日米境界線とその番人、そして「あぶ刑事」。横浜瑞穂埠頭

日米境界線とその番人、そして「あぶ刑事」。横浜瑞穂埠頭

更新日:2016/02/03 13:42

横浜港には10の埠頭がありますが、中でも瑞穂埠頭は他の埠頭とはちょっと趣を異にします。
横浜駅の隣の東神奈川駅で下車後、海側に向かって歩くこと10分、横浜の顔のみなとみらいやベイブリッジと対岸の瑞穂埠頭が現れます。
ここには古い倉庫や米軍施設、そして老舗のバーなど古き横浜の街並みが存在します。

この埠頭を駆け抜けた二人

この埠頭を駆け抜けた二人
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この街並みを背景としたテレビドラマが1986年に放映が始まった「あぶない刑事」。2016年1月30日に公開された映画でファイナルシリーズを迎えました。
横浜市内に「あぶ刑事」のロケ地は多数ありますが、30年前のテレビドラマ放映時から光景が変わっていない場所はほんの僅かです。
この瑞穂埠頭は、その僅かなうちのひとつです。

ここに立つとタカとユージが駆け抜けて、そして愛していた、昔から変わらない横浜の港町の姿を今でも見ることが出来るのです。
耳をすますと、二人が乗った覆面パトカー「日産レパード」のサイレンが聞こえてきそうです。

歴史ある倉庫群

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運河を超える橋を渡って東海道貨物線の踏切を過ぎると、古めかしいモルタルの三角屋根の倉庫が3軒並んでいます。
堂々とした造りの倉庫は昔ながらの蔵の様ですが、屋根や商品搬入口などは洋風な和洋折衷のモダンな造りになっています。
搬入口の上には大きな三井の紋が刻まれています。

ここは三井倉庫の保税倉庫で、1952年(昭和27年)に建設されて今も現役です。穀物などを保管しているため、夏場は穀物の強い匂いが倉庫周辺に漂います。

倉庫脇に横浜港に繋がる運河が流れており、運河沿いに鉄筋コンクリート製のクレーンが付いた4階建てのスクエアな倉庫があります。
この倉庫は1953年(昭和28年)に造られました。
横浜港に入った貨物船が瑞穂埠頭の運河に入り、この倉庫で荷揚げがされていたのです。

横浜港の開港後から昭和時代にかけて、この一帯は海運と鉄道貨物の中継所として重要な拠点でしたが、現在の国際貨物の拠点は本牧埠頭に集約され、瑞穂埠頭での貿易としての役割は縮小されています。

国境に架ける橋とアメリカ

国境に架ける橋とアメリカ
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海に向かって更に足を進めてみると、青い橋が架かっています。
橋の先には、アメリカ国旗がはためいているのが見えます。
この橋より先は米軍施設なのです。

目の前の軍事施設はノースピアと呼ばれており、アメリカ陸軍の重要な港湾施設です。
ここでは陸揚げされた軍の物資や郵便物が相模原補給廠や、キャンプ座間、横田基地など関東の米軍基地や拠点に送られます。
物流拠点以外に、軍用艦艇のメインテナンス施設としての役割があります。
ノースピアに掛かる橋は2009年に日本に返還されましたが、現在も関係者以外は橋の先に進むことが禁じられています。

以前はこの施設以外に、軍への乳製品やアイスクリームを供給する「神奈川ミルクプラント」もありましたが、2000年に横浜市に返還されました。
その後解体されており、今はそのプラントの姿を見ることができません。
昭和時代の横浜は、本牧や根岸など市内の至る所に米軍施設があり、その当時は目新しくエキセントリックなアメリカ文化の匂いがあちこちから漂っていたのでした。

橋のたもとにある老舗のバー

橋のたもとにある老舗のバー
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ノースピアの橋のたもとに2つのバーが佇んでいます。
片方は「Star Dust」、もう一つは「Pole Star」です。
同じ方が経営しており、「Pole Star」はパーティなどイベントで使用されています。

1954年(昭和29年)にオープンして以来、62年の歴史があります。
当時、横浜には駐在している米軍兵向けのバーがあちこちにありました。
「Star dust」もそのひとつでテーブルチャージなし、お酒1杯ごとに支払うキャッシュオンデリバリーのスタイルという昔からのスタイルを今も貫いています。

店内はアメリカンスタイルの広いカウンター席、重厚な光が輝くウッドフロア、100円で3曲選べるオールディーズやスタンダードジャズが中心のジュークボックスがあり、海に面した店外にはヨットハーバーがあります。
カクテルの種類は100種ほど扱っているので、お酒がそんなに強くない方でも雰囲気に合った柔らかいカクテルを作ってくれます。

ロケの隠れた名所

ロケの隠れた名所
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対岸にみなとみらいの景色が拡がるヨットハーバー、見覚えがある方がいらっしゃると思います。特に「あぶ刑事」ファンの方なら、この「Star Dust」は聖地であるはずです。

テレビドラマや映画で、タカとユージが犯人と格闘するシーンのロケ地なのです。
「あぶ刑事」以外にも様々なドラマやPVの撮影で使用されており、サザンオールスターズはここをモチーフにした「思い出のスターダスト」という歌を発表しています。

地元や近隣の客のみならず、遠くから訪ねにやって来る人も多いのです。年中無休で夕方5時から翌2時までの営業です。

おわりに

1989年の横浜博覧会以降、横浜はみなとみらいのようなスタイリッシュでスマートな街が主流になりました。一方で瑞穂埠頭の様に昔ながらの港湾の街・横浜の空気が色濃く残っているところもまだあります。

対岸のみなとみらいの灯を見ながら、スターダストでグラスを傾けてみると、ハードボイルドな雰囲気が味わえます。
次に横浜にお出かけされた際には、古き昭和の風が漂う瑞穂埠頭で想いを馳せてみては如何でしょうか。

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掲載内容は執筆時点のものです。 2015/11/03 訪問

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