もうすぐお別れ!JR留萌本線で増毛駅を訪ねてみよう。

もうすぐお別れ!JR留萌本線で増毛駅を訪ねてみよう。

更新日:2015/10/30 12:02

風祭 哲哉のプロフィール写真 風祭 哲哉 B級スポットライター、物語ツーリズムライター、青春18きっぷ伝道師
JR留萌本線の終点増毛(ましけ)駅は、日本海に面した古い港町の陸の玄関であるとともに、故・高倉健さん主演の映画「駅」のロケ地として、そして何よりもそのユニークな名前から、髪に悩む男性たちの希望の地としても有名な駅。
ところが2016年度中に留萌本線の留萌〜増毛駅間が廃止される見通しとなり、増毛駅も間もなく見納めとなってしまうのです。
さあ廃止になる前に留萌本線に乗って、増毛をたずねてみませんか?

留萌本線の留萌〜増毛駅間16.7キロが乗り納め

留萌本線の留萌〜増毛駅間16.7キロが乗り納め

写真:風祭 哲哉

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JR北海道の留萌本線は、函館本線の深川駅から留萌駅を経て増毛駅に至る総距離66.8キロの路線。このうち特に乗客の減少が著しい留萌〜増毛間の16.7キロが2016年度中に廃止される見通しとなっています。

JR留萌本線は、深川を出ると、しばらくは石狩平野北端の雄大な田園地帯を走りますが、石狩沼田を過ぎると前方から山が迫ってきます。峠の手前、恵比島駅はNHKの連続テレビ小説『すずらん』の撮影が行われた場所で、今でもそのドラマでの駅名「明日萌(あしもい)」の看板が掛けられています。列車は恵比島駅を出ると空知支庁と留萌支庁との境にある峠越えとなり、峠を降りると留萌市に入ります。

留萌本線沿線の中心、留萌は日本海に面したニシン漁の港町として栄えたところ。またそのニシンの卵である数の子などの水産加工地として現在でも国内有数の規模を誇っています。かつてはここから日本海に沿って道北の宗谷本線幌延駅まで羽幌線が分岐していたこともあり、留萌の駅構内は広く、古いながらもかつての風格を醸し出しています。

留萌本線の列車は、ほとんどが深川発着となりますが、途中の留萌が終点となる列車もあるため、この先、留萌〜増毛間を走る列車は1日6〜7往復となっています(2015年10月現在。休日は1往復減)。

留萌〜増毛駅間は、ほぼ日本海と並走

留萌〜増毛駅間は、ほぼ日本海と並走

写真:風祭 哲哉

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留萌本線の深川〜留萌間は全区間が内陸の平野部と山間部でしたが、留萌を過ぎると、今度はほぼ全区間が日本海と並走し、海岸部に沿って走ることになります。
留萌〜増毛間の途中の7つの駅はすべて小さな無人駅ですが、ホームの向こうには小さな集落とともに海が見えている駅がほとんどです。

留萌の市街地を抜けると、海を挟んで向こう側には増毛の町並みと、その後ろにはほぼ垂直に切り立った厳しい断崖が見えてきます(写真)。増毛から先の海岸線は北海道の中でも特に厳しい断崖絶壁の続く場所で、かつて陸の孤島と言われた雄冬の集落が有名です。
かつての雄冬には積雪時は全面通行止めになってしまう山道しか通じておらず、冬場は増毛からの1日1往復の連絡船のみが外部へつながれた交通手段でしたが、その連絡船も時化で休航することが少なくありませんでした。

今は増毛から札幌方面へと通年通行可能な国道が開通し、連絡船も廃止されていますが、かつての増毛駅は陸の孤島と都市を結ぶ乗り継ぎの駅でもあったのです。

本当の終着駅を実感できる駅、増毛

本当の終着駅を実感できる駅、増毛

写真:風祭 哲哉

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留萌を出て30分、列車は終着の増毛駅に到着します。ホームから駅舎へと歩く途中、車輪止めによって途切れた線路が見えるため、ここが本当の終着駅であることを実感できる駅でもあります。
かつては貨物用の線路や転車台が敷設されていた広い構内も今は草に覆われた荒地になっていて、多数の職員がいた駅も、今は無人駅となっています。

増毛駅の廃止が報道されてから、休日を中心に数多くの観光客や鉄道ファンが訪れています。廃止が決まったとたんに別れを惜しむ人々が押し寄せる、とは皮肉なことですが、よくあるケースでもあります。

ただ、中には車で増毛駅にやってきて、ひととおり写真を撮り終わるとそのまま車で帰ってしまうという人もいるのですが、これは非常にもったいないですね。確かに列車の本数は少ないですが、やはりここには日本海を眺めながら列車でやってきてほしいところです。

また駅構内は自由に動ける分、列車に接近しすぎたり、線路に下りたりしないよう、マナーを守って安全に撮影をお願いします。

数多くの映画、ドラマのロケ地にも

数多くの映画、ドラマのロケ地にも

写真:風祭 哲哉

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増毛は、その情緒あふれる独特の雰囲気から数多くのドラマや映画のロケ地となっています。
増毛駅を舞台としたものでとくに有名なのが、故高倉健さん主演の映画、『駅 STATION』。健さんの扮する警察官英次の故郷が雄冬という設定だったこともあり、増毛駅から連絡船に乗るシーンや、烏丸せつこの扮するすず子が働いていた風待食堂(写真)など、増毛駅を中心としたこの一帯がたびたび登場します。
この風待食堂は現在は観光案内所となっていて、中に入ると「駅」のロケ風景の写真が飾ってあります。

増毛は古くから栄えた港町だけあって町なかにも歴史ある建物がたくさん残っています。その代表的なものの一つは国の重要文化財、旧商家丸一本間家。ここは増毛を代表する豪商で、ニシン漁全盛期の豪華な建物や装飾品が残されています。もう一つは、その本間家が始めた日本最北の酒蔵、國稀酒造。酒蔵見学も可能で、そのあとは利き酒コーナーで無料の味比べ試飲ができます。また、町の高台にある北海道最古の木造校舎「旧町立増毛小学校」も歴史ある、味わい深い建物です。

「増毛=ぞうもう」と読めば、希望も見えてくる?

「増毛=ぞうもう」と読めば、希望も見えてくる?

写真:風祭 哲哉

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増毛といえば、やはりそのユニークな名前について触れないわけにはいかないでしょう。そう、増毛を「ましけ」ではなく「ぞうもう」と読めば、髪に悩む男性たちの希望の場所となるのです。
お守りということなのでしょうか、増毛駅の硬券入場券がお土産として大々的に発売されていて、風待食堂や、留萌駅の窓口などでも購入することができます。
また、留萌本線のディーゼルカーの扉の車内広告に、さりげなく男性かつらの広告が出ていたりするのも「増毛行き」ならではのものなのかもしれません。

残された時間はあとわずか。

前述したように、留萌本線の留萌〜増毛駅間の廃止は2016年度とされています。具体的な日付はまだ発表されていませんが、いずれにせよ、残された時間はもうあまり多くはありません。
風光明媚は鉄道路線の終着駅としても、歴史的な建物の残る観光地としても、ユニークな名前のゲン担ぎの地としても魅力的な増毛駅へ、ぜひ一度訪れてみて下さい。
もちろん行き帰りは日本海に沿ってのんびり走る、留萌本線のディーゼルカーに揺られて。

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掲載内容は執筆時点のものです。 2015/09/20 訪問

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