写真:風祭 哲哉
地図を見る「ととろ」のバス停は大分県南部の佐伯市宇目町というところにあります。
「ととろ(轟)」は実際に存在する地名で、かつてここを通っていた大分バスのバス停だったのですが、2013年の春、ここを走る路線が廃止されてしまったことにより、しばらくバス停の跡だけが保存されていました。その後、住民の手作りだった木造の待合室の老築化もあり、2015年2月に旧バス停から80メートルほど離れた現在の場所に移設、修復され、今は佐伯市のコニュニティバスの待合室として利用されています。
また、大分バスの厚意によりもちろん「ととろ」のバス停標識も昔のまま残されています。
大分バスの路線廃止により、現在ここを通る公共交通機関は、地域のコミュニティバスのみとなっています。域外からアプローチするには、JR豊肥本線の三重町駅から日豊本線の重岡駅行きの路線バスが1日5往復あり(土日は減便)、比較的近くを通りますが、それでも最寄りの小野市バス停で下車してから片道1時間ほど歩かなければなりません。車であれば大分市内から約60キロの距離となります。
写真:風祭 哲哉
地図を見る日本中のどこにでもありそうな静かな里山のバス停だった「ととろ」。1988年に人気アニメ映画「となりのトトロ」が公開されたあともしばらくは大きな注目を浴びることもなかったのですが、1997年に登場キャラクターの看板がこのバス停に設置されているのが見つかり、誰が置いたのか分からないまま、その後、まるでプロが描いたかのように完成度の高い作品が次々と置かれるようになりました。
こうした情報がネットや口コミで広がり、またバス停の周囲もアニメの一シーンをほうふつさせるようなロケーションでもあったことから、一躍人気観光スポットとなったのです。
写真は新しく移設されたあとの「ととろ」バス停ですが、移設以前のバス停は、森をバックに流れる小川の上に直接丸太を組んでその上に設置されていたので、よりトトロの世界観に近かったのではないかと思います。
写真:風祭 哲哉
地図を見る「ととろ」のバス停から上流に少し歩くと、「トトロの森」と名付けられた小公園が整備されています。小さな小川を渡ると、そこにはかつてバス停に置かれていた猫バスの大きなパネルが設置されています。猫バスは、顔を出して記念撮影できるように、ちゃんと窓がくり抜かれています。
また、その近くの小川のほとりには、木の枝でできた柵の上にトトロの人形が数多く並べられたスペースもあります。このトトロ人形には、お腹の白い部分に願い事やメッセージなどが書かれていて、さながら神社の絵馬のトトロ版という感じです。それぞれのトトロも手作りらしく、1つ1つ表情が違っています。付近にはそのほか、トトロやメイなどのパネルなどがあります。
トトロのバス停も含め、これらはすべて「どこかにいる誰か」や地元の方の善意が集まって成り立っています。注目のスポットとなったばかりに、バス停の作品が持ち去られたり、落書きされたりといった被害も出ましたが、そのたびに地元の方が直したり、また「どこかにいる誰か」による新しい作品が出現したりしているようです。
写真:風祭 哲哉
地図を見る佐伯市宇目町のととろ地区は、これぞ日本の里山、といった感じの静かで美しい場所です。バス停のすぐ裏の集落に、雰囲気のいい小さなレストランが1軒だけありますが、そのほかは民家が数軒と狭い畑、森と川があるだけ。トトロのバス停とトトロの森を見終わってしまうと、それ以外の観光地的な見どころは特に何もありません。
ちなみに、ここから車で10分ほどの場所にある「道の駅宇目」に行けば、トトロに関連するお土産が売っています。
また「道の駅宇目」の脇には、地元の民謡『宇目の唄げんか』にちなんで命名された「唄げんか大橋」という変わった名前の大きな橋があり、付近のちょっとした観光スポットになっています。
映画「となりのトトロ」のファンや小さなお子様がいるファミリーにおススメのこの「トトロ」のバス停。それに加えてぜひ行ってほしいのは、コドモゴコロを忘れたくない大人たち。
前述のように、バス停以外は何もない場所ですが、それでも春から初夏にかけて、今でもホタルが舞うほどの豊かな自然が残っているこの里山、コドモのように心を素にしてぶらぶらと散歩すれば、どこかでジッとこちらを見ている森の主、トトロの気配をきっと感じることができるでしょうから。
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(2024/4/24更新)
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