人気女流作家の終の住処を公開!新宿区「林芙美子記念館」

人気女流作家の終の住処を公開!新宿区「林芙美子記念館」

更新日:2016/01/25 16:47

新宿区にある林芙美子記念館は、『放浪記』や『浮雲』などの代表作で知られる人気女流作家・林芙美子が、昭和16年(1941)8月から、彼女が亡くなる昭和26年(1951)6月28日まで暮らした終の住処。芙美子は新居建設の際、自ら建築について学び、参考にするために京都の民家を訪ねるなど、格別の想いで新居を建てました。そんな芙美子のこだわりが随所に詰まった住まいを公開している林芙美子記念館をご紹介します。

アプローチから雰囲気満点!美しい坂のある景色を愛でながら、林芙美子記念館に入場

アプローチから雰囲気満点!美しい坂のある景色を愛でながら、林芙美子記念館に入場
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林芙美子記念館がある新宿区中井は妙正寺川の北方に位置する坂の街。街の東西に崖線が伸び、「一の坂」「二の坂」といった数字を冠した坂道が八つ、「八の坂」まであります。

記念館のある場所は、その中のほぼ中間地点となる「四の坂」に沿った斜面地。四の坂は、八つの坂の中、唯一の階段坂で、記念館の塀越しに見える孟宗竹や民家の緑に包まれた坂の景色は、都会の喧騒を忘れさせる落ち着いた雰囲気を醸し出しています。

周囲の静かな佇まいに触れたところで、さっそく中に入ってみましょう。ちなみに、林芙美子記念館の入口は、写真の玄関部分ではなく、階段坂が始まる左手、案内柱が立っているところ。入口をくぐると正面に管理棟があり、そちらで入館料を払います。

「生活棟」と「アトリエ棟」、2棟の木造住宅は、暮らしやすさ第一で考えられた芙美子こだわりの住まい

「生活棟」と「アトリエ棟」、2棟の木造住宅は、暮らしやすさ第一で考えられた芙美子こだわりの住まい
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林芙美子記念館の大きな特徴は、敷地内に数奇屋造りの繊細さが感じられる京風の特色と大らかさが感じられる民家風の特色、その両方を兼ね備えた純和風の木造家屋が2棟建っていること。2棟あるのは、芙美子が昭和14年(1939)12月に土地を購入し、新居建設に取りかかる際、建坪制限があったからで、林芙美子名義の生活棟と画家であった夫・手塚緑敏名義のアトリエ棟がそれぞれ別に建てられ、後でつなぎ合わされました。

部屋は、生活棟には、茶の間、客間、小間の他、台所や浴室、使用人室があり、アトリエ棟には、寝室、次の間、書斎、書庫の他、夫・緑敏のために作られたアトリエがありましたが、アトリエは現在、芙美子関連の資料を公開する展示室に。見学は展示室以外、普段は庭から各部屋を眺めるスタイルになっています。

見学にあたってのポイントは、芙美子が新居の建設にあたり、客間よりも茶の間など、家族が暮らす空間に工夫を凝らし、お金をかけたということ。家族の安らぎ第一で考えられた家のつくりは、部屋ごとに特色が出ているので、様々な違いの発見も、林芙美子記念館の楽しみ方の一つです。

生活棟で一番豪華な部屋は「客間」ではなく、一家団欒の場として使われた「茶の間」だった!

生活棟で一番豪華な部屋は「客間」ではなく、一家団欒の場として使われた「茶の間」だった!
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掘りごたつ、釣り戸棚、二段押入れ、収納式神棚の他、多くの小引き出しが備えられた茶の間は、家族が集まる団欒の場。暮らしやすさ第一で家を建てた芙美子の想いが詰まった部屋であり、人気作家として多忙を極めた彼女のひとときの安らぎの場でもありました。

日当たりが良く、前に庭が開けた南側の茶の間に対し、同じ生活棟にある客間が日当たりの悪い北側にあるというのも、この建物の特色がよく表れた部分。ただし、芙美子は普段、原稿を取りに来た記者は、客間にあげましたが、ごく親しい記者は、茶の間に通したといわれています。

もとは書斎?立派な床の間がある「寝室」とインド更紗を貼った置押入れが目を引く「次の間」

もとは書斎?立派な床の間がある「寝室」とインド更紗を貼った置押入れが目を引く「次の間」
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続いてアトリエ棟に目を向けてみましょう。まず目を引くのは、南側、庭に面し立派な床の間が目立つ8畳の寝室と、その奥に続く6畳の次の間。実はこの2つの部屋、元々は芙美子の書斎として作られました。しかし、部屋が明る過ぎて執筆に集中できないといった理由から、夫・緑敏と息子・泰の寝室になりました。そして、泰が学校に通うようになると、親子3人、この寝室で朝食をとったといわれています。

寝室の隣にある次の間には、芙美子が大工に命じてインド更紗を貼って作らせた布団用の大きな置押入れがあります。さらにその隣には、書院窓のついた書庫があり、三間続きの部屋は、風の吹き抜けにこだわった芙美子の希望に沿ったつくりになっています。

名作は納戸で作られた!?

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最後は書斎を紹介します。アトリエ棟の真ん中にある書斎は、もとは納戸として作られた部屋。納戸ということで、洋服入れや物入れなどが作り付けられていますが、間近に庭が見える雪見障子があり、とても納戸だったとは思えない趣ある空間に仕上がっています。

数々の作品が生み出された書斎。芙美子は強度の近視でしたので、熱中すると眼鏡をはずし、顔を机につけるようにして、ここで執筆に没頭しました。そんな執筆の最中、時折筆を休めて眺めた庭の景色が、彼女の目にどのように映ったか?などと思い巡らして、部屋を見てみるのも面白いでしょう。

おわりに

林芙美子記念館いかがでしたでしょうか?
他にも、かつてのアトリエを改造した展示室をはじめ、台所や風呂場、石蔵ギャラリー、四季折々の草花が楽しめる庭など、見どころはまだまだあります。また、各種イベントや年3回の「建物内部特別公開」(申込制)も行われていますので、事前にスケジュールを確認して訪問するのもよいでしょう。アクセスも、都営地下鉄大江戸線・西武新宿線「中井駅」から徒歩7分と便利ですし、新宿からも行きやすいので、都庁観光などとあわせて巡ることも十分可能です。

ファンならずとも楽しめる「林芙美子記念館」、入館料も一般150円なので気軽に入れます。是非訪れてみてください!

(詳細については、関連MEMOのホームページからご確認ください)

この記事の関連MEMO

掲載内容は執筆時点のものです。 2015/12/26−2016/01/17 訪問

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