関鍛冶伝承館の日本刀鍛錬は必見!岐阜関市に響くつち音

関鍛冶伝承館の日本刀鍛錬は必見!岐阜関市に響くつち音

更新日:2018/07/29 19:58

関の孫六で有名な岐阜県関市。JR美濃太田駅で長良川鉄道に乗り換え、20分ほどの刃物会館前駅から徒歩5分のところに関鍛冶伝承館があります。館内では日本刀の歴史が紹介され、刀工名人による古式日本刀作刀工程実演が見学できます。実演では、伝統の日本刀鍛錬で「トン・トン・チーン」と刀工達の槌音が響きます。1,300度の炉から飛び散る火花、勇壮さと整然さ、刀匠が全神経を集中する日本刀の作刀鍛錬をご紹介します

関鍛冶伝承館の日本刀鍛錬実演!刀匠は打ち手へ槌音で指示をだす

関鍛冶伝承館の日本刀鍛錬実演!刀匠は打ち手へ槌音で指示をだす
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日本刀には五箇伝(ごかでん)と呼ばれる五大伝統作刀技術があります。相州伝(鎌倉)、美濃伝(関)、山城伝(京都)、大和伝(奈良)、備前伝(岡山)です。時の権力者、需要、消費、原材料などがそろった地域に刀工が集中的に移住し伝統が築かれました。その中心は最終的に江戸、大阪、名古屋、佐賀など有力城下町になりました。

現在、刀工は全国にわずか190名ほど。そのうち、日本刀のみで生活しているのは100名以下とも言われています。5年以上の厳しい修行の後、文化庁の認定試験を合格した方たちだけが、刀工と呼ばれるのです。関市周辺には現在10名の刀工がいます。

日本刀鍛錬実演で刀匠は、火炉(ほど)の温度を炎の色、火花や音など五感で判断します。一瞬たりとも気を抜けない緊張の中で、鍛錬所の空気は張り詰めます。実演は、通常3〜4週間かかる作刀工程の一部を40分ほどに集約して見せます。刀匠自ら、使われる道具、材料、作刀工程の説明をする貴重な体験となりますよ。写真は関市重要無形文化財、日本で10人ほどしかいない無鑑査刀匠・尾川氏による鍛錬の様子。

関鍛冶伝承館の日本刀鍛錬実演!刀匠は打ち手へ槌音で指示をだす
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作刀工程の説明が行われる間に炉に火をおこします。10分ほどで炉の温度が上がると、「ふいご」と呼ばれる空気を送り込む装置の横に座る刀匠の指示で、始めは一人、次に二人の打ち手が加わり、リズミカルに槌音を刻みはじめます。刀匠の槌音には、強弱や回数などで、さまざまな指示があることが次第にわかってきます。2回打った時は「打ち方止め」。「あい槌」や、「つばぜりあい」、「しのぎを削る」、「切羽詰まる」など日本刀に関わる言葉が現代生活に多く残っています。

関鍛冶伝承館の日本刀鍛錬実演!刀匠は打ち手へ槌音で指示をだす
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火炉に空気を吹き込む調整をする器具はふいご(写真)。中は2つのチャンバーに分かれ、押しても引いても空気が炉に送り込まれるスグレモノです。仕切り板には、さまざまな動物の皮が試された結果、タヌキの毛皮が使われています。すべりと密閉の絶妙なバランスが丁度いいのです。ふいごは400年も使っているもの(前の写真)もありますが、このふいごは50年位使った「新しい」ものです。

有償で実演依頼する日本刀鍛錬では、見学用鍛錬が終了すると刀匠は見学者を鍛錬所内に招き入れ、槌を持たせてくれたり、炉の横に座りふいごを吹かせてくれます。緊張感は瞬時に解けます。「トン・トン・チーン」の槌音が耳の中で響く中で余韻を楽しんでください。又、日頃の疑問を刀匠に直接聞くことが出来ます。

予約して実演してもらう場合は費用がかかりますので、予定・金額などを、事前に確認してください。

リフォームされた日本刀鍛錬所は快適そのもの、伝承館では日本刀の刃文を堪能

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関鍛冶伝承館(写真左手が展示館、右手が日本刀鍛錬所)では日本刀作刀技術の歴史、伝統技術の交流、作刀道具、和鉄の材料などを展示するほか、名刀の展示も。展示館2階奥には作刀技術をベースに作られたサバイバルナイフ、アーミーナイフ、包丁などの展示を見ることができます。関市は日本のゾーリンゲン(ドイツの刃物のメッカ)と呼ばれています。

伝統の日本刀から現代のナイフまで美しい装飾とともに展示を堪能してみてください。

リフォームされた日本刀鍛錬所は快適そのもの、伝承館では日本刀の刃文を堪能
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日本刀の材料は15回もの折り曲げで約33,000もの層になります。材料が板バネのように粘り強く強靭さを備えます。外側の刃は硬く、内側はやわらかい材料を組み合わせ、「折れない、曲がらない、よく切れる」という特徴を得るのです。折り曲げ工程から生み出される日本刀地肌の微細な模様も見どころです。

さらに焼き入れ前に粘土を、薄く、あるいは厚く、塗り分けることで、焼き入れ時の冷却スピードに変化を持たせます。焼きれ後、刃の部分に美しい模様(刃文)が生み出されます。

最終的に刃文を浮き出させる作業をするのが、吉川英治の小説・宮本武蔵に登場する本阿弥光悦(ほんあみこうえつ)などの研ぎ師です。関鍛冶伝承館では、関の名刀や現代関刀工が生み出した日本刀に、水墨画のような幽遠な刃文の美しさを見ることが出来ますよ。

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日本刀の材料は15回もの折り曲げで約33,000もの層になります。材料が板バネのように粘り強く強靭さを備えます。外側の刃は硬く、内側はやわらかい材料を組み合わせ、「折れない、曲がらない、よく切れる」という特徴を得るのです。折り曲げ工程から生み出される日本刀地肌の微細な模様も見どころです。

さらに焼き入れ前に粘土を、薄く、あるいは厚く、塗り分けることで、焼き入れ時の冷却スピードに変化を持たせます。焼きれ後、刃の部分に美しい模様(刃文)が生み出されます。

最終的に刃文を浮き出させる作業をするのが、吉川英治の小説・宮本武蔵に登場する本阿弥光悦(ほんあみこうえつ)などの研ぎ師です。関鍛冶伝承館では、関の名刀や現代関刀工が生み出した日本刀に、水墨画のような幽遠な刃文の美しさを見ることが出来ますよ。

隣接の春日神社はかつての刀工たちが建立!

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かつての関鍛冶刀匠の経済力や繁栄を示すのが、関鍛冶伝承館の隣にある春日神社(写真後方に本堂)です。大和の国から移り住んだ刀匠金重や兼永の一門が氏神であった春日大社を鎌倉時代に勧請して建立しました。その後も高い経済力を誇り、文化面の担い手としての関鍛冶達が、能舞台(写真手前)を建立しています。春日神社も散策してみてはいかがでしょう。

刀工は、歌(「村の鍛冶屋」)にもあるように「しばしも休まず」昔も今もよく働きます。一年間で休みは一日だけ。関では11月8日にふいごを休ませ手入れする「ふいご祭」が行われています。

刀剣女子におススメの濃州堂

刀剣女子におススメの濃州堂
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居合道用の日本刀を扱っているのが関鍛冶伝承館から車で10分ほどにある濃州堂。模擬刀、真剣のほか、各種拵え(こしらえ)を取り扱っています。社内の工房では職人たちが様々な加工を行っています。居合道や日本刀に興味のあるかたたちには、垂涎。社長の五十嵐氏(写真)は自身も国内外の大会に参加するなど居合道に造詣が深く、その人気は海外にも広がり、海外からの来訪者も増えています。

居合道や日本刀に関することに、気さくに相談に乗ってくれ、刀剣女子の訪問や質問は大歓迎です。時間があれば、型を見せてくれることも。日本刀(模擬刀)が「ヒュッ!」っと一瞬で空気を切り裂くさまは日本刀ファンならずとも必見の迫力! 刀をさやに収めるときの静かな佇まいも併せて見てください。

奥美濃の名物料理「鶏ちゃん」も楽しめる! うなぎ、あゆも味わいたい

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関鍛冶伝承館隣接の濃州関所茶屋では「鶏ちゃん」ランチ(写真)がおススメ。「鶏ちゃん」は奥美濃地方で人気料理。鶏肉と野菜をみそだれなどに漬け込み炒めます。ここでのランチには6種類の先付けが重箱でついて¥850と超お得です。

この他、関市の「うなぎ」は東海一の味と言われています。関東方面から訪れる人がいるほど。鮎の季節には「あゆ丼」が市内各店舗で味わえます。

奥美濃の名物料理「鶏ちゃん」も楽しめる! うなぎ、あゆも味わいたい
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関での一品はなんといっても「虎屋」の和菓子「小瀬の若鮎」。求肥菓子の若鮎は全国に多々ありますが、「小瀬の若鮎」のカステラのような上品な皮、やわらかいもちの触感はまさに日本刀の構造そのもの(中はやわらかく外は硬い)。刀剣女子の方々も味わってみてはいかがでしょう。これまでの「若鮎」のイメージが一変するおいしさです。こちらもあゆの季節のみで5月頃から10月中旬頃までの期間限定商品です。

おわりに、

日本刀は、鉄の鍛錬、焼き入れ、研磨のみならず、さや、つば、ひも類、など装備品、漆、象嵌、彫金、組みひも、など日本の伝統技術の粋を集めた究極の美術品。世界最高の刀剣の評価を受けています。関鍛冶伝承館でこうした日本文化や伝統を感じてみてはいかがでしょう。

関市・刃物会館前駅は、名古屋駅から名鉄やJR経由、長良川鉄道で1時間半ほど。長良川鉄道では、「うだつ」で有名な美濃市や郡上八幡など各所に足を伸ばすこともおススメ。近くには紅葉の名所大矢田もみじ谷があり、小瀬の鵜飼も有名です。

尚、関鍛冶伝承館から100mほど駅寄りに刃物会館があり各種刃物の展示販売しています。フェザー社の博物館もあり、まさに刃物なら何でもそろう街。そんな関に長良川鉄道で足をのばす旅にでかけてみてはいかがでしょう。

掲載内容は執筆時点のものです。 2015/09/17−2018/07/27 訪問

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