気分は国賓?!日本人が建てた迎賓館「台北賓館」の訪問チャンスは月に1日だけ!

気分は国賓?!日本人が建てた迎賓館「台北賓館」の訪問チャンスは月に1日だけ!

更新日:2018/07/23 14:38

吉川 なおのプロフィール写真 吉川 なお 台湾在住ライター、元旅行会社勤務の旅行マニア
1895年から1945年まで日本統治下にあった台湾には、いまもその当時建てられた建物が数多く残されています。台湾を旅すると、各地でそれらを目にすることができ、懐かしさを感じる方も多いことでしょう。

台湾総督官邸として建てられた「台北賓館」もその一つで、迎賓館としても使用されていたため、その造りは豪華絢爛そのもの!普段は入れない場所ですが、月に1日だけ自由に参観できる日があるんです!

かつての「台湾総督官邸」

かつての「台湾総督官邸」

写真:吉川 なお

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「台北賓館」が位置するのは、台北駅の南側、中央官庁が集まる『台湾の霞ヶ関』と呼ばれるエリア。総統が執務を執る「総統府」の近くにあります。

「総統府」は日本統治時代は台湾総督府で、「台北賓館」は台湾総督官邸として建てられました。歴代総統19人のうち16人が居住した二階建ての壮麗な洋館は迎賓館としての役割も担い、日本からも多くの皇族を迎え入れました。1923年には当時皇太子だった昭和天皇もご宿泊され、バルコニーから手を振られました。

戦後、「台北賓館」と改称され、現在も台湾の迎賓館として、海外からの賓客をもてなす晩餐会や重要行事のパーティ会場、園遊会や文化活動の場などに使用されています。

洋館と和館と庭園から構成

洋館と和館と庭園から構成

写真:吉川 なお

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「台北賓館」は日本統治時代の1899年4月に起工、1901年9月に完成しました。洋館と和館と庭園が2カ所あり、主要部分を占める洋館は台湾総督府営繕課の福田東吾と野村一郎によって設計されました。当初はネオ・ルネッサンス様式の建物でしたが、シロアリの被害により改築を余儀なくされ、1911年に総統府の改修を手掛けた森山松之助の設計に基づいてバロック風に建て替えられました。

建物は随所に西洋の古典的な建築様式が取り入れられています。屋根は勾配のあるマンサード様式、ギリシャ式の破風やローマ式の円柱、ベランダやアーチが配され、外壁の彫刻装飾も豪華さを演出しています。

和館は数寄屋造りの木造建築で、総督のもう一つの社交と日常生活の場として新設されました。洋館とは渡り廊下で結ばれ、室内から大きな池がある日本式庭園を望めるように設計されています。残念ながら現在は非公開となっています。

北側の日本式庭園には奏楽堂、東屋、石造りの欄干橋、築山、滝、灯篭などが配され、心和む空間になっています。南側の庭園はフランス庭園で、バロック風の噴水や幾何学式の花壇が作られています。その前が正面玄関です。

目を見張る豪華な内装

目を見張る豪華な内装

写真:吉川 なお

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玄関ポーチから深紅のじゅうたんに導かれて中に入ると、外観からは想像できないまばゆい世界が待っています。

真っ白い壁に金色の装飾、大きな水晶のシャンデリア。まるでヨーロッパの宮殿に来たかのようで、その美しい内装に誰もが見とれてしまうことでしょう。

参観順路は2階から。窓から陽光が差し込む階段を上っていると、ここに招かれた国賓のような気分になります。

日華平和条約の調印地

日華平和条約の調印地

写真:吉川 なお

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2階に上がると、5体のブロンズ像がすぐ目に入ります。これは第二次世界大戦後に日本と中華民国(国民党政府)との間で戦争状態を終了させるために締結された「日華平和条約」の調印の模様を再現したもので、1952年4月28日にまさにこの場で調印されました。この条約によって、日本は台湾に対する権利を放棄することになりました。

日本側の代表は河田烈元蔵相、台湾側の代表は葉公超外交部長(外相)で、列席者5人の銅像とそばに陳列されている史料が当時の様子を教えてくれます。

2階の居室も見学可能

2階の居室も見学可能

写真:吉川 なお

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2階には生活空間だった部屋が連なっています。それぞれの部屋には英国から輸入したビクトリア様式のタイルと暖炉が設置され、床はヒノキの寄木張り、廊下には美しいステンドガラスがはめこまれています。

中央にある「第一の部屋」は当時畳敷きだったところで、部屋の真ん中には装飾箱が置かれています。上部は大理石で、四面には富士山・渡月橋・厳島神社・日光の神橋の風景が彫られ、四方は鶴と亀の彫刻が施されています。内層上部の78種類の鳥の彫刻も実に見事です。

その他、総督の寝室だった部屋や書斎や食堂、天皇が謁見された大客室なども公開されています。2階東側には螺旋階段が設置され、現在は昇降できませんが、ここからバルコニーに出られるようになっています。

1階には現在も晩餐会などに使われる大広間や応接室などが並んでいます。目の前はきれいに手入れされた日本式庭園で、当時も心癒す光景が広がっていたことでしょう。

公開は月1日だけ!

台北賓館は長らく非公開でしたが、2002年から大規模な整備が始まり、2006年5月に竣工し7月から一般に公開されています。現在は月に1日だけ自由参観日が設けられ、その日に限り、午前8時から午後4時まで無料で内部の見学が出来るようになっています。写真撮影もでき、予約も必要ありません。

参観可能日は外交部のホームページに掲載されています。(関連MEMO参照)
普段はガイドが引率し団体で参観する総統府も、月に1日だけ個人参観することができ、同じ日に設定されています。かけもちも可能なので、是非予定を合わせて同時参観されてみてはいかがでしょうか。

台北賓館の存在価値は、東西の文化が融合した建築様式と歴史の舞台として台湾の近現代史を見届けてきたことにあります。日本人が残した歴史的遺産、一見の価値ありですよ!

掲載内容は執筆時点のものです。 2015/11/07 訪問

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