大震災の発生から復興までを実感 新潟県小千谷市「おぢや震災ミュージアムそなえ館」へ

大震災の発生から復興までを実感 新潟県小千谷市「おぢや震災ミュージアムそなえ館」へ

更新日:2013/06/12 14:21

高橋 しゅうのプロフィール写真 高橋 しゅう 総合旅行業務取扱管理者、総合旅程管理主任者
どこにでも起こる可能性がある大地震。最近は関心が高くなっていますが、実際は何が起きて、その後どうなるのかは経験してみないと、わからないのではないでしょうか。

その大地震発生から避難生活を経て復興までの流れを、過去の経験を活かして知る為に最適な施設が、新潟県小千谷市の「おぢや震災ミュージアムそなえ館」です。

ここでは平成16年10月に発生した新潟県中越大震災を教訓に学ぶことができるのです。

大地震の様子と被害の凄まじさを体感

大地震の様子と被害の凄まじさを体感

写真:高橋 しゅう

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館内では小千谷市での被害状況を中心に、震災発生から避難生活、そして復興までを、時系列でわかり易く学ぶことができます。

まずは、最大震度7を記録した大地震の様子をシアターで体感することからスタートします。CGで再現した映像と音で臨場感のある地震の様子を疑似体験。新潟県で中越大震災、宮城県で東日本大震災の大地震を経験した私にとっても、凄まじい地響きと揺れの様子は、当時を思い出した迫力のある体感でした。尚、ここでは映像と音での体感ですが、館内の別のコーナーには、椅子に座りながら地震の強烈な振動が体験できる、地震動シュミレーターという設備もあり、こちらの体験も外せません。

映像を見た後は、地震発生3時間後の様子を展示と体験談で紹介するコーナー(写真)に進みます。倒壊した家屋や崩壊した道路、脱線した新幹線等の写真が並び、大地震の威力と恐ろしさを感じることとなります。

リアルに再現された台所で被災の様子を実感

リアルに再現された台所で被災の様子を実感

写真:高橋 しゅう

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屋外には中越地震発生時の被災住宅の様子を見ることのできるスペースがあります。(実際の順路とは異なります。)
展示は小千谷市内の集合住宅の6階の台所の様子を忠実に再現したもので、冷蔵庫や戸棚から食器類が飛び出して床に散乱して足の踏み場もない状態で、部屋の中はめちゃくちゃです。

特に高層階へ上がるほど揺れの幅が大きくなるようで、地震の揺れの凄まじさを、知ることとなります。もし地震の時に建物は大丈夫でもこの台所にいたら、冷蔵庫が倒れてきたら・・・と思うとぞっとします。東日本大震災の際は我が家の台所も食器が散乱して似たような状態で、その時を想い起しました。

館内では、地震に備えての家庭内の家具の配置についてもチェックシート等で学ぶことができますので、少しでも被害を軽減する対策を考えることができます。

解説端末でさらにリアルに大震災の様子を感じる

解説端末でさらにリアルに大震災の様子を感じる

写真:高橋 しゅう

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館内で無料で貸し出しをしている自動解説端末は、より一層と理解を深めることができる便利なシステムです。

各展示コーナーにあるマークに端末をタッチすると、その時々に起きた体験談が流れ、展示を見ながらより深く大震災の様子について知ることができ、また展示に関連したクイズにチャレンジすることもできますので、楽しみながら学ぶこともできるのです。

地震発生時の緊迫した様子や救出劇の際に何があったのかを語る体験談、その後の避難生活での苦労の様子等を耳で聞くことで、よりリアルに大震災を感じることができるのです。

地震発生から3日後は。避難生活の苦労を実感

地震発生から3日後は。避難生活の苦労を実感

写真:高橋 しゅう

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大地震の後には、余震が続く中、帰る場所を失ったり、自宅での生活を避けた方の避難生活が始まります。

一時は10万人を超える方が避難生活をされていたそうです。体育館等の公共施設を始めとして車、倉庫、テント、そして農業が盛んな新潟県では、農業用のビニールハウスも避難場所として使われていました。

館内では、このビニールハウスや体育館の避難所の様子が再現されて、その空間に入ると避難所の雰囲気を疑似体験できます。狭いスペースに布団と身の回りのものを置き、体育館では一時3,000名の方々が寝起きを共にし、プライベートな空間の無い生活は、かなりストレスも感じていたそうで、地震による直接的な犠牲者と共に、その後の心労等によって亡くなられた方が多かったことも紹介されています。反面、ボランティアの方々の暖かい支援や人々の繋がりも知ることができます。

また、水や食料等の物資も避難所によってばらつきがあり、当初は避難者へ充分な配給もままならなかったこと等も記されています。やはり日頃から地震に備えた食料や水の準備が必要なことも改めて学ぶことができます。
大地震の後の被災地ではライフラインも途絶え、数日間は大多数のお店は閉店してしまいお金があっても食料や飲み物が手に入らないことを私も東日本大震災で初めて経験しました。

そして、隣のコーナーでは、3ヶ月後からは仮設住宅での暮らしについて展示・紹介されています。避難所とは格段に違う生活が始まりますが、ここでも仮設住宅の建築仕様がまちまちで、冬場には結露なども多く苦労したこと等を体験談から知ることができました。

3年後の姿。復興に向かって歩み続ける被災地

3年後の姿。復興に向かって歩み続ける被災地

写真:高橋 しゅう

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大震災によって多くの方々が、家も暮らしも壊されてしまいましたが長い避難所や仮設住宅での生活を経て、大震災から3年、住宅や生活再建の目途が立ち復興に向かって大きく進んで行ったことが紹介されています。

震災後途絶えていた伝統行事「闘牛」の復活や、美しい景観でもある古くから守られてきた棚田の再建、震災前以上に町に元気にしようと活躍するグループなど復興に向かって進み続ける町の様子が紹介されていて、大震災の恐ろしさや悲しみから、次第に明るい気持ちにさせてくれます。

今年震災から9年目を迎える小千谷市内では復興が進み、現在は地震の爪痕も修復されて私が見た街並からは大地震があったことを感じる場所はありませんでした。(車が巻き込まれ2名が犠牲となった大崩落現場はメモリアルパークとして保存されています。)

それでもこのミュージアムを訪れると、ここが9年前に甚大な被害にあった場所であると、改めて思い出すことができます。今後起こりうる大地震のことを知り、備える上でも、訪ねる価値があるのではないでしょうか。

ここでは紹介しきれませんが、その他にも館内には記録映像や当時の新聞の閲覧、大震災に備えた準備や心構えについての詳細な紹介、5名以上のグループ向けには様々な防災プログラムもあります。

また、この小千谷市のそなえ館以外にも、近隣の長岡市にも中越大震災をテーマとした資料館や災害の傷跡を保存したメモリアールパークがあり、一連の施設を「中越メモリアル回廊」として防災学習観光の拠点として全国に発信しています。いずれの施設も無料で予約不要ですので気軽に見学できます。(グループ向けの防災プログラムは要予約。)

今後に備えた防災学習に、かつての被災地へ一度足を運んで見てはいかがでしょうか。

中越メモリアル回廊の詳細は関連メモを参照下さい。


新潟県小千谷市 おぢや震災ミュージアム そなえ館
 
入場料 :無料
開 館 :午前9時〜午後5時 毎週水曜日と年末年始休館
アクセス:JR上越線小千谷駅より車で10分。
     関越自動車道小千谷インターチェンジより約5分

掲載内容は執筆時点のものです。 2013/06/06 訪問

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