切支丹資料館と根獅子浜との間にある聖地・それが「おろくにん様」を弔う「うしわきの森/ウシワキの森」です。
永禄9年(1566年)のこと、両親と娘3人が暮らす家に男が住み込みで働くこととなり、やがて長女の婿養子となります。
娘が身ごもったため、両親は一家が潜伏キリシタンであることを男に告白するとどこかに行ってしまい、代わりに捕縛の役人たちがやってきました。
役人たちは村人全員が潜伏キリシタンであることを白状するよう一家に強要しますが、村人たちをかばい、信者は家族の五人だけと告げて、根獅子の浜で処刑されてしまいました。
「おろくにん様」とは長女のお腹の中にいた赤ちゃんを含めての呼び名で、根獅子の海に投げ捨てられた遺体は「うしわきの森」に埋葬され、聖地として大切に守られています。
かつて「うしわきの森」の敷地内に入る際、真冬でも靴を脱いでいました。今でも石の祠にお供えする際は、靴を脱いでお参りする神聖な場所です。
くれぐれも失礼のないようにご注意ください。また、祠の写真撮影も遠慮した方が良いでしょう。
根獅子浜は「日本の快水浴場百選」に選ばれた白砂の美しい遠浅のビーチで、夏には数多くの海水客で賑わいます。
その浜の沖にある岩場が「昇天石」と呼ばれている聖地です。
「おろくにん様」が根獅子浜で処刑され、海に打ち捨てられると曇天であったにも関わらず岩場に日があたり、パライソへと招魂される様子が見えたと伝わっています。
その後も弾圧は続き、寛永12年(1635年)には70名もの信徒たちが根獅子の浜で処刑され、海岸は血で真っ赤に染まったといいます。
「おろくにん様」に続き、この浜で殉教したものはこの岩からパライソへ向かうと信じられるようになり、「昇天石」と呼ばれて大切にされています。
海水浴をする子どもたちは、この岩には腰掛けないよう、今も大人たちから言い聞かされるとのことです。
※ 写真手前の岩でなく、干潮には白波が立っているあたりに見える岩場が「昇天石」です。
信徒である母と赤子が捕縛の手から逃げる途中、農夫にかくまってくれるように頼むと不思議なことに麦が伸びて母子の姿を隠します。しかし、赤子が泣いたために見つかってしまい、斬殺されてしまいます。
この斬殺された母子の血を吸ったという「チチャの木」を切ると赤い血が流れると伝えられています。
長崎・外海と五島に伝わる「天地始之事」にも同様の言い伝えがあるものの、聖母子は逃げのびるという点で根獅子の伝承と異なっています。
切支丹資料館から紐差に向かう道の脇にある木が「チチャの木」として伝わっています。
カクレキリシタンの重要な行事の一つにお水取りというものがあります。これは、お授けという洗礼儀式やお葬式、お祓いに使う聖水を取るものです。
信徒たちの高齢化が進み、根獅子でも組織的な宗教行事として行なうことはなくなりましたが、個人で信仰を続けている方の願いを聞き、今も元「水の役」の方がお水取りを行なっています。
「うしわきの森」の奥の小山を登って行くと小さな溜池に流れ込む湧水を見つけることができ、溜池のあるあたりで後ろを振り返ると写真のように根獅子浜の「昇天石」や「ニコバ」という聖地のある山が一望できます。
井戸といっても私たちが目にする井戸とは異なり、湧水口を指しており、知らない者には獣道とわき水としか思えないほど自然の状態です。
くれぐれも勝手に踏み込んで聖地を穢さないよう、切支丹資料館の方にガイドいただくことをお勧めいたします。
平戸島は平戸大橋で本土とつながっているため、比較的アクセスも容易。
「福岡」からYOKAROバス(会員制高速バス)を利用すればダイレクトに「平戸」に入れます。
また「佐世保」から高速バスや松浦鉄道を利用する方法や、船で南部の「前津吉」港に入ることもできます。
今回紹介した「根獅子」の史跡以外にも平戸港や紐差町で教会とお寺・神社が並ぶ景色を見たり、「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」の世界遺産(暫定リスト)に掲載されたコロニアル風のエスニックな木造教会「宝亀教会」を見たりすることもできます。
ゆっくりと平戸島に滞在し、キリシタンやカトリックの史跡巡りとあわせて、松浦藩やオランダ商館の見学なども楽しまれてはいかがでしょうか。
教会や聖地は信者の皆さんにとって大切な祈りの場です。お祈りされている方の邪魔にならないよう静かにご見学ください。特に長崎の教会は過酷な弾圧を耐え、信仰を守り続けた歴史に対する配慮が必要です。くれぐれもマナーを守って見学してください。
祭壇はもっとも神聖な場所です。絶対に立ち入らないようにしましょう。教会後ろの二階部分も立ち入り禁止です。
祭壇はもちろん、ミサの撮影はNGです。司祭等のお許しがない限り、撮影・公開するのはマナー違反です。
また、潜伏キリシタン時代からの信仰を守り続けている方々(カクレキリシタン)について、誰彼かまわず聞き出すようなことはおやめください。
まずは「平戸市切支丹資料館」を訪問し、学芸員の方に見学方法や場所等を確認し、相談したうえで訪問しましょう。
※ 資料館では有料によるガイドも行っています。2コースありますので、ぜひご利用ください。
※ 見学マナーについては「長崎の教会群インフォメーションセンター」のWEBサイトもご覧ください。
参考文献
長崎游学(2) 長崎文献社
カクレキリシタン オラショ-魂の通奏低音 宮崎 賢太郎/長崎新聞新書
カクレキリシタンの信仰世界 宮崎 賢太郎/東京大学出版会
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(2024/4/25更新)
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