世界最大規模!ロシア・エルミタージュ美術館を完全制覇

世界最大規模!ロシア・エルミタージュ美術館を完全制覇

更新日:2018/10/23 15:59

菊池 模糊のプロフィール写真 菊池 模糊 旅ライター、旅ブロガー、写真家
ロシアの古都サンクトペテルブルクにある「エルミタージュ美術館」は、世界三大ミュージアムのひとつです。建物自体が世界遺産であり、ロシア旅行の目玉ですので、多くの方が訪れます。
しかし、規模が大きく複雑なので、途中で見学を挫折する人もおられます。そこで計画的に見学することが大切です。
エルミタージュを制覇するためのコツを伝授しますので、サンクトペテルブルクの一日を有意義に過ごしてください。

エルミタージュ美術館の概要

エルミタージュ美術館の概要

写真:菊池 模糊

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ロシアのロマノフ王朝の女帝エカテリーナ2世が、1775年に自分専用の隠れ家(エルミタージュ)展示室を建てたのがこの美術館の起源です。
その後、歴代のロシア皇帝が美術品を収集し、ロシア革命後は貴族・商人から没収されたコレクションも集められ、冬の宮殿の全体の建物を含めて統合し、巨大な国立ミュージアムとなりました。写真は宮殿広場から見たエルミタージュ全景です。

総収蔵品は約300万点とされるため、全てを詳しく見るのは困難です。少し余裕をもって見るにも数日間が必要です。ロシアの旅程が詰まっている方は、せめて一日(普通開館時間10:30〜18:00)をこのエルミタージュ美術館の中で過ごし、アートの世界に浸りましょう。

この広大なミュージアムを巡るには、いくつかの注意点があります。
まず、展示室や収蔵品が膨大なため、行きあたりばったりでは訳がわからなくなり、気力体力を消耗し一部分しか見られません。ある程度の予習が必須で、自分の見たい作品を決めておき優先して回るのがベターです。
ここは非常に複雑な施設で、パリのルーヴル美術館以上に迷いやすい構造です。必ず館内地図を参照しながら進み、もし迷ったら「大使の階段」に戻りましょう。1階にしかないトイレとカフェの位置も確認しておくべきです。

コート類はクロークに預けなければなりません。またカバン類はA4サイズ以下のもに限り持ち込むことができます。写真撮影は可能ですが、フラッシュと三脚は禁止です。
朝一番から入場すると、途中で休憩することも大切で、館内に軽食の取れる簡易カフェがありますので、サンドイッチに飲み物程度になりますが、必ず昼食をとって英気を養いましょう。

なお、2015年現在、印象派以降の絵画は、新別館(ブランチ館)に移動しています。宮殿広場を挟んだ向かいにある旧参謀本部ビル内にあり、いったん本館を出なければなりません。少し距離がありますので、近代西欧絵画をじっくり見たい方は、本館とは別に日を改めて行ったほうが良いでしょう。

エルミタージュ美術館の宮殿装飾

エルミタージュ美術館の宮殿装飾

写真:菊池 模糊

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エルミタージュ美術館の特徴は、宮殿として実際にエカテリーナ2世をはじめとするロシア皇帝(ツァーリ)の住居であったということです。ここが世界三大ミュージアムとともに世界三大宮殿のひとつとされている所以です。
エルミタージュを構成する、冬宮、小エルミタージュ、旧エルミタージュ、新エルミタージュ、劇場エルミタージュの五つの建物は、19世紀から約百年かかって完成されました。
したがって、まず冬宮を中心とする王家の各部屋をまわり、宮殿装飾を楽しむのがおすすめです。

起点は、幾多の歴史の舞台として登場した大使の階段(ヨルダン階段)です。
写真にありますように、この大使の階段はラストレッリにより造られたロシア・バロック建築の極致であり、館内で迷った際の指標にもなりますので目に焼き付けてください。

次に、大使の階段を上り冬宮2階を中心とした宮殿装飾を見て回ります。
必見の部屋は、孔雀の時計のあるパヴィリオンの間、謁見に使われた大玉座(聖ゲオルギー)の間、女神とピョートルが描かれたピョートル大帝の間、銀器の展示室でもある紋章の間、300人の肖像画がある1812年祖国戦争の間、美しい孔雀石の間、ロココ様式の着替えの間(ブドゥアール)、黄金の客間、ニコライ2世の図書室などです。
各部屋の家具、装飾小物、天井画、額入り絵画、シャンデリア、モザイクの床などどれをとっても芸術品といえます。

これらの冬宮2階のロマノフ王家の部屋とインテリアを見て回るだけでも、半日はかかります。
午前中はこれらをざっと見学し、午後は新エルミタージュのイタリア絵画など他の展示に移り、最後夕刻に改めて気に入った部屋をじっくり見るのが、おすすめの時間配分です。

イタリア美術

イタリア美術

写真:菊池 模糊

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エルミタージュ美術館の大きな魅力は、イタリア美術のコレクションです。
中でも一番の人気は、やはりレオナルド・ダ・ヴィンチの『ブノワの聖母』(ベヌアの聖母)と『リッタの聖母』の二作です。
写真にあげましたのは『ブノワの聖母』です。この作品は若き日のレオナルドの最初の聖母子画で、彼が女性を描いた作品としては最も柔らかい表情で親しみやすい顔立ちをしています。

非常に数少ないレオナルドの絵画作品を複数所蔵するのは、ルーヴル美術館(4点)とウフィッツィ美術館(3点)に次ぐもので、エルミタージュの実力を示しています。
ラファエロの『コネスタービレの聖母』と『聖家族』も見逃せません。
これら巨匠達の描いた聖母や聖家族の画を見れば、時を超えて、敬虔な気持ちに浸ることができます。

次に有名な作品としては、ティツアーノの『悔悛するマグダラのマリア』と『ダナエ』があります。これらはティツアーノが得意とする女性美あふれる絵画の傑作です。
この他、ジョルジョーネ『ユディト』、カラヴァッジオ『リュートを弾く若者』、ティントレット『洗礼者ヨハネの誕生』、メルツィ『婦人の肖像』、フラ・アンジェリコ『聖母子と天使たち』、フィリッピーノ・リッピ『礼拝』、ミケランジェロ『うずくまる少年』などの素晴らしい作品があります。

これらの作品は、すべて旧エルミタージュ2階のダ・ヴィンチの間とラファエロの間の近くにありますので、イタリアのルネサンス期の美術を存分に楽しんでください。

フランドルやオランダの絵画

フランドルやオランダの絵画

写真:菊池 模糊

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エルミタージュ美術館が特に多く集めているのが、フランドルやオランダの絵画です。
中でも、レンブラントの作品が20枚以上所蔵されており、それが展示されている部屋はレンブラントの間と呼ばれています。(写真参照)

『フローラに扮したサスキア』、『老ユダヤ人の肖像』、『イサクの犠牲』、『天使のいる聖家族』など印象的な作品が並んでいます。
特に『ダナエ』は、1985年に観客から硫酸をかけられるという事件が起こり、修復されたものの傷跡が残っているいわくつきの名作です。
そして、聖書の逸話に題をとった晩年の作品で、レンブラントの最高傑作ともいわれる『放蕩息子の帰還』が展示されています。

ルーベンス の『大地と水の結合』、『ペルセウスとアンドロメダ』も必見ですし、ヴァン・ダイク 『自画像』も見事です。

その他、スペイン絵画としてはベラスケス『昼食』、ゴヤ『アントニア・サラテの肖像』、エル・グレコ『使徒ペトロとパウロ』も見逃せません。
北方ルネサンスの画家クラナッハの『女の肖像』と『林檎の木の下の聖母子』も逸品です。

まだまだある美術品の数々

まだまだある美術品の数々

写真:菊池 模糊

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上記の宮殿装飾や有名絵画だけでなく、エルミタージュにはまだ多くの見所があります。
数が多いのがエカテリーナ2世がお気に入りだった15〜18世紀のフランス美術で、冬宮2階南側の展示室の多くを占めています。
その代表的な作品は、フラゴナール『内緒の接吻』、ヴァトー『困った申し出』、ヴィジェ・ルブラン『自画像』などです。
イギリス美術やドイツ美術の部屋もあります。

西欧以外では、写真の古代エジプト関係をはじめ、シベリア関係、古代中近東関係、極東と中央アジア関係、ビザンチン関係、ユーラシア原始文化関係などの部屋があります。
この中では、1階出口近くにある古代エジプトの展示室がミイラなどもあって興味深くおすすめです。カフェの側ですので時間調整にも良いでしょう。

さらに、人数限定の予約と別料金が必要な特別秘宝室として、古代スキタイ民族の素晴らしい黄金工芸品を中心とした「ゴールデンルーム」と、エカテリーナ2世の宝石類が魅力の「ダイヤモンドルーム」があります。いずれも、特別な専門ガイドによる少人数案内となり、撮影禁止で各一時間程かかります。予約時間に縛られますので、あくまで余裕がある場合に挑戦してください。一日でエルミタージュを見学する場合は、どちらかひとつに留めて、欲張らない方が良いでしょう。

最後に

エルミタージュ美術館は、世界最大規模のミュージアムで、尽きせぬ魅力があります。厳冬期でも内部は暖かいので、ここで一日を過ごすのも良いものです。ロシア旅行の素敵な思い出となるでしょう。

この美術館自体が歴史的遺産のため各所で修復作業が行われています。一時的に展示室が移動していたり、閉室している場合もあります。また、随時、企画展も開催されています。料金や開館時間も変更されることがあります。
そこで実際に行かれる前には、必ず下記の参考リンクから公式サイトを参照してご確認ください。

なお、エルミタージュ美術館に展示されているルネサンス美術につきましては、下記メモ欄から「ロシア・エルミタージュ美術館でルネサンス美術を見る!」を参照してお読みください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2015/10/20 訪問

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