キリシタン信仰を450年以上守り続けている長崎「生月島」

キリシタン信仰を450年以上守り続けている長崎「生月島」

更新日:2015/12/03 18:06

ガスパル・ヴィレラ神父によって永禄元年(1558年)に始まった布教以来、島民のほぼ全員がキリシタンとなった長崎の島・生月。
禁教令下の激しい弾圧を物語る殉教の跡が数多く残されており、今もカクレキリシタンの方々が信仰を続けています。
450年以上に渡って信仰を守り続けてきた“世界に類を見ない歴史”を体感してみませんか。

信仰の史跡が集まる北部の町「壱部」

信仰の史跡が集まる北部の町「壱部」
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もともと島の北部はキリシタン領主である一部氏が治めていた地域であるため、複数の史跡と教会が集まっています。

壱部の町なみを一望できる山側には潜伏キリシタンの子孫によって、明治17年(1884年)に建てられた生月最初の教会「壱部教会堂」があり、カトリックに復帰した方々の信仰の拠点となっています。

教会堂前から海側へ歩みを進めると中腹に「白山神社」があり、裏手には「茶屋のジサンバサンの屋敷跡」といわれる史跡があります。
茶売りに化けた役人に家の中の御神体を見つけられて処刑された場所と伝わっています。

さらに進んで住宅街に入ると公園があり、キリシタン領主・一部氏の屋敷跡「お屋敷さま」という史跡です。昔は鬱蒼と茂った森でしたが開発が進み、公園として整備され、コンクリートの御堂が残っています。

キリシタンの優しさに触れ、信徒となって殉教した幸四郎様を弔う祠

キリシタンの優しさに触れ、信徒となって殉教した幸四郎様を弔う祠
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生月島北部にある番岳北側の貯水池近くに幸四郎様、またはサンパブロー様と呼ばれる聖地があります。

幸四郎は平戸藩から信徒弾圧のために遣わされた役人でしたが、踏み絵を行なわない信徒を射た矢が自分に戻ってきたことが原因で失明してしまいます。
光を失った幸四郎を信徒たちは手厚く看護し、その甲斐あって視力は回復します。
信徒たちの優しさに触れて、キリシタンに改宗した幸四郎はその後、役人たちに捕らえられ、殉教します。

今も幸四郎様を弔う小さな祠のある森は聖地として崇められ、森の中に入る際は靴を脱いで裸足で入ること、石や草花を持ち帰ってはならないと言われ、地域の人たちによって大切に守られています。

港町の一角に静かに佇む殉教の史跡「八体様」の祠

港町の一角に静かに佇む殉教の史跡「八体様」の祠
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南部の中心地・舘浦の南側に八体龍王を祀る「八体様」という小さな祠があります。
7人の信徒(一人は身ごもっていたため八体)が禁教令によって処刑された殉教地として伝わっており、現在は安産の神さまとして、広く地域の方々にお参りされています。

祠のある敷地内に入る際は、帽子を脱いでご見学(参拝)してください。
また史跡は住宅地の路地の一角にあるため、静かにご訪問ください。

鉄川与助によるロマネスク様式の教会堂「カトリック山田教会」

鉄川与助によるロマネスク様式の教会堂「カトリック山田教会」
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平戸に来訪したアルベール・ペルー神父によって、明治11年(1878年)にカトリックに復帰した人たちが山田教会の信者たちのルーツと言われています。

教会建築で有名な鉄川与助が大正元年(1912年)に完成させた木造レンガ造りの教会で、リブ・ヴォールト式と呼ばれるかまぼこ型の木造アーチ式天井や蝶の羽で出来た円形の壁面模様はとても美しく、五島や長崎に残る著名な教会と比較しても負けない美しい教会です。

敷地内には生月島出身の聖人・トマス西の列聖記念碑やカクレキリシタン発見の碑もあり、生月の信仰の歴史が一覧できる場所と言えます。

生月の町の中で散見する信徒の印

生月の町の中で散見する信徒の印
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学芸員の方によれば、カクレキリシタンの信徒やカトリックの信徒であることの印を町のなかで見つけることができるようです。

例えば、写真のように意匠の一部に十字架をデザインしている。
十字架を意識した名前のある表札(田という文字を口と十で表したり、木という文字を十と八で表す)など、注意深く町の中を観察するとあちらこちらにそのシグナルを見つけることができます。

禁教令後の厳しい時代を乗り越えた信徒たちの強い遺志と矜持を窺い知る事ができます。

みなさまへのお願い

今回、紹介した史跡以外にも「千人塚」「焼山」「アントー様」「ダンジュク様」「しろ様」など、殉教の史跡は島内にたくさんあります。

ただし、民家の一部にあるため事前の連絡が必要であったり、靴や帽子を脱いで参拝したり、写真撮影は控えるなどのマナーを守らなければなりません。
まずは生月町博物館「島の館」を訪問し、学芸員の方に見学方法や場所等をきちんと相談したうえで訪問しましょう。

教会は信者の皆さんにとって大切な祈りの場です。お祈りされている方の邪魔にならないよう静かにご見学ください。くれぐれもマナーを守って見学してください。
祭壇はもっとも神聖な場所です。絶対に立ち入らないようにしましょう。教会後ろの二階部分も立ち入り禁止です。
祭壇はもちろん、ミサの撮影はNGです。司祭等のお許しがない限り、撮影・公開するのはマナー違反です。

また、潜伏キリシタン時代からの信仰を守り続けている方々(カクレキリシタン)について、誰彼かまわず聞き出すようなことはおやめください。
ぜひ、生月島に宿泊し、数日かけてゆっくり散策されることをお勧めいたします。

※ 見学マナーについては「長崎の教会群インフォメーションセンター」のWEBサイトもご覧ください。

参考文献
長崎游学(2) 長崎文献社
カクレキリシタン オラショ-魂の通奏低音 宮崎 賢太郎/長崎新聞新書
カクレキリシタンの信仰世界 宮崎 賢太郎/東京大学出版会
生月島のかくれキリシタン 平戸市生月町博物館・島の館/平戸市生月振興公社

掲載内容は執筆時点のものです。 2013/12/24−2013/12/25 訪問

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