風薫る奈良の春!桜井・宇陀エリアの桜を巡る日本風景街道ドライブ

風薫る奈良の春!桜井・宇陀エリアの桜を巡る日本風景街道ドライブ

更新日:2016/02/01 16:47

和山 光一のプロフィール写真 和山 光一 ブロガー
近畿の日本風景街道である「初瀬街道(国道165号)」は、壬申の乱(672)に大海人皇子が大友皇子を倒すために名張へと向かった道であり、斎王もこの道を通りました。曽爾高原を通る「伊勢本街道(国道369・368)」は大和と伊勢を結ぶ最短ルートでした。この二本の街道が交差する桜井・宇陀エリア(奈良県)には、歴史に彩られた桜や社寺が多く点在しています。風薫る春爛漫の桜を巡るドライブに出かけてみませんか?

旅の始まりは、湯気によもぎが香る参道から、桜色の境内へ「豊山 長谷寺」

旅の始まりは、湯気によもぎが香る参道から、桜色の境内へ「豊山 長谷寺」

写真:和山 光一

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古来より、都から東国への入口とされた、初瀬(桜井)が旅の始まりです。西国霊場第八番札所・長谷寺は、『隠国の初瀬』と歌枕として万葉集にも歌われ、「枕草子」や「源氏物語」にも登場し、平安貴族の信仰を集めた古刹です。参道を歩けば門前の店先から名物・草餅の湯気が立ち上り、爽やかなよもぎの香りが鼻孔をくすぐります。

四季を通じ「花の御寺」として多くの方が訪れる長谷寺は、特に「牡丹の花の長谷寺」として有名ですが、桜の時期も素晴らしいのです。ソメイヨシノをはじめとする境内に見られる一目3000本と言われるここの桜は、境内に建つ重文の仁王門や、緩やかに続く399段の回廊形式の登廊、本尊・十一面観音菩薩立像を安置する舞台造りの本堂や、朱塗りの塔身に金色の相輪が輝く五重塔に映え、薄紅色に包み匂うばかりです。眺める位置でそれぞれに趣を異にして咲く桜を、存分に満喫できるまさに「花の御寺」なのです。

仁王門を出て、駐車場前の初瀬川に架かる連歌橋を渡り、少し階段を上ると、桜花に覆われた長谷寺を違う角度で堪能できます。淡いピンクの桜の海の中にまるで本堂が浮かんでいるように見えます。帰り道には草餅を忘れずに買いましょう。(見頃予想4月上旬)

雲も避けゆく 神が棲む その名も知らせる 長谷寺 奥の院「瀧蔵神社」

雲も避けゆく 神が棲む その名も知らせる 長谷寺 奥の院「瀧蔵神社」

写真:和山 光一

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長谷寺から県道38号線で北上し、初瀬ダムの前を通過して、だらだらと続く曲がりくねった急坂を上っていきます。鬱蒼とした山道を抜けると、そこには小集落ののどかな景色が広がります。

「瀧蔵神社」は、長谷寺の奥の院と称し、古来より信仰深き神社として、長谷寺へ御詣りしても瀧蔵神社へ参詣しなければ御利益は半減すると伝えられています。標高430Mの山上に鎮座する神社の参道の入口には休憩所があり、近所の方が桜の見物客にお茶を振舞ってくれます。以前はこの場所にお堂があったといいます。

一段高い石垣の上には、「権現桜」と呼ばれる一本桜。太い主幹が石垣に覆いかぶさるように、水平にせり出しながら佇む枝垂れ桜です。樹齢400年以上、樹高4.2M、幹回り3.0Mのこの桜は、瀧蔵権現が村の古老の夢枕に立ち、桜を植えるよう告げたという伝承からその名が付いたとのことです。(見頃予想4月上旬)

枝垂れ桜の向こうに、かすかに笑みをたたえた仏様「大野寺」

枝垂れ桜の向こうに、かすかに笑みをたたえた仏様「大野寺」

写真:和山 光一

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初瀬街道(国道165号)を名張方面に走らせ、室生ダムを過ぎると室生の里。宇陀川の渓流沿いにひっそりとあるのが、真言宗室生寺派の「大野寺」です。役行者が開き、弘法大師が天長元年(824)に室生寺を開創の時、参詣四門の西の大門として堂を建立したと伝わります。

寺のそばを流れる宇陀川の対岸の岩に刻まれた、高さ約13.8Mの弥勒磨崖仏と共に、境内に2本植えられている樹齢300年の紅枝垂れ桜の美しさで有名です。大野寺境内の遥拝所に立つと、承元元年(1207)に後鳥羽上皇の勅命により笠置寺本尊の弥勒磨崖仏を模して彫られたという、弥勒菩薩立像を真正面から拝することができます。

山門を入ったところと本堂前に佇む2本の「小糸桜」は、淡いピンク色の小さな花がこぼれんばかりに咲き誇り、枝が地面に届くほど垂れ下がる大樹。山門からは磨崖仏と桜をともに鑑賞できます。日中はちょっと線刻がはっきり見えないのが残念ですが、夕方は線刻がはっきりとし、特に麗しい弥勒仏を拝めます。(見頃予想4月上旬〜中旬)

春の棚田に映る美しき日本のさくら名所100選「三多気の山桜」

春の棚田に映る美しき日本のさくら名所100選「三多気の山桜」

写真:和山 光一

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名張からは国道368号に右折して、伊勢本街道(国道369号)に向かいます。比奈知ダムを過ぎ、道の駅「伊勢本街道 御杖」の先に、三重県との県境「伊勢と大和の境の桜 枝は大和に根は伊勢に」と、古い馬子唄に唄われる「三多気の桜」があります。

伊勢本街道から真福院までの参道約1.5KMにかけて続く淡紅色のトンネル「三多気の桜」は「日本のさくら名所100選」「全国ふれあいの並木三十選」にも選ばれており、山桜ならではのしみじみとした美しさがあります。雲出川と名張川に分水する室生火山郡随一の霊峰大洞山の美しい山を背景に咲く、山桜の古木並木です。桜の植樹は平安時代の昌泰年間(899年頃)、真福院の開祖でもある理源大師が始まりとされ、その後中世にこの一帯を治めた北畠氏の保護を受けたことから千年の歴史があります。

たおやかな山容を見せる大洞山を眺めながら桜並木をゆったりと歩くと、古木の側にひっそりと佇む茅葺屋根の家、山桜と透き通った空を映し出す棚田の水面、「三多気の蔵王堂」と呼ばれる古刹・真福院など桜と競演する様々な風景に出会えます。(見頃予想4月上旬〜中旬)

旅の終わりは、樹齢約300年・勇将伝説にちなんだ一本桜「又兵衛桜」

旅の終わりは、樹齢約300年・勇将伝説にちなんだ一本桜「又兵衛桜」

写真:和山 光一

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伊勢本街道(国道369号)で桜井方面に戻ります。大宇陀町の西部にあるのが、本郷の瀧桜、通称「又兵衛桜」です。ここはNHK大河ドラマ「軍師 官兵衛」の黒田官兵衛に仕え、黒田二十四将にも数えられる戦国武将・後藤又兵衛基次が、大阪夏の陣の道明寺の戦いに敗れたあと、ここに落ちのびて僧侶となり一生を終えたという伝説が残っている所です。後藤家の屋敷跡にこの瀧桜があることから、このあたりでは「又兵衛桜」と呼ばれ親しまれています。

NHK大河ドラマ「葵徳川三代」のオープニングに登場して注目されるようになった、樹齢300年、幹回り約3M、高さがおよそ13Mの堂々とした一本桜です。石垣から飛び出したように垂れる枝は優美で力強く、その周りには約50本の深紅の桃の花と黄色の菜の花を従えています。周囲の山の緑をバックに、桜と桃、濃淡の異なるピンク色の二種の共演が、華麗な春爛漫の景色を描いています。(見頃予想4月上旬)

国道165号と国道368・369号に囲まれた「室生赤目青山国定公園」

近畿の日本風景街道である、奈良県桜井市から三重県伊勢市の伊勢神宮を結ぶ伊勢街道は、都のあった「大和」と聖地「伊勢」を結ぶ道。古代から多くの人がこの道を利用しました。現在近鉄大阪線と並行して走る「初瀬街道(国道165号)」は、榛原、名張、伊賀神戸、青山高原、伊勢中川と伊勢を目指す道です。

また、曽爾高原を通る「伊勢本街道(国道368・369号)」は大和と伊勢を結ぶ最短ルートです。この道は神宮を伊勢に祀った倭姫命が大和から伊勢へ向かった際に通った道といわれており、北緯34度31分を貫くいわゆる「太陽の道」とも関連付けられることから“神意に叶う道”として西からの参宮者が多く利用した道でした。

二つの街道に挟まれた地域は「室生赤目青山国定公園」が広がっていて、公園内には、赤目四十八滝や香落渓・曽爾高原、青山高原と豊かな自然資産が多くありますのでドライブコースに組み入れてみてはどうでしょう。またコース上のダム管理所でダムカードを記念に貰うのも面白いです。

また大野寺から室生川添いを10分ほど車で遡ると、周囲を山に囲まれた室生の里を見下ろす山腹に、女人高野「室生寺」があります。門前に架かる朱塗りの太鼓橋から正面に望む満開の桜は絵になる風景ですが、石楠花に代表される花の寺として有名なのです。是非シャクナゲに時期(例年4月下旬)に訪れてみて下さい。

桜井・宇陀エリアの花と社寺のよくばり探索に是非おでかけください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2011/04/24−2014/04/06 訪問

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