彫刻家「北村西望」の作品群を芸術の街・八王子でフォーカス!!

彫刻家「北村西望」の作品群を芸術の街・八王子でフォーカス!!

更新日:2015/10/21 18:31

北村西望は明治、大正、昭和の時代を歩んだ、日本を代表する彫刻家です。
その作品の中に平和記念像というものがありますが、これは誰もが知っている原爆ドーム近く平和公園に設置されているもので、製作期間5年、妙実共に平和の象徴とされています。
そんな西望の作品群ですが、実は一挙に5作品鑑賞できる街があるのです。
それが芸術の街・東京都八王子市。
彫刻好きには垂涎ものの彫刻と、込められた想いを紹介します!

彫刻街構想に共鳴!魅了的な彫刻が多く設置された公園

彫刻街構想に共鳴!魅了的な彫刻が多く設置された公園
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西望自身を彫刻として残した作品「西望自刻像」が設置されているのが片倉城跡公園。
当公園ではカタクリや花菖蒲といった水性植物が数多く自生しており、その季節により彫刻群 とのマッチングは一見の価値があります。

本市は昭和50年頃より彫刻の街を目指し、現在に至るまでに104基の魅力的な彫刻を至る所に設置し終えました。
本公園も彫刻事業の一端を担っており、西望自身も公園の美しさを気に入り、自らの作品展示 場として選定した過去があります。
その最たるものが、西望自刻像。
本人も美しい自然が残る場所と共存したかったかもしれませんね。

軍神・橘中佐!

軍神・橘中佐!
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続いて紹介するのが作品名「将軍の孫」。
JR八王子駅から甲州街道方面、北へ徒歩5分。愛らしい表情と仕草が魅力的な彫刻です。
さて、将軍の孫というからには将軍の孫をモチーフにしたと思われるかもしれませんがそんなことはありません。

日露戦争の軍神・橘中佐の功績を称え、立像を作って欲しいと西望の元へ仕事の依頼がきたのです。
その作製にあたり資料として、遺品のぶかぶかの軍靴を預かったのですが、それに興味をもった西望の長男(当時三歳)が履いて、見よう見まねで敬礼をした姿がこの将軍の孫の正体です。

西望が橘中佐の立像作製そっちのけで、この作品を作ったかどうかは分かりませんが、父親として可愛い息子の姿を後世までに残したいという想いが見え隠れして、非常に面白い作品ですね。
おススメです。

大正時代という名の彫刻作品

大正時代という名の彫刻作品
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写真の作品は「若き日の母」。
こちらのモデルはいないというのが通説ですが、大正時代における西望の心象が、この作品に大きく影響しています。

大正14年の過去作品を元に製作されたもので、当時、男性像に優れた西望、女性像に優れた建畠大夢(国会議事堂の伊藤博文像作製者)と評価され、それに抗うかのように女性像を作ったといわれています。

西望自身5人の子供に恵まれ、安寧な暮らしをしていました。
その穏やかかつ反骨精神に満ちた作品が、この作品に現れているようです。
当時の状況に鑑みると、非常に面白いまた違った視点が見えてきて楽しいと思います。
こちらは先ほど紹介した、将軍の孫から道路を挟んだ真向かいで楽しむことができます。

何があっても、力強く生きる!

何があっても、力強く生きる!
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「浦島・長寿の舞」は1950年に作製された作品です。
この彫刻の両手を上げた姿、何か見覚えがありませんか?
そうです、長崎原爆資料館に隣接する平和公園に設置されている彫刻です。

実はあの平和記念像も西望が作製したもので、浦島・長寿の舞に通じるものがあります。
本作品は、西望が若かりし頃、疎開先から帰った時。
焦土と化し一変した風景、だが自分が歳をとったわけではない。
日本の土地は老いたが、自身はまだ力強く生きることができる。
そんな思いで作製された作品です。
平和記念像、浦島・長寿の舞、平和。
先ほど紹介した、片倉城跡公園にこちらも設置されていますので、あわせて観賞していただきたい彫刻の一つです。

夢進む

夢進む
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こちらは市内にある夢美術館ホワイエに設置されている彫刻です。
この作品を見て何を感じるでしょうか?
作品タイトルにある「夢」は目標なのか、睡眠中のことなのか、はたまた別の何かか!?
答えは鑑賞者の中にあるのは間違いないでしょう!
実際に行ってみて、彫刻の想い、自身の想いに耳を傾けに行ってみてはいかがでしょうか?

たゆまざる 歩みおそろし かたつむり

北村西望は1987年、102歳と随分長生きされました。
こんな逸話が残っています。

若い頃、周りの才能ある彫刻家には敵わないと思っていたそうです。
ある日、歩いていると足元にかたつむりが。
そして翌日にもそこに。

そこで思ったそうです。かたつむりのようなスピードでも続けていれば高みに到達できると。
その時に残した言葉が「たゆまざる 歩みおそろし かたつむり」。

物事できないことも多々ありますが、継続してやっていれば出来ることも沢山あると、そういった気持ちなのでしょう。
人生早足になるのもいいですが、彫刻家・北村西望のように長い目で見られるような、魅力ある作品群に会いに、八王子を訪れてみてはいかがでしょうか?

この記事の関連MEMO

掲載内容は執筆時点のものです。 2012/11/15−2012/12/08 訪問

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