エルミタージュ美術館はかつてのロシア帝国の宮殿、冬宮(Зимний дворец ジムニー・ドヴォレツ)と皇帝の私的な美術ギャラリーであったエルミタージュを中心とした5つの建物からなっています。
ヨルダン階段は冬宮の正面玄関に続く大階段。美術館の入口すぐにあり、今日ではエルミタージュを訪れた人誰もが上る階段です。
ゲートを入ると、突然目の前に広がる豪華な空間。美術館への期待が一気に高まります。
階段は別名「大使の階段」ともよばれています。
ペテルブルグはロシアのヨーロッパへの窓。冬宮は外交の中心でもありました。
この階段は各国の大使を迎え入れ、ロシアの豊かさ、文化度の高さ、そして帝国の権威を印象づけるために作られたもの。周囲の壁は彫像や金色のレリーフで飾られています。
上を見上げれば、オリンポスの神々を描いた天井画が。階段を上がるにつれ、神々が住む至高の空間へと近づく気分にさせるというしかけが隠されているのだそう。
厳しい外交交渉に臨むとき、あるいは盛大な式典や宴に招かれた人びとはどんな気持ちでこの階段を上ったのでしょうか。
ちなみに「ヨルダン階段」の名は、キリストが洗礼を受けたとされるヨルダン川に由来しています。
ロシア宮廷では、冬宮の前を流れるネヴァ川をヨルダン川に見立てて洗礼式が行われました。皇帝一家が儀式におもむく際、この階段を使ったことからついた名前です。
小玉座の間は、ピョートル大帝の間ともいわれます。
ロシアの都をペテルブルグに移し、国の近代化を推し進めた皇帝ピョートルをたたえる広間です。
ただし、この部屋が作られたのは19世紀後半。ピョートル大帝の死後150年以上もたってからのことでした。
玉座の周りの壁は深紅のビロードが張り巡らされ、銀糸でロシア帝国の紋章「双頭の鷲」があらわされています。そして背もたれに同じ紋章が記された玉座は、なんと銀製だそう。
玉座の上にはピョートル大帝の肖像画が掲げられています。傍らに立つ女性は智恵の女神ミネルヴァ。「栄光」を意味する擬人像として描かれています。
ラファエロの回廊は大エルミタージュ(旧エルミタージュ)と呼ばれる建物の東側面に位置しています。
装飾画で埋め尽くされた空間は、いったいどこまで続くのかと思うほど長大で、まるで巨大な工芸品の中にいるようです。
ここに描かれた絵画はローマのヴァチカン宮殿にあるラファエロのフレスコ画を写したもの。1783年にエカテリーナ2世の命によって描かれました。
一つ一つの絵は植物や動物、神話の登場人物をモチーフにしていて、よく見るとどれも少しずつ違っています。
明るい色彩と軽快なデザインで満たされた回廊は、歩いているとここがロシアであることを忘れてしまいそう。エカテリーナ2世もこの廊下で異国的な雰囲気を楽しんだのでしょうか。
ラファエロの回廊は、エルミタージュ美術館の中でも屈指の名品として知られるラファエロの「聖家族」が展示されている部屋のすぐ隣です。近くに来たら、ぜひのぞいてみて下さい。
18世紀、ロシアはまさに女帝の時代でした。
ピョ−トル大帝の後を継いだその妻エカテリーナ1世、その娘エリザベータ、そして現在のエルミタージュ美術館のコレクションの基礎を作った女帝エカテリーナ2世。
プドゥアールとは彼女たちの私室で、親しい人をもてなす部屋、あるいは寝室を兼ねたプライベートな空間をいいます。
ロシアの女帝たちはこのプドゥアールをこよなく愛し、くつろいだ時間を過ごしました。
冬宮のプドゥアールはロココ様式に統一されています。
白い壁にはめ込まれた深紅の鏡板、周囲は黄金の曲線で優美に飾られています。柱には女性の半身像があらわされ、天井にも金箔の装飾、床はさまざまな色の木材を合わせた寄木細工です。
政務を終えて私人に返った彼女たちは、お気に入りのプドゥアールで親しい人とどんな会話を交わしたのでしょうか。
まさに女帝にふさわしい華麗な空間です。
豪華な宮殿の広間や客室はもちろんですが、エルミタージュ美術館でもう一つ、ぜひ見ていただきたいのが、ロシアの芸術と文化に関する展示室です。
冬宮の西側、プドゥアールを過ぎると小さく仕切られた空間が続きます。ここでは一つ一つの部屋がそれぞれテーマを持っていて、中は同じ様式のインテリアで統一されています。
写真はゴシック様式の部屋。
ほかにもアール・ヌーボー様式やアラビア風、古代ローマ風などさまざまなスタイルの部屋があります。
置かれている調度はもちろん一級品。高いセンスでまとめられた小部屋を順番に見てまわるうちに、まるで実物大のドールハウスにいるような気分になります。アンティーク雑貨やインテリアに興味のある方は楽しめること間違いなしです。
ちなみにほとんどの部屋に置き時計があるのですが、驚くべきはすべてが正確な時刻を示していること。
ロシア的な勤勉さを感じます。訪れた時はチェックしてみるのもおもしろいかも。
エルミタージュ美術館には、今回ご紹介した以外にもエカテリーナ2世のサロンで彼女の愛人ポチョムキン公が贈った孔雀時計のある「パビリオン」や絢爛豪華な「大教会の間」、孔雀石を使ったみごとなロシア・モザイクで飾られた「孔雀石の間」、壁一面が金箔で覆われた「黄金の客間」など見どころがいっぱい。
世界文化遺産「サンクトペテルブルグ歴史地区と関連建造物群」にも登録されているエルミタージュ美術館。絵画鑑賞だけでなく、ぜひ宮殿の雰囲気も楽しんで下さいね。
エルミタージュ美術館を個人で訪れるなら、チケットは待ち時間を節約できるネット予約がおすすめです。
1日券と2日券がありますが、館内はとても広いので、一日ですべてを見てまわるのはとても無理。スケジュールに余裕がある方は2日券がお得です。
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