りが基調の開放的な作り。松本城は戦いの砦としての「天守」と、平和な時代の象徴「月見櫓」、二つの顔を合わせ持つ城なのです。

「月見櫓」は松平直政が城主であった頃、三代将軍家光を迎え月見をするために建てられたものです。戦いのための設備は一切なく、優雅な雰囲気の櫓で、北、東、南の舞良戸を外すと三方がふきぬけになり、周りにめぐらされた朱塗りの回縁や船底形をした天井は開放的な造りです。

松本は今なお水のまち、清らかな水を地下にたくわえた街

松本は今なお水のまち、清らかな水を地下にたくわえた街

写真:和山 光一

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松本は女鳥羽川と薄川の複合扇状地によって豊富な地下水が湧出する湧水地帯で、市街地中心部には今なお多くの自噴井戸や湧水が点在し、平成の名水百選として「松本城下町湧水群」が選ばれています。城下の雰囲気を今も残す町を歩きながら、「まつもと水めぐりMAP」片手に美味しい水でのどを潤す名水巡りはいかがでしょう。

松本市内には井戸が多く、昔から庶民の生活飲料水として使用されてきました。中でも最も古い井戸で松本の城下町形成以前から使用されていたとされ、今も現役という水の町松本を代表するのが「源智の井戸」。城主小笠原家の家臣・河辺与三佐衛門源智の持ち井戸でした。天保14年に著された「善光寺街道名所図会」に当国第一の名水と称賛されている井戸で、町の酒造業者はことごとくこの水を使い、歴代藩主から保護されてきたといいます。「源智の井戸」は、石川数正の頃から 現在まで、庶民の飲み水としてもずっと大切に使われてきていて、今も水を汲む人で絶えません。

信州に海の向こうの異国の風が吹く旧開智学校校舎

信州に海の向こうの異国の風が吹く旧開智学校校舎

写真:和山 光一

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昭和36年(1961)近代の学校建築として日本初の国の重要文化財に指定された「旧開智学校校舎」。明治5年の「学制」の発布により近代教育は新たな幕を開け、その波をいち早く察知した信州で、明治9年(1876)近代教育の普及に向けて女鳥羽川沿いに建てられた擬洋風建築の建物です。

設計施工は松本の大工棟梁の立石清重で「近代教育に見合う建物を」と西洋の建築を見よう見まねで取り入れました。擬洋風といわれるこの建物は洋を取り入れつつもそこかしこに和の雰囲気をにじませている。特に注目したいのが正面玄関の車寄せで、そこは竜と天使と唐破風というミスマッチな構成で成り立っています。しかしながら1階部分の欄間に見られる東洋の象徴である竜は、海の荒波からうねり出て雲を抜けたところで“開智”の文字を掲げ舞う天子のいる西洋へと向かっている、まさに文明開化の日本が世界へ飛びだそうとしている様子をこの玄関の装飾で表現しています。

アーリーアメリカン調の県内最古の洋風司祭館

アーリーアメリカン調の県内最古の洋風司祭館

写真:和山 光一

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旧開智学校脇にあるのが「松本市旧司祭館」。本格洋式建築の総2階建てのこじんまりとした水色の建物です。長野県内に現存する洋館の司祭館のなかでも明治22年(1889)竣工と最も古い歴史を持つ建物です。宣教師の住居として当時の松本カトリック教会の神父・クレマン氏自らが設計し、地元の大工の手により建てられました。

水色のペンキが塗られた下見板張りの外壁、建物上部中央に施された装飾と、アーリーアメリカン調の軽妙なリズムを刻むのを感じさせる外観です。一方、建物内部には1・2階とも北側にガラス張りの内廊下を設け、特に2階の廊下の窓の格子がシンプルながらも空間に変化を与えて賑わいのある空間を演出しています。さらに各室にはシンプルな家具と暖炉を配置し、コロニアル様式の当時の雰囲気により近づけているといいます。

松本民芸家具が配されたクラシックな喫茶店

松本民芸家具が配されたクラシックな喫茶店

写真:和山 光一

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お城の周辺には城下町が整備されるものですが、松本の町もなまこ壁の蔵造りが美しい「中町通り」や、懐かしい商店街の「なわて通り」があります。その縄手通りの一つ橋を渡ったところに白壁の美しい土蔵がシンボルである蔵の町・松本を代表するコーヒー専門店「民芸茶房まるも」があります。女鳥羽川のほとりの辻にあるというのに街の喧騒が嘘のように静かな店内、使い込まれた松本民芸家具やレトロな柱時計、ステンドグラスの淡い照明・・まるでタイムスリップしたかのような空間に、ここが何十年も変わらず人々に愛されてきた喫茶店であることがわかります。

乃木大将が宿泊したこともある慶応4年(1868)創業のまるも旅館の一部を改装、音楽好きの御主人がすてきな音楽と松本民芸家具に囲まれて、憩える場所をオープンされました。低いボリュームでクラシックが流れ、本を読んだり、ただまどろんだり、気軽にフラッと立ち寄って過ごす客もありと、ゆったりとしたコーヒーブレイクが過ごせます。まるもブレンドコーヒーとアップルパイをゆっくり味わってみてください。店と同じように味わい深いものですよ。

街に潜む美意識が宝「松本」

長野県松本市は、上高地をはじめとする北アルプスの玄関口として知られるだけでなく、昔の佇まいを今に残す「歴史と共存する街」でもあります。歴史的な建築物や雄大な山岳風景は、多くのドラマや映画のロケでも使用されてきました。「神様のカルテ」では、なわて通りや深志神社、連続テレビ小説「おひさま」では松本城でロケがおこなわれました。知らなければただの風景も、知っていれば特別な場所。登場人物になりきって物語の中へ入りこんでみては如何でしょうか。

また気鋭のレストランや大人の時間が過ごせるバーが数多くある松本は、泊まりがけで来てこそ満喫できます。松本には温泉も多く、市街地には松本藩の御殿湯とされた浅間温泉や美ケ原温泉、郊外には白濁湯の乗鞍温泉や白骨温泉といった名湯があり、温泉旅館で旅情緒を満喫してみてください。

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掲載内容は執筆時点のものです。 2014/03/22 訪問

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