伝説のSL排雪列車「キマロキ」が眠る丘…北海道名寄公園の鉄道遺産を訪ねる

伝説のSL排雪列車「キマロキ」が眠る丘…北海道名寄公園の鉄道遺産を訪ねる

更新日:2015/09/13 15:41

もんTのプロフィール写真 もんT チューター、フリーライター
北海道有数の豪雪地帯の中にある名寄盆地。かつてこの地は、鉄道交通の要衝であり、豪雪期もその鉄路を守るために、特殊な除雪列車が活躍していました。その名は「キマロキ」。蒸気機関によるユニークでメカニカルなSL排雪列車です。この「キマロキ」、引退後も名寄の象徴の一つとして、名寄公園に大切に保存されています。完全な編成が屋外展示で残されているのは、全国でもココだけ!旅の途中にぜひ立ち寄ってみましょう。

まずは名寄駅から散策スタート

まずは名寄駅から散策スタート

写真:もんT

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今回の散策の起点は名寄駅。目指す「キマロキ」は、宗谷本線で旭川方面から来た場合、名寄駅に到着する直前に、進行方向右手の丘の上に見えてきます。駅から徒歩20分ほどの場所なので、ぜひちょっと寄り道して、間近でその勇姿を見てみましょう。

名寄までは旭川から宗谷本線の特急「スーパー宗谷」で1時間弱。特急に乗れなくても、名寄までは列車の本数も多く、快速列車ならば約1時間半、普通列車なら2時間弱で到着です。札幌駅からは、鉄道だけでなく、高速バスによるアクセスも可能。バスターミナルも名寄駅前にあります。

名寄駅の駅舎は、1927(昭和2)年に改築された2代目。風格のある駅舎がまだまだ頑張っています。ここから駅舎を背にして正面すぐの信号を左(南)へ折れて、通りを400mほど歩きます。最初の信号機のある交差点を左(東)に折れて、宗谷本線を跨ぐ陸橋へと向かいましょう。

かつては鉄道交通の要衝…名寄駅構内を見渡す

かつては鉄道交通の要衝…名寄駅構内を見渡す

写真:もんT

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陸橋上からは、名寄駅とその広々とした構内が良く見渡せます。

今は宗谷本線のみが通る名寄駅。かつてはここからオホーツク海沿岸に向かう名寄本線、および、雪深い内陸部を経由して深川へと向かう深名線という2つの路線が分岐していました。名寄本線は1989(平成元)年、深名線は1995(平成7)年に廃線…。広い構内は、鉄道交通の要衝であった頃の名残です。

廃線となった2路線は、ちょうどこの陸橋の南で、宗谷本線から東西に分かれていました。目指す「キマロキ」は、そのうちの東側、名寄本線の廃線上に静かに眠っています。陸橋を下ったら、右手に名寄神社が見えてきます。右(南)に折れて、道なりに進んで線路沿いに南下していきましょう。

丘の上に堂々たる「キマロキ」出現!

丘の上に堂々たる「キマロキ」出現!

写真:もんT

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宗谷本線に沿って丘へと緩やかに上っていく道は、1989年に廃線となった名寄本線の跡。その道を進むと、やがて前方に「キマロキ」の堂々たる編成が姿を現します。

「キマロキ」の「キ」は機関車のこと。その名の通り、蒸気機関車を前後に従えた特殊な編成であることが良くわかります。先頭は「キューロク」の愛称を持つ9600型蒸気機関車。そして馬力のあるD51(デゴイチ)が編成を後押しするというスタイルでした。

機関車は前照灯が点灯し、今にも動き出すかのような感じ…。現役当時の雰囲気をできる限り再現したかたちで展示されています。

この「キマロキ」、1970年代前半まで活躍していましたが、蒸気機関車が国鉄から姿を消していくのと同時に引退…。それを名寄市が譲り受け、大切に保存してきました。現在は準鉄道記念物に指定されています。

「キマロキ」編成の西側は、障害物などが何もなく、芝生が一面に広がっていますので、きれいに写真も撮れます♪
撮影にこだわるなら、午後遅くから夕方の射光線の時間帯に訪ねるのがおススメですね。

雪と戦った…排雪のメカニズムにも注目!

雪と戦った…排雪のメカニズムにも注目!

写真:もんT

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入場無料の公園内に、蒸気機関車が2台も保存・展示されているだけでも、珍しいことですが、間にはさまれた「マ」と「ロ」はSL以上に希少価値があります。「キマロキ」編成の各車両に関する解説ボードに注目しておきましょう。

まず先頭の機関車の次に連結されている「マ」は、線路沿いの雪壁を崩して雪を線路上にかき集めるマックレー車。この場所の展示では、「マ」の後に「ロ」が連結されていますが、実際の排雪作業時は「マ」と「ロ」が切り離され、マックレー車はかき集めた大量の雪を、背後の線路上に残していきました。

その雪を飲みこみ、投排雪するのが、その次の「ロ」すなわちロータリー車の役目。マックレー車から少し間隔をおいて後ろを走り、蒸気機関で回転する赤いロータリー羽根で雪を取り込み、線路脇20〜30m遠方に投雪しました。
このような排雪作業、1970年代初めころまで、豪雪地帯の国鉄路線で行われていました。

各車両とも日中は運転室に入って、中を見学できます。ユニークな構造をすみずみまで観察していきましょう。
また、隣接する北国博物館(入館料大人¥200)内にも、「キマロキ」に関する資料がいくらか展示されています。興味のある方は、こちらもぜひ見ていって!

おわりに

とてもユニークでメカニカルな「キマロキ」。その勇姿を冬の雪景色の中でぜひ見たいものですが、10月中旬からは4月下旬頃までは完全に冬眠に入ります…。錆や腐食を抑え、少しでも良い状態で長く保存するために、編成全体が完全にシートで覆われるのです。したがって「キマロキ」の見学は、ぜひ冬の訪れの前にどうぞ!

「キマロキ」引退からすでに40年…。鉄道利用客は減少しても、豪雪期に列車の運行を確保するという伝統は受け継がれています。冬季は、今や「キマロキ」に代わって宗谷本線を守るラッセル車の活躍を見に行くのもおススメです。

雪国の貴重な鉄道遺産、名寄に立ち寄った際はぜひ見ていってくださいね。

掲載内容は執筆時点のものです。 2015/08/05 訪問

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