演劇博物館の所在地は、早稲田大学の構内。早稲田キャンパスの正門から真っ直ぐ進み、大隈重信像の手前で右に曲がると、鉄筋コンクリート造の瀟洒な洋館が、通路正面に見えてきます。
建物の意匠は、坪内逍遙の発案によるもので、エリザベス朝時代(16世紀)のイギリスの劇場「フォーチュン座」を模したもの。早稲田大学出身の建築家・今井兼次らによって設計された地上3階、地下1階の建物内部は、西洋演劇の歴史、日本の伝統芸能(猿楽・田楽・能・歌舞伎・人形浄瑠璃)、近代日本の演劇、映画やテレビに関するものなど、100万点にも及ぶ膨大なコレクションを随時公開している複数の展示室と「逍遙記念室」がある他、図書閲覧室もあり、全て無料で見学できます。
演劇博物館正面左側に設置されている坪内逍遙の胸像は、彫刻家・長谷川栄の作品で、講義をする逍遙の姿を表しています。初代逍遙像は、五代目中村歌右衛門らが中心となって、昭和10年(1935)に歌舞伎座内に建立されましたが、戦時中空襲によって焼失。戦後、残っていた石膏型で再建されたのが現在のブロンズ像で、台座には、逍遙先生を偲ぶ會津八一の歌が刻まれています。
ところで、この像の右の手のひらにご注目ください。ここだけ色が違いますよね。これは、「逍遙先生の胸像と握手をすると、早稲田大学に合格する」という噂があるからで、こうした噂から、先生と握手するためにやって来る受験生が後を絶たないのだそうです。
演劇博物館の最大の特徴は、建物自体が劇場資料になっていること。外部は実際にシェイクスピア劇が上演できる構造になっていて、建物正面に舞台を設置。2階の廊下が上舞台、図書閲覧室は楽屋、建物両翼は桟敷席、建物前の広場は一般席となる仕組みになっています。また、舞台上にはラテン語で“Totus Mundus Agit Histrionem”という言葉が掲げられています。これはシェイクスピア時代のグローブ座という劇場の看板に記されていた名句で、「全世界は劇場なり」という意味を表しています。
館内は、撮影できる場所が限られていますが、2階にある逍遙記念室は、数少ない撮影可能なエリア。こちらは、貴賓室として作られた部屋で、逍遙が来館した際にも使われていました。現在は、彼の愛蔵品などが公開されていますが、エリザベス朝時代の意匠を取り入れた室内は気品に満ちており、天井には逍遙の干支にちなんだ羊の装飾が施されています。
また、額に収められている逍遙の書「乾坤百戯場(けんこんひゃくぎじょう)」は、博物館正面に記されているラテン語“Totus Mundus Agit Histrionem(全世界は劇場なり)”と意味は同じとのこと。実際に訪問したときに、この2つのキーワードを確認してみるのも面白いでしょう。
演劇博物館で是非体験していただきたいのが、3階常設展示室(中世)の片隅に設けられている能面体験コーナー。こちらには、能楽に用いられる小面(こおもて)の能面があり、自由に装着することができ、写真撮影も可能です。また、足元には能舞台の床がコンパクトに再現されており、上がって能面をつけた姿を鏡で確認することもできます。
そこで、実際に能面をつけて驚かされるのが、その視界の狭さ!直径5o程度しか空いていない瞳の穴から左右を見ることは、まず不可能。こちらのコーナーでは、能面をつけて演じる能楽師のすごさを実感させられること間違いなしです。
演劇博物館では、常設展の他、企画展やイベントも行われていますので、スケジュールを確認して伺ってみるとよいでしょう。見学にあたっての注意点としては、写真撮影が可能な場所(館内は1階廊下、逍遙記念室、能面体験コーナーのみ)が限られていることや、入試期間中に、長期休館があることなどです。
早稲田キャンパスの中には、他にも「會津八一記念博物館」や「大隈記念室」といった無料で見学できる施設が複数あります。大学構内といっても、これらは全て一般公開されていますので、気兼ねすることなく入れます。新宿や早稲田を観光する際は、是非立ち寄ってみてください。
(開館日等、詳細については、関連MEMOのホームページからご確認ください)
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