温泉のイメージをそのまんま具現化。鳴子温泉「東多賀の湯」

温泉のイメージをそのまんま具現化。鳴子温泉「東多賀の湯」

更新日:2015/10/06 14:31

毎川 直也のプロフィール写真 毎川 直也 風呂デューサー
宮城県にある鳴子温泉は、周辺をのどかな自然に囲まれ、四季折々の味覚と風景を楽しめる温泉地です。
温泉に関していうと、鳴子温泉は地域内に9種類もの泉質が存在するバリエーションに富んだ温泉地でもあります。
今回はそんな鳴子温泉のなかでも、誰もが思い浮かぶ温泉のイメージを具現化したような、風情溢れる温泉宿「東多賀の湯」をご紹介します。

鳴子の環境が育む湯治宿

鳴子の環境が育む湯治宿

写真:毎川 直也

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「東多賀の湯」のすぐ向かいには道路を挟んで江合川が流れ、さらにその先には岩渕山がそびえます。食事にはこの環境で育った山菜がふんだんに使われ、目だけでなく、舌でも山の季節を感じることができます。

そんな自然に恵まれた鳴子温泉は、湯治場由来の温泉地。そこで営業を続ける東多賀の湯は、部屋数8室、1泊2食付きのプランに加え、長期滞在向けの自炊プランが用意されています。いまどき湯治という宿泊形態を選ぶ人がいるのか、疑問に思う方もいるかもしれません。しかし、ここ東多賀の湯は、アトピー性皮膚炎のかたがかゆみの緩和や傷の治癒を期待して長期間滞在する方がたくさんいらっしゃいます。

湯の力強さを感じる館内の張り紙

湯の力強さを感じる館内の張り紙

写真:毎川 直也

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受付を済ませて奥に進むと、浴室のある棟をつなぐ廊下が引き戸で仕切られており、そこには温泉の力強さを感じさせる注意書きが貼られています。

「こちらの戸は必ず閉めてください。温泉のガスが館内に入らないようにするため」

硫黄といえば独特なにおいがあります。そのにおいが館内に入らないよう、加えて硫黄の成分で電化製品へのダメージを防ぐため、引き戸を閉じているのです。

直接見たら忘れられない白濁っぷり

直接見たら忘れられない白濁っぷり

写真:毎川 直也

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浴室の扉を開けると、白濁した温泉で満たされた湯船が飛び込んできます。手を突っ込むと4〜5センチで見えなくなる色の濃さです。温泉分析書によると、湧出温度は50.2度。湯船に投入するお湯の量を調整し、源泉かけ流しを実現しています。

この色とにおいで、肌の敏感な人には刺激が強すぎるのでは…と感じるかもしれません。実際にはいってみるとマイルドな肌ざわりで、ヒリヒリするような刺激はまったく感じません。包みこまれるような優しい肌触りに、硫黄泉が持つ殺菌効果がアトピーのかゆみの緩和、傷の治癒に一役買っているのかもしれません。

贅沢すぎる上がり湯

贅沢すぎる上がり湯

写真:毎川 直也

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タンクからお湯が出ています。これは源泉を適温まで冷ました上がり湯です。この浴室には蛇口やシャワーといったものはありません。体を洗った後はこのお湯を使って流します。

温泉で体を流して浴室を後にするのは慣れていないかもしれません。ただ、これはとても贅沢なことです。湯船に温泉を張るということは、私たちが入るまでに時間が経過し、温泉の成分が酸化していきます。酸化する前の温泉に触れられる貴重な機会といえます。

壁面の謎の穴

壁面の謎の穴

写真:毎川 直也

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不意に壁に目をやると、外につながる穴が空いています。
この穴は換気のための穴です。硫化水素型の硫黄泉は温泉と同時にガスが発生します。低いところに溜まるため、換気をおこなわないとガスがたまり、事故につながる可能性がでてくるのです。この位置に換気の穴をつけることによって、入浴中に私たちの顔以上の高さまでガスがたまらないようにしているのです。

源泉から直接温泉を引いているからこそ存在する設備、本物の証拠といえます。

【終わりに】この湯を維持するということ

写真を見てお気づきのかたもいるかもしれませんが、東多賀の湯の浴室は木造になっています。その理由は、硫黄の影響で鉄の劣化が早いためです。
木造ということは湿気に弱く、維持管理が大変な浴室でもあるのです。昔ながらの雰囲気を守り続けてきた浴室と、源泉かけ流しを実現できる源泉。2つを守り続けてきた歴史を感じつつ、白濁湯、そしてにおいに包まれていただきたい温泉です。

この記事の関連MEMO

掲載内容は執筆時点のものです。 2014/12/10 訪問

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