“私のハムは生きています”胃袋の伝道師を辿る「函館カール・レイモン元町店」

“私のハムは生きています”胃袋の伝道師を辿る「函館カール・レイモン元町店」

更新日:2016/02/29 18:14

浅井 みら野のプロフィール写真 浅井 みら野 総合旅行業務取扱管理者、全国通訳案内士(英語)、世界遺産検定2級、JSBA スノーボード バッジテスト 1級
ソーセージが日常的でなかった大正時代。一人のドイツ人食肉加工マイスター(職人)が遠く異国の地、函館でお店を開きました。彼の名前はカール・レイモン氏。60余年にわたり、函館でハム・ソーセージ作りに情熱を注いだ方です。彼が残したものは技術だけでなく、哲学や理念まで。自身を「胃袋の伝道師」と語った彼の魅力(もちろん、本業のソーセージも!)を存分に堪能できる「函館カール・レイモン元町店」をご紹介します。

ドイツの伝統的建築スタイルでお客様をお出迎え

ドイツの伝統的建築スタイルでお客様をお出迎え

写真:浅井 みら野

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函館山に近い、元町(もとまち)界隈。教会や洋館が多く、日本にいながら異国情緒が感じられるエリアです。カール・レイモン氏が住んでいた場所でもあります。彼の旧工場跡地に立てられたのが「函館カール・レイモン元町店」。ドイツの伝統的な木組みの家がとても特徴的ですね。

そもそもカール・レイモン氏はどのような方だったのでしょうか?レイモン氏は、1894年に代々続く食肉加工技師の子として生まれました。8歳の頃より仕事を覚え、ヨーロッパ中の食肉加工技術を学び歩きます。転機が起きたのは1919年。世界最大の食肉加工会社があったアメリカへ派遣され、帰国の際に立ち寄ったのが日本でした。そこで運命の出会いともいえるコウ夫人と知り合い、結婚。紆余曲折を経ながらも、函館でハム・ソーセージの製造を始めていくのです。

丁寧に作られたハム・ソーセージ

丁寧に作られたハム・ソーセージ

写真:浅井 みら野

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温故知新。レイモン氏のハム・ソーセージ製造を見ていくと、この言葉が浮かびます。彼は昔からの製造技術や伝統を大切にし、素材の良さを引き出そうと研究に研究を重ねました。
豚肉にも気を配り、見た目や弾力など様々な評価基準をクリアしたものだけが材料として使われています。その強いこだわりゆえ「私のハムは生きています」と自負したほど。

陽気なおじさんたちが踊る店内

陽気なおじさんたちが踊る店内

写真:浅井 みら野

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店内には、棚ぎっしりにハム・ソーセージが。大きさや色も様々な種類があり、思わず全部試してみたくなりますね。1番人気は豚肉本来の美味しさを楽しめる「あらびきソーセージ」。燻煙を繰り返し仕上げたジューシーな「ベーコン」も、ソーセージやハムに負けない人気商品です。

その場で食べられる美味しいソーセージ

その場で食べられる美味しいソーセージ

写真:浅井 みら野

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「函館カール・レイモン元町店」には店内にイートインスペースがあります。自慢のソーセージを使ったホットドッグなどが食べられますよ。種類もレモン風味やピリ辛などあり、どれにしようか迷ってしまうほど。そんな方には数種類のソーセージを食べ比べできる「焼ソーセージセット」がお勧めです。

他にもお勧めなのが元町限定「チューリンガータイプ」。これは生ソーセージといい、加熱処理がされていない、元町店でしか食べられないソーセージです。付け合わせは、「ザワークラウト」というドイツで食べられるキャベツのお漬物。口直しでさっぱりしてくれます。ソーセージと相性抜群のビールも頼めますので、美味しいドイツ料理を楽しんでみてはいかがですか。

食後は2階の歴史展示館へ

食後は2階の歴史展示館へ

写真:浅井 みら野

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「函館カール・レイモン元町店」は1階が店舗で2階はカール・レイモン歴史展示館となっています。こちらではレイモン氏の生い立ちや初期の缶詰、パンフレットなどが展示されています。どなたでも自由に見学することができます。

特に興味深いのはレイモン氏が語った語録。食べ物に関することから生き方や世界平和まで。なぜ彼が「胃袋の宣教師」と言われているのかも分かりますよ。気になる方は是非確かめに行ってみてくださいね。

欧州旗の生みの親

最後にレイモン氏のストーリーをもう1つ。最後まで函館から離れなかったレイモン氏ですが、祖国ヨーロッパの事も気にかけていました。その様子が分かるのが、ヨーロッパのシンボルである欧州旗。青地に12個の黄金の星が円環状に配置されているものです。旗のデザインを決める際、レイモン氏は青地に大きな黄金の星を1つという案を提言していました。当時は注目されなかったものの、その後欧州評議会よりレイモン氏の案を採用し旗をつくるという手紙が届いたのです。現デザインとは多少異なりますが、原案を出した方に変わりはありません。

ソーセージ・ハム職人というカテゴリーに留めておくだけでは惜しいカール・レイモン氏。その彼が情熱を注いだ味、生き方に触れてみるのはいかがでしょうか。

掲載内容は執筆時点のものです。 2016/02/06 訪問

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