竹内街道は、古代この街道を通じて大陸のすぐれた文化が都にもたらされ、中世には堺と大和を結ぶ経済の道、江戸時代には西国巡礼や伊勢詣の宗教の道として賑わい、現在は国道166号線がこの街道を縫うように走っています。
とりわけ太子町町役場から二上山西麓の街道沿いには、歴史ファンにはたまらない史蹟が目白押し。
そして、竹内街道のふだん着の風情を残すのもこの山田集落界隈に極まります。
この竹内街道に面し、今も道しるべや伊勢燈籠などでかっての賑わいと面影を伝えるのが旧山本家住宅です。
街道の景観を強く印象づける民家として国の登録文化財となった山本家住宅は、典型的な切妻造り茅葺屋根の両端の妻部分に、ウダツという白壁を作り瓦をのせた特徴的な建築様式の大和棟。
中庭を挟んで書院造りを模した離れがあるなど、近世庶民の農家とは思えないほどの贅をつくした造りでしかも気取ったところがなく、なごみます。
床の間には河内木綿の材料となった綿の実がさりげなく飾られ、農土間よりは稲架(はざ)掛けされた赤毛米がぶら下がりのどかの極みで、立ち去りがたい思いにとらわれます。
この山本家には歴史資料館へ昇る街道の餅屋橋と伊勢燈籠が目印です。春秋の土・日・祝日のみの開館ですので、確認の上お出ましください。
町立竹内街道歴史資料館を抜け、旧道が国道166号線に合したところからはゆるやかな車道を登り万葉の森まで歩きましょう。
そこからは、登山口の地蔵を拝し二上山を目指します。
岩屋は、山道に取りついてしばらく坂を登ると右手に風害で倒木となった千年杉越しに見えてきます。
岩屋石窟は大小二基あって、大きい方は幅7m余り、高さ6m、奥行4mほど。8世紀奈良時代の築造といわれています。
大石窟の内部中央には、地面から生えぬきの3層の凝灰岩製多層塔(高さ約3m)の石塔が残されています。
北壁面には三尊立像を浮彫にしていますが、剥落が著しく光背部分が識別できるに過ぎません。
石窟上部の壁面には数ケ所の円形の水平坑が穿たれており、木造の覆屋構造があった可能性が指摘されてきました。
そんなところから、当麻寺に所蔵される当麻蔓陀羅を中将姫が、この岩屋で織ったとする伝説が伝えられています。
岩屋からは、二上山ハイキングコースを横切り、岩山を削ったような小道を登り降りし、凝灰岩の露岩と赤松の茂る小道をしばらく登ると小高い台地に出ます。
そこが高さ5.2mの見事な十三重塔と石龕仏が目印の鹿谷寺跡。
このあたりは古代よりの石切場で、この地の凝灰岩は、古墳時代の石棺や法隆寺金堂の基壇石に利用されています。
十三重塔は周囲の石材を切り取ったあとに、塔の部分のみを彫り残した生えぬきの石塔で、その脇には三尊像を彫った石龕仏が残されています。
高さ1.5m、幅3m、奥行0.6mの方形の彫り込みを作った奥の壁面に蓮華座に座す如来像3体を線刻していて奈良時代の造立とされるものです。尊名は風化のため判然としませんが、右から弥勒・釈迦・阿弥陀と思われます。
ここからすぐのところには眺望の素晴らしい高台があり、河内平野が一望できますので、ぜひお立ち寄りください。
二上山登頂は他日に譲り、竹内街道を喜志駅方面へともどり太子ゆかりの叡福寺へ足を伸ばしましょう。
聖徳太子が生前、ここに自らの墓をつくり、推古天皇が寺院を創建、そののち聖武天皇が伽藍を建てるなど歴代の天皇より崇拝をうけた叡福寺は、太子の墓をずっと見守ったきた寺院。
信長の焼き討ちに遭い焼失しましたが江戸時代に再建されました。
境内には重文指定の聖霊殿や多宝塔をはじめ、浄土堂、金堂などの伽藍が整然と建ちならんでいます。
この寺院の背後の小山の形の円墳こそが太子とその母・穴穂部間人皇后(あなほべのはしひとこうごう)、妃の膳郎女(かしわでのいらつめ)の3人が葬られ、三骨一廟と呼ばれるものです。
そののち、太子信仰は長屋王の悲劇と重ね合わせられ、独特の信仰形態を生み、空海や親鸞など、多くの高僧が訪ねています。
また、叡福寺門前の府道を隔てて隔夜堂と呼ばれるお堂があり、そこには蓮華座に座す定印の見事な阿弥陀石仏が安置されています。
かって千日祈願の誓いをたてて隔夜参りをした隔夜僧によって刻まれたものと伝えられる府指定の重要美術品です。
また、この近くには飛鳥の石舞台とは別に蘇我馬子の墓があり、このあたり一帯が蘇我氏の所領であったことを物語っています。
王陵の谷は、しっかり回れば数日はかかる史蹟で満たされています。
テーマを絞って何次にも分けてまわられると面白いところです。
交通機関利用の場合は、近鉄南大阪線上ノ太子駅、あるいは近鉄長野線喜志駅を起点にバスを利用すると負担なくめぐることができます。
竹内街道旧山本家跡の隣の交流館、万葉の森手前には道の駅もあり、ご当地の特産品を買い求めることもできます。
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(2024/4/26更新)
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