京都・石清水八幡宮の文化財探訪〜社殿群は2016年新指定の国宝

京都・石清水八幡宮の文化財探訪〜社殿群は2016年新指定の国宝

更新日:2016/03/06 11:00

京都府八幡市にある石清水八幡宮。古くは男山八幡宮とも呼ばれ、関西地方の八幡神社では最も由緒のある神社です。2016年2月に社殿10棟が国宝に指定されたこともあり、古建築や史跡旧跡が好きな人には必見。国宝の社殿の他にも珍しい文化財があるので、あわせての見学をお勧めします。

新指定国宝の「石清水八幡宮本社」

新指定国宝の「石清水八幡宮本社」
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2015年10月に「石清水八幡宮本社」が国宝に指定されることが文化審議会において決定し、2016年2月に正式に国宝となりました。もともと18棟が「石清水八幡宮」の名称で重要文化財の指定を受けていたのですが(18棟のうち2棟は附での指定)、新しく国宝になったのはこのうちの10棟(本殿、摂社武内社本殿、瑞籬、幣殿及び舞殿、楼門、 東門、西門、廻廊3棟)です。江戸時代前期の社殿群ですが、本殿は八幡造という古式で現存最古で最大規模。さらに近世社殿らしい装飾もあって近世神社建築として完成度が高いと評価されています。

せっかくなので、「八幡造」について簡単な説明を。八幡造は切妻の建物を前後に並べたて前殿・後殿とした社殿形式です。全国の八幡宮の総本社は大分県宇佐市の宇佐神宮ですが、この本殿の形式が八幡造です。石清水八幡宮の国宝指定前は宇佐神宮本殿だけが国宝の八幡造社殿でした。実は八幡造というのは全国的にも数が少なく、重要文化財の指定を受けるものは、他に「柞原八幡宮」( 大分県大分市)、「伊佐爾波神社」(愛媛県松山市)があるぐらいです。伊佐爾波神社本殿は寛文7 (1667)年造営で横幅が九間あるもので、古く規模も大きいのですが、石清水八幡宮本殿は寛永11 (1634)年造営、桁行十一間で、さらに古く大きいものです。

写真は楼門とそれに接続する廻廊を載せてみました。これも珍しい形式のもので、楼門が拝殿を兼ねた形式になっています。国宝指定はこの廻廊の内部のほぼ全てです。廻廊まわりの門や摂社の社殿7棟は重要文化財で、国宝ほどではないけど高い価値のあるものなので、あわせて見学していって下さい。ちなみに石清水八幡宮で一番古い社殿は「摂社狩尾社本殿」という建物で、これも重要文化財に指定されていますが、ちょっと離れた飛地境内にあります。山の西側にあってちょっと遠いのですが、これも忘れずに見ておきたい文化財です。

重要文化財の「航海記念塔」は全国最大級の五輪塔

重要文化財の「航海記念塔」は全国最大級の五輪塔
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歴史のある神社なのでいろんな文化財があるのですが、石造物で重要文化財が2件あります。一つは鎌倉時代の「石燈籠」で、書院庭園の中に立っているもの。もう一つがこの写真の五輪塔です。

この五輪塔も鎌倉時代のものですが、特徴はなんといってもこの大きさです。高さが6 mもあって重文の五輪塔としては全国最大級です。五輪塔では2〜3 mで大型といったりするのですが、その倍もあるのでびっくりする大きさです。「航海記念塔」とも呼ばれているのですが、宋と貿易の際の安全祈願で神社を訪れた商人が海難を逃れることができたことのお礼で造ったという伝承に基づくものです。文化財見学とは別に航海の安全祈願に訪れてみるのもいいかもしれません。重文の社殿群のある山頂部ではなく山の麓にあるので、訪問時は注意して下さい。

ちなみに、五輪塔というのは密教的思想に基づくもので、宇宙を構成する地水火風空の五大を表現しています。実は石清水八幡宮は明治になるまでは神社とお寺があわさって「石清水八幡宮護国寺」と称していました。明治の廃仏毀釈で境内から仏教っぽいものはなくなっていったのですが、この五輪塔のようにまだまだ仏教施設の遺構も残されているんです。

露地庭園の遺構の見学も忘れずに

露地庭園の遺構の見学も忘れずに
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社殿や石造物の文化財を紹介しましたが、神社の境内自体も文化財です。土地の文化財指定は「史跡」という種別の文化財になります。境内は「石清水八幡宮境内」という名称で史跡指定を受け、広く保護されています。歴史のある神社なのでいろいろ残っているのですが、前の段落で述べたように仏教的なものもあって、宗教史的にも重要というのが史跡指定を受けるにあたっての理由です。この史跡指定は2012年ですが、実は部分的に1957年に「松花堂およびその跡」という名称で史跡指定を受けていました。2012年の史跡指定の際には史跡の性質が異なるということで、重複での史跡指定となっています。これも珍しい事例です。

写真はこの松花堂の跡です。お寺と神社が一体になっていたことは前述のとおりですが、このお寺の松花堂昭乗というお坊さんの草庵の遺構が保存されてます。松花堂昭乗は茶人しても知られていて、この人が造った茶室がまわりの庭園とともに明治まで残されていました。明治になって建物は移築されましたが、庭園の遺構はよく残っています。松花堂昭乗の作の露地庭園として貴重なものです。ちなみに「露地庭園」というのは茶室まわりの庭園のことで、単に「露地」といったりもします。移築した建物は市内の「松花堂庭園・美術館」で保存されているので、こちらもあわせて見学していって下さい。

最後に

新しく社殿が国宝指定を受けた石清水八幡宮ですが、興味をもっていただけたら幸いです。国宝新指定ということでつい神社建築に目を向けてしまいますが、ここで紹介した石造物や庭園遺構なども貴重な文化財なので、忘れずに見ていって下さい。本殿の昇殿などは期間が限られているので、下memo欄のリンクなどであらかじめ調べてからの訪問をオススメします。

掲載内容は執筆時点のものです。 2014/03/21 訪問

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