静岡県・三島駅発、美しい湧水の街で多彩な「水」に出合う旅

静岡県・三島駅発、美しい湧水の街で多彩な「水」に出合う旅

更新日:2016/02/26 16:29

鷹野 圭のプロフィール写真 鷹野 圭 首都圏自然ライター
静岡県三島市とその近隣エリアは、全国的な知名度を誇る名水の街。
街中の水路には澄んだ水が涼しげに流れ、楽寿園やミシマバイガモの里などの水の名所が随所に見られます。特に、日本最後の清流とも評される柿田川湧水群は必見。公園内に点在する滾々と湧いてくる湧水は、これほどの透明度の高い水が関東近隣にあったのかと驚かされるほど。美しい水は緑や生きものを育み、自然散策に格好の街となっています。

―「流」を見る― 抜群の透明度! 市内のせせらぎ巡りへ

―「流」を見る― 抜群の透明度! 市内のせせらぎ巡りへ

写真:鷹野 圭

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JR三島駅南口を出ると、すぐ目の前に豊かな池沼を有する日本庭園 楽寿園があります。この楽寿園からは「源兵衛川」と「宮さんの川」という二つの川が流れだしており、いずれも川沿いはプロムナード(散歩道)として整備されています。三島市では市内随所にちりばめられた水のアメニティに着目し、川に沿う形で回遊ルートを設けつつ、それぞれを繋げて観光客が徒歩で移動しながら市内の多様な“流れ”の姿を楽しめるようにしています。駅前の観光案内所も然り、看板等でも多様な散歩ルートを案内しています。朝から歩き始めて一気に全ルートを踏破してしまうもよし(ただし相当の距離を歩きますので、自転車があった方がいいかも?)。観光案内所で情報を集めながら、好きなルートを選んで無理のない散策を楽しむのもいいでしょう。

写真は、柿田川遊水池から流れる柿田川。源流から1キロ少々で別の川に合流して途切れてしまう短い川ですが、名水百選に選ばれ、市内の川でも抜群の透明度を誇ります。ご覧の通り、高い架橋の上から見下ろしても、水流になびく水草や水底が見えてしまうほど。橋の近くから河岸まで下りることもできますので、ぜひ間近で清流の美しさをご堪能くださいませ。

―「泉」を見る― 滾々と湧きあがる数多の柿田川湧水

―「泉」を見る― 滾々と湧きあがる数多の柿田川湧水

写真:鷹野 圭

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三島市〜清水町でもとりわけ水が美しいといわれる柿田川湧水群は、三島駅南口からバス乗車約15分で行くことができる柿田川公園という自然公園内にあり、このエリアではトップクラスの名所として知られています。三島を尋ねたら絶対にここは外してはいけません! 写真を見てもわかる通り、砂の底から絶えず水の湧く様が見られ、その透明度の高さゆえに水底がライトブルーに見えるほど。無論これ1つではなく、10を超すほどの大小さまざまな湧水が公園内に散りばめられています。決して極端に広い公園ではないので、せっかくですから全部まわってみましょう。特に、第2展望台から見下ろせる“わき間”は必見。2メートル以上はあるかと思われる深い深い水底は神秘的なディープブルーに映り、暫し魅了されてしまうことでしょう。

この柿田川湧水群は、元々は富士山系の伏流水。約8500年前の富士山の大噴火によってこの地に大量の溶岩が流れ込みましたが、この溶岩には多孔質で水を通しやすいという特徴があるのです。そのため、毎年のように富士山周辺に降る雨や雪が地中に浸透した後、地下水として流れ込んできてこの場所からじわじわと湧き上がっているのだとか。1日に湧き上がる水の量は、約100万トンともいわれています。柿田川公園内ではこの湧水をそのまま飲めるほか、湧水を利用したスイーツなども食べられます。

ちなみにこの柿田川湧水群(柿田川公園)、実はあの国道一号線に隣接しています。おかげさまで自動車でいらっしゃった方も入りやすいスポットとなっていますが、まず日々大量の車が行き交う大通りの目の前に日本有数の“水の楽園”があることに驚かされますね。

―「生」を見る― 清流に息づく生きものたちを探そう

―「生」を見る― 清流に息づく生きものたちを探そう

写真:鷹野 圭

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澄んだ水が純度の高い自然を形作る三島〜清水町。当然、そこには数多くの生きものが暮らしています。写真は、柿田川湧水に佇むカワセミ。魚や小動物を求めてやってきたようです。一時期、街中からは姿を消し“幻の鳥”とすらいわれたこともあるカワセミですが、長らく美しい水環境が保たれてきた柿田川ではずーっとお馴染みの存在。柿田川公園では、水辺に迫り出した木道を歩く時は周囲によく気を配りましょう。「チー」という甲高い鳴き声が聞こえたら近くにいる証拠。水面から突き出した杭や水辺の木の枝など、足場になりそうなところを重点的に探せば結構簡単に見つかりますよ。

そのほか、街中の水路や親水公園にはカモ類の姿が。よくいるカルガモはもちろん、冬場には開けた水辺を中心にマガモやコガモ、ハシビロガモなどがよく集まります。アオサギやコサギなどのサギ類も常連。上空にはチョウゲンボウなどの猛禽類が現れることも多々あります。また、都心の街中でもよく現れるハクセキレイという白黒の小鳥はここでもよく見られますが、どちらかというと近似種であるセグロセキレイ(黒い部分がより多い)の方が多く見られる傾向にあります。本来、セグロセキレイは川の中〜上流域に暮らす鳥で、どちらかというと河口に近い三島周辺に多いのはちょっと不思議な話です。やっぱり、上流さながらに水の純度が高いから居心地がいいのかもしれませんね。

夏場になれば一転、昆虫の王国に。柿田川公園ではカワセミに並ぶ清流の宝石 カワトンボの仲間たちが姿を現します。

広い池をめぐり水・鳥・花と親しむ ―門池公園(沼津市)―

広い池をめぐり水・鳥・花と親しむ ―門池公園(沼津市)―

写真:鷹野 圭

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遠くに富士山を望む門池公園は、この界隈では特に開けた水場を持つ親水公園。冬場にはコガモやマガモ、キンクロハジロの群れなど、たくさんのカモ類が現れます。カワセミも期待できますので、バードウォッチングなどには適した環境。カモ類を狙って猛禽類が現れる可能性も高いので、上空にも気を配りましょう。池の周囲は約1.3キロと、大き過ぎず小さ過ぎず、徒歩で一周するにはちょうど良い距離。歩きながら鳥を探しても1時間はかからないはずです。

一方でこの公園は、静岡県でも有数のサクラの名所として有名! 大きな池に沿うようにして、ソメイヨシノを中心とした約100本のサクラが植えられています。開けた芝生広場もありますので、富士山ビューとお花見をゆったり同時に楽しむことも可能です。3月下旬〜4月上旬のピーク期にはライトアップも実施されており、夜桜見物もまた魅力的! 池の南側にはシバザクラも植えられており、これもまた春の見所となっています。

さすが水の都。街中に滝壺あり! ―鮎壺の滝(沼津市)―

さすが水の都。街中に滝壺あり! ―鮎壺の滝(沼津市)―

写真:鷹野 圭

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三島駅から西へと進み、沼津市に入った辺りで見えてくるのはなんと本格的な滝! 周りがほとんど住宅街である中、ドオドオと激しい音を立てて水が落ちる姿は圧巻です。落差は約8m、横幅は90mともいわれ、いわゆる自然地の滝と比較しても遜色ありません。やや下流にはつり橋がかかっているので、真正面から眺めることが可能。でも少々距離がありますので、せっかくなら岩場まで下りて滝に近付いてみましょう。実際、この写真は滝の目の前まで徒歩で近づいて撮影したものです。足場が悪いので運動靴など必須ですが、飛沫がかかりそうなほど間近で見る姿は迫力満点です。

実はこの滝もまた柿田川湧水群と同じく、富士山に由来するもの。約1万年前の噴火でこの土地に流れ込んだ溶岩が冷え固まり、写真にある巨大な岩盤を形作ったそうです。ここの岩盤は富士山の溶岩の特徴を観察できることから、学術的にも大きな価値のある自然遺産と見做され、静岡県指定の天然記念物とされています。

水の名所はまだまだたくさん! たっぷり時間をかけて散策を

地中から静かに湧き上がる、日本屈指の透明度を誇る柿田川湧水群。遠方に富士山ほか山々を見据え、春には花も美しい門池公園。激しい水しぶきをあげて流れ落ち続ける鮎壺の滝……様々な「水」の姿を楽しめる三島駅周辺エリアですが、ここで紹介できているのはほんの一部分に過ぎません。じっくりと廻ればまだまだ色々な水の名所が見られるはず。とはいっても一日で徒歩で回るのはあまりにも大変ですので、ぜひ最低でも1泊2日くらいはかけて、三島駅を拠点に方々に足を運んでみてくださいね。

掲載内容は執筆時点のものです。 2016/01/04 訪問

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