写真：竹内 あや
地図を見るフィンランドの首都ヘルシンキの北約30kmに位置するトゥースラは、トゥースラ湖を中心にのどかな田園風景が続くエリア。多くの芸術家たちに愛された場所で、なかでも世界的に有名なフィンランド人の作曲家ジャン・シベリウスが半生を過ごした地として知られています。
クラピがあるのは、トゥースラのシンボルともいえる湖のほとり。空港を挟んで、ヘルシンキのちょうど反対側に位置します。もともとは1911年から続く農場で、おもに酪農が営まれていた場所。ここで生産された食材や採れたて野菜を使って料理を振る舞っていたのが始まりで、今ではファームキュイジーヌが楽しめるレストラン兼宿泊施設として人気を集めています。
写真：竹内 あや
地図を見る広々とした敷地内には客室棟やレストラン、サウナ、ワインセラーなどのロッジが点在。目の前には初心者から上級者まで楽しめるゴルフコースが広がり、花々で彩られた庭園や屋外シアターまであります。
夏はゴルフのほか、湖でカヤックやヨットを楽しむことも。自転車を借りて湖のほとりをサイクリングするのも快適です。冬には、湖の氷に穴を開けての釣りや、氷上や周囲のトレイルでスノーシューを楽しむことができます。
すぐ近くにはシベリウスの自邸があり、内部を見学することが可能。ほかにもトゥースラ湖畔には、アルヴァ・アアルトが設計した作曲家ヨーナス・コッコネンの自邸や小説家ユハニ・アホの自邸などの見どころが点在。芸術家たちが愛した光景をたどりながら、博物館や自邸巡りをするのもいいでしょう。
写真：竹内 あや
地図を見るクラピの人気の理由のひとつは、なんと言ってもここでしか味わえないファームキュイジーヌ。敷地内には肉加工所、スモークハウス、ベーカリーまであり、敷地内の農場をはじめ、周辺の森で採れたベリーやキノコ、釣り上げたばかりの魚など、それぞれの季節に合わせた旬の料理が楽しめます。
アラカルトで注文することもできますが、基本は朝食、昼食、夕食ともにビュッフェスタイル。夏には色鮮やかな野菜がテーブルを彩り、冬にはイクラをはじめ、さまざまな魚の卵やスモーク、コンポートなどが並びます。
料理に添えるタルタルソースやピクルス、サラダ用のドレッシングもすべて自家製。十数種類あるトッピングの中から好きなものを選んで、自分好みに料理を創造できるのもビュッフェならではの醍醐味です。
事前に予約すれば、農場の食材を使ってシェフと一緒に料理をすることも！ 1911年から続くオリジナルレシピの中から、とっておきのシークレットを伝授してもらえます。
写真：竹内 あや
地図を見る美味しい食事とともに、のんびりとした休日に欠かせないのがサウナ。フィンランドではどの家庭にもあるように、クラピにももちろんサウナ施設が整っています。それも、昔ながらの本格的なスモークサウナ。7時間以上かけて熱した薪で3000㎏もの石を温め、そこに水をかけて蒸気を作り出します。部屋全体が蒸気で満たされるまで、さらに4、5時間。まさに1日がかりの大仕事です。
近年はすぐに利用することのできる電気式のサウナが一般的ななか、スモークサウナを試せるのは貴重な体験。立ち込める蒸気に包まれてじっとしていると、しだいに体の芯から温まってきます。体が熱くなってきたら、小屋の外でクールダウン。夏にはそのまま目の前の湖へ飛び込み、冬には湖面を覆う氷に開けられた穴へ入って体を冷やします。
通常、サウナに入っている間、ヴァスタと呼ばれる白樺の若枝を束ねたもので体を叩いて血行を促進するのですが、クラピでは代わりにヒノキ科のジュニパーを利用します。ウッディー調の爽やかな香りで、リラクゼーション効果もたっぷり。肌の細胞を活性化させるだけでなく、解毒・抗菌作用や美肌効果もあるのだとか。ジュニパーの若い葉を刻んで泥状にしたものを顔と肌に塗り、サウナに入ればさらに効果が期待できるのだそうです。
写真：竹内 あや
地図を見る重厚なレンガ造りの客室棟は、もともとは牛舎だった建物を改築したもの。計26室ある客室はいずれも広々とした造りで、木目を基調にした落ち着いた雰囲気です。ゆったりとした猫脚のバスタブも素敵。各客室の扉に、昔ここの主であった牛たちの写真がひとつひとつ飾られているのもユニークです。
運がよければ、2015年にシベリウスの生誕150年を記念して改装した“特別室”に泊まることも！ サイズや造りはほかと同じですが、この部屋はインテリアがちょっと違います。実は、シベリウスが実際に住んでいた部屋を再現していて、壁にはモノクロ写真や貴重な史料なども！ シベリウスのCDも勢揃いで、心ゆくまで思う存分聴くことができます。
クラピはヘルシンキに近いため、週末はもちろん、平日であってもランチやディナーを楽しみに訪れる人もいるほど。ヘルシンキ空港からであればヘルシンキ中心街へ出るのと同じくらい短時間で行かれるため、ヨーロッパ旅行の途中に立ち寄って、次の目的地に向かうのもいいかもしれません。
ただそこに居るだけで、癒されていくのが感じられる場所――。
森と田園に囲まれた湖のほとりで、美味しい食事とサウナに癒される休日はいかがですか？
【アクセス】
成田、中部、関西、福岡（2016年5月～）からヘルシンキへ直行便で約9時間30分。ヘルシンキ・ヴァンター空港からクラピまで公共バスが運行、所要約30分。ヘルシンキの中心街からも直行便が運行しています。所要約1時間。
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(2024/4/20更新)
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