台中の新名所!日本統治時代の「台中市役所」がレトロなアート空間に大変身!

台中の新名所!日本統治時代の「台中市役所」がレトロなアート空間に大変身!

更新日:2018/07/26 12:24

吉川 なおのプロフィール写真 吉川 なお 台湾在住ライター、元旅行会社勤務の旅行マニア
1895年から約50年間、日本領だった台湾には、その時期建てられた建物がいまも大切に保存・使用されているケースが少なくありません。台湾では、近年、日本統治時代をより深く知ろうという動きが広がっており、崩壊したり風化した建築物も相次いで修復されています。

台中市の「台中市役所」もそのひとつで、2016年2月に2年間の改修工事を終えて蘇り、日本統治時代を体感できる新スポットとして注目を集めています。

建設からの歩み

建設からの歩み

写真:吉川 なお

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「台中市役所」は1911年(明治44年)に台中庁公共埤圳連合会事務所として建てられました。1920年に現在の台中市、彰化県、南投県を合わせた台中州が成立すると、台中市の行政官署「台中市役所」となり、代々日本人が市長を務めました。

1945年に日本の統治が終わって国民党政府に接収されると、市の行政機関はすぐ隣の台中州庁に移転し、代わりに陸軍の司令部や委員会事務所、台中市党本部などに使用され、その後、市政資料館、市政府新聞室や社会局などのオフィスとして使われてきました。

1999年9月の台湾中部大地震では、屋根や壁が大きく損傷し、危険建築とされましたが、2002年に歴史的、建築的価値が評価され、歴史建造物として修復、再利用が決定。総額6,100万台湾元(約2億円)かけて修復工事が行われました。

2016年2月27日、2年に及んだ第二期工事が終了し、一般公開が開始されました。こうして息を吹き返した貴重な文化財は『台中市役所文創園区』として、アートと飲食が楽しめるスポットに変貌を遂げたのです。

かつての台湾で最も美しい行政庁舎

かつての台湾で最も美しい行政庁舎

写真:吉川 なお

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台中市役所は、地上3階、地下1階のL字型の平面二層建築です。レンガ、木材、鉄骨を用い、台中で初めてコンクリートも使用されました。6本の大理石の円柱で支えられたエントランスは植物模様の破風を持ち、まるでギリシャ神殿のよう。側面は赤いレンガがアクセントとなり、屋根にはドーム状の丸天井を抱いています。芸術的にも優れた白亜の殿堂は、当時、台湾で最も美しい行政庁舎と称されていました。

当時を彷彿させるクラシカルな雰囲気はそのままに、「生活、文化、伝承」を経営理念として、1階には台湾の著名な画家・黃騰輝氏が運営する『古典玫瑰園』の飲食店が2店入居しています。2階と3階は台湾の若手芸術家の彫刻や映像作品などを展示する芸術センターで、文化発信拠点としての役割を担っています。

エントランスから中に入ると、広い客だまりの壁に「臺中市役所 明治四十四年」と書かれた黒い表札が掲げられています。そう、そこは当時、間違いなく日本だったのです。

建設年を冠した【CAFE1911】

建設年を冠した【CAFE1911】

写真:吉川 なお

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入口を入って目の前にあるのは、レストラン【CAFE1911】、突き当りにあるのはカフェ【昭和沙龍】で、その両方を運営する「古典玫瑰園」は、バラをコンセプトにしたティーハウスを台湾全土で展開する喫茶店チェーンです。

バラの花と香りに包まれた優雅な雰囲気の中で、英国式アフタヌーンティーが楽しめる店として人気ですが、【CAFE1911】の内装にはバラはなく、供されるティーポットとコップにだけバラの絵が描かれています。

ここではお茶もできますが、食事がメインで、日本式の定食や丼物がいただけます。

レトロなムード漂う【昭和沙龍】

レトロなムード漂う【昭和沙龍】

写真:吉川 なお

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【CAFE1911】の横の趣ある廊下を進むと土産物売り場があり、その奥にカフェ【昭和沙龍】があります。こちらの店名はなぜか昭和です。メニューは【CAFE1911】と同じですが、ここは主に喫茶専門で、こちらのほうが比較的早く座席に座れます。オーダーと会計は1階で、座席は1階、2階どちらも利用できます。

おススメは「市役所特製冰品」というかき氷!ピーナッツ味とマンゴー味があり、これ以外にプリンやアイスクリームなど5種の中から3種選ぶことができます。

写真はピーナッツ味の「秘製花生招財猫冰」で、招き猫を模したかき氷に思わず笑みがこぼれます。招き猫は日本では商売繁盛の縁起物ですが、台湾でも右手(前脚)を挙げている猫は金運を招くとされ、開運を意味して親しまれています。「千万両」のクッキーもご愛敬!

飲料のネーミングや容器にもこだわりがあります。「市役所紅茶」「昭和緑茶」などと名づけられ、冷たい飲み物はオリジナルのガラス瓶で供されます。

この瓶に描かれている2つの〇が上下でつながる赤いマークは、日本人が発案した台中市の市章で、1921年からずっと使われています。日本統治時代の市章が現在も使われているのは、台中市だけです。

「台中州庁」も必見!

「台中州庁」も必見!

写真:吉川 なお

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「台中市役所」とあわせて参観をお勧めしたいのが、道路を隔てて向かい合って建つ「台中州庁」です。1912年に起工、翌年竣工し、その後4回の改修を経て1934年に現在の姿になりました。設計は台北市の総統府などを設計した総督府営繕課所属の森山松之助で、戦後は台中市政府となり、現在は環境保護局と都市発展局がここで業務を行っています。

白く壮麗なバロック建築で、左右の両翼には赤煉瓦と白い花崗岩を用いた「辰野式建築」が踏襲され、中庭にはきれいに手入れされた芝生が広がっています。現役庁舎ですが、休日は一般開放されており、内部参観も可能です。

文化財の再生ブーム

日本では、後世に残したい歴史建造物も一部のみ保存されるケースが多いのですが、台湾では全保存、再利用されているものが多く、そのおかげで私たちは当時の雄姿を見ることができます。

日本統治時代の建物を再生するプロジェクトは、日本人にとっても喜ばしいこと。そういうところからも、日台間の友愛の輪がさらに広がっていくことでしょう。

掲載内容は執筆時点のものです。 2016/02/28 訪問

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