中秋の名月とともに!王朝文化の香りを残す奈良市「采女祭」

中秋の名月とともに!王朝文化の香りを残す奈良市「采女祭」

更新日:2023/08/14 17:01

乾口 達司のプロフィール写真 乾口 達司 著述業/日本近代文学会・昭和文学会・日本文学協会会員
中秋の夜、全国各地でさまざまな行事が催されることでしょう。古都・奈良でも王朝文化の香りを伝える優雅な催しがとりおこなわれます。猿沢池でおこなわれる「采女祭」です。今回は奈良市の「采女祭」の魅力をご紹介しましょう。

猿沢池のほとりに建つ采女神社

猿沢池のほとりに建つ采女神社

写真:乾口 達司

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「采女祭(うねめまつり)」は奈良市・春日大社の末社である采女神社の例祭。毎年、中秋の日に執り行われます。写真は興福寺南方の猿沢池のほとりに鎮座する采女神社。興味深いのは、この采女神社、猿沢池に背を向けるようにして本殿が建てられているのです。いったいどうして?

采女神社の名の由来となった「采女」とは、後宮で天皇につかえる女官のこと。『大和物語』によると、奈良時代、天皇の寵愛を受けた一人の采女がおりました。ところが、采女に対する天皇の関心は次第に薄れ、そのことを悲観した采女は猿沢池に身を投げ、命を絶ったのです。人びとは采女の霊を慰めるために神社を建立しますが、みずから命を絶った猿沢池を見るにしのびず、采女は社を後ろ向きに変えたのでした。采女神社が猿沢池に背を向けるようにして建っているのには、このような由緒来歴があったのです。

大きな花扇に注目!夕刻からはじまる花扇奉納行列

大きな花扇に注目!夕刻からはじまる花扇奉納行列

写真:乾口 達司

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中秋の日は、午後5時から天平衣装に仮装した関係者による花扇奉納行列が執り行われます。そのなかにはミス奈良や奈良市と姉妹都市を結んでいる福島県郡山市の「ミスうねめ」、稚児などもふくまれています。出発点はJR奈良駅前。一行は采女神社を終着点として、三条通りを練り歩きます。

なかでも、注目していただきたいのが、写真の中央に写る大きな花扇。秋の七草で飾られた花扇の大きさは、何と2メートル!華麗な時代行列ともども必見です。

中秋の名月を愛でながら!采女たちを乗せた管弦船

中秋の名月を愛でながら!采女たちを乗せた管弦船

写真:乾口 達司

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午後6時からは春日大社の神官によって神事が執り行われます。そして、午後7時、ミス奈良や「ミスうねめ」など、一行を乗せた2隻の管絃船が猿沢池を巡ります。

写真は采女を乗せた管弦船。管弦船に乗せられた花扇は、巡回後、池中に投じられ、亡き采女の霊をなぐさめます。管弦船の巡回中は南都楽所による雅楽も奏じられ、雰囲気は満点。夜空には中秋の名月も浮かび上がるので、ぜひ、夜空も見上げてみましょう。

当日に限って授与される「糸占い」

当日に限って授与される「糸占い」

写真:乾口 達司

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釆女祭の日に限り、釆女神社では特別に「糸占い」と呼ばれるものが授与されます。「糸占い」とは、中秋の名月の月明かりのもとで縫針に赤糸を通せば、願いが叶うと伝えられている授与品。願い事のある人は釆女神社にてお求めください。

采女になった気分が味わえる?管絃船の特別乗船体験

采女になった気分が味わえる?管絃船の特別乗船体験

写真:乾口 達司

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もう一点、お伝えしておきたいのは、祭のとりおこなわれる数日前から、普段、乗ることができない管絃船に乗船させていただけること(有料)。猿沢池の上からは興福寺・五重塔(国宝)なども眺められ、地上とはまた違った景色が堪能できます。あなたも采女になった気分で猿沢池をめぐってみませんか?

采女祭を観覧しよう!

采女祭がどのようなものか、おわかりいただけたでしょうか。行事がとりおこなわれる猿沢池周辺は近鉄奈良駅から徒歩5分の距離にあり、アクセスも快適。中秋の名月を愛でながら、雅な王朝文化をご堪能ください。

2023年8月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2014/09/08 訪問

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