写真:吉川 なお
地図を見る子規記念博物館の東隣、緑豊かな湯築の杜・道後公園の傍らに建つ「うめ乃や」は、大正・昭和時代に当主の自邸として宮大工によって建てられました。長い年月を経て老朽化していましたが、1994年に四国を中心に活躍する建築士の手によって、道後の宿にふさわしい和と趣の旅館に生まれ変わりました。
正岡子規や夏目漱石もそぞろ歩いたであろう、伊予国最大の豪族・河野氏が築いた湯築城跡地に広がる湯築の杜を庭の借景として、めぐりめぐる四季の移ろいを愛でながら静かに佇んでいます。
写真:吉川 なお
地図を見る玄関を一歩入ると、温泉街の賑やかさとは打って変わって、静寂な時が流れています。畳敷きの廊下、ガラス越しに見える中井戸、きれいに手入れされた中庭、さりげなく置かれた花瓶の花々にも季節感が感じられます。
庭に面したラウンジにはゆったりした椅子が設えられ、オーディオセットが置かれた小さなライブラリーなど心地よい時間を提供してくれる場所もあります。どこからともなく薄荷の香りも漂ってきます。
客室は、風流な名がついた和室がわずか8室のみ。高層ビルのような大きなホテルや旅館と違って、プライベート感たっぷりの寛ぎの空間となっています。
写真:吉川 なお
地図を見る広さと間取りが異なる客室は、人数やロケーションでお好みのまま。
1階の「鶯」は8畳+次の間3畳、内風呂つき、「同風庵」は8畳+次の間3畳、「侘助」は8畳と6畳の二間続き、「日暮」は6畳。
2階の「数寄屋」は12畳で内風呂つき、「都鳥」は8畳+次の間3畳、「羽衣」と「星車」は6畳+次の間が2畳となっています。
大広間は「湯月」と「有楽」で、ここで朝晩の食事が供されます。
「同風庵」は南に湯築の杜を臨む数寄屋造りの部屋で、離れのような趣があります。扉を開けると渡り廊下があり、左手にトイレと洗面所、ひしゃくが置かれた手水鉢があり、続く次の間は茶室にもなっていて、落ち着ける間取りとなっています。
日常から解き放たれ、また情緒を重んじる配慮で、テレビや冷蔵庫は障子戸やふすまの中。ここに滞在している間だけは、雑事を忘れ、心のまま過ごすのがいいかもしれません。
写真:吉川 なお
地図を見るお風呂は内湯の「花藻の湯」と中庭にある「杜の湯」のふたつ。道後温泉本館と同じ無色透明のアルカリ性単純温泉で、毎日男女交代制。6時半から23時の間に両方入ることができます。
部屋数が少ないので、貸し切りになる可能性も大。我が家のお風呂のように独り占めして、ゆったり温泉浴を楽しむことができます。
「花藻の湯」は芳香に包まれた檜風呂で、家族風呂のような温もりがあります。「杜の湯」は緑豊かな庭園を抜けた湯屋にある岩風呂で、夜は行灯の灯りでほのかに照らされ、朝は竹垣と屋根の隙間から朝日が差し込み、風情たっぷり。道後の湯は柔らかな肌触りで、全身をしっとり包みます。湯口から流れる湯の音も心地よく、名湯に浸る、ただそれだけの贅沢な時間が楽しめます。
写真:吉川 なお
地図を見る宿自慢のお食事は、夕食・朝食共に大広間のテーブル席でいただきます。
夕食は食前酒に始まり、先付、前菜、吸物、造里、焚合せ、焼物、揚物、強肴、鯛めし、留椀、香の物、デザートと続きます。一品一品丁寧に美しく盛り付けられた和会席は、伊予ならではの地の食材をふんだんに使った芸術品。季節が織りなす山海の幸が堪能できます。美味しい地酒と一緒に旬の味覚を味わう。至福のひとときです。食事を出すタイミングもちょうどよく、おもてなしの心が伝わる接客です。
朝食は身体に優しい和食膳。彩りも豊かで目も舌も大満足です。
和の情緒と心安らぐおもてなし。正岡子規の門人、河東碧梧桐にも愛された湯宿には、旅人を癒し和ませる居心地のよさがあります。
混みあうお風呂、宴会場の騒音などは「うめ乃や」には存在しません。
小さな宿だからこそ行き届く温かいおもてなし、それがこの宿の魅力です。
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(2024/4/23更新)
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