館内の展示品で満足しないこと!京都国立博物館と館外展示品

館内の展示品で満足しないこと!京都国立博物館と館外展示品

更新日:2023/09/13 13:05

乾口 達司のプロフィール写真 乾口 達司 著述業/日本近代文学会・昭和文学会・日本文学協会会員
「京都国立博物館」といえば、東京国立博物館・奈良国立博物館・九州国立博物館と並ぶ日本四大ナショナルミュージアムの一つであり、年間を通じて数々の展覧会がもよおされているため、それを目当てに訪れる方も多いのではないでしょうか。しかし、京都国立博物館の魅力は、館内の展示品だけでは語れません。今回は建物自体が文化財である明治古都館や館外にある展示品を通じて、京都国立博物館の新たな魅力をお伝えしましょう。

近代建築の傑作!片山東熊設計の明治古都館

近代建築の傑作!片山東熊設計の明治古都館

写真:乾口 達司

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旧本館にあたる明治古都館は、国の重要文化財。京都国立博物館の顔というべき存在であり、その竣工は1895年(明治28)。設計者は迎賓館(旧赤坂離宮)や東京国立博物館表慶館、奈良国立博物館などを設計した宮内省内匠技師・片山東熊です。延床面積は3015平方メートル。17世紀のバロック様式などを踏まえながらも京都を取り巻く自然との調和がはかられている点に、当館の特色があります。

明治古都館は、耐震改修のため、2015年より休館中。現在、内部への立ち入りは禁止されているため、その外観を楽しみましょう。

近代建築の傑作!片山東熊設計の明治古都館

写真:乾口 達司

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特に注目していただきたいのは、正面玄関の上の破風に刻まれた彫刻。刻まれているのは美術工芸の神とされる「毘首羯磨(びしゅかつま)」と「技芸天(ぎげいてん)」であり、明治時代に活躍した彫刻家・竹内久一によって制作されたものです。

芸術や文化をテーマにした博物館に飾れるにふさわしい彫刻であると思いませんか?

じっくり観察しよう!細部の意匠

じっくり観察しよう!細部の意匠

写真:乾口 達司

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写真は屋根部分を撮影したもの。屋根にしつらえられた丸窓、背後に立つ避雷針の意匠もオシャレですね。

じっくり観察しよう!細部の意匠

写真:乾口 達司

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側壁には、ご覧のような不思議な意匠も見られます。バロック建築を強く意識させる意匠ですね。

じっくり観察しよう!細部の意匠

写真:乾口 達司

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上ばかりを見ず、床下の通風孔にも目を向けてみてください。ご覧のようなおしゃれな意匠が見られますよ。

こちらも重要文化財!正門

こちらも重要文化財!正門

写真:乾口 達司

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写真は敷地の西側に設置された正門。明治古都館と同じ時期に、同じく片山東熊によって設計されました。明治古都館と同様、現在、国の重要文化財になっています。

門の横には、ドーム型の屋根を持った建物も付設しています。こちらはかつて入館用の札売場となっていました。現在は団体専用の入口として使われており、個人の方は南門から入退館するため、つい見落としてしまいがち。あわせて見学しておきましょう。

こちらも重要文化財!正門

写真:乾口 達司

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赤煉瓦造りの外壁も当時のものです。

館外に展示された工芸品の数々

館外に展示された工芸品の数々

写真:乾口 達司

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館外の「西の庭」と呼ばれる一角には、石像物を中心にして、貴重な文化財が多数展示されています。

写真はそのうちの一つ。地元・京都の鴨川にかかっていた五条大橋の石材です。橋脚3本、橋桁2本から成り、橋脚には西暦1589年を示す「天正拾七年五月吉日」の銘も刻まれています。

館外に展示された工芸品の数々

写真:乾口 達司

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写真の手前に見られる巨大な鉄の輪、いったい何だと思いますか?実はこれ、かの豊臣秀吉が建立した方広寺大仏殿の柱を支えていた鉄の輪なのです。

方広寺大仏殿は現存しませんが、当時、こんなに太い柱が使われていたことに驚く方も多いことでしょう。

館外に展示された工芸品の数々

写真:乾口 達司

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珍しいのは、慶長年間(1596年〜1615年)に建てられたキリシタン信徒の墓碑。右側は京都市上京区一条通御前西入の成願寺境内、左側は下京区醒ヶ井五条の安養院境内より、それぞれ発見されました。当時、キリスト教が禁制の対象となっていたため、当時の墓碑が現存していることはきわめて貴重です。

墓碑には十字架や洗礼名も刻まれています。おわかりになりますか?

ロダンの傑作彫刻も!東の庭と『考える人』

ロダンの傑作彫刻も!東の庭と『考える人』

写真:乾口 達司

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意外と知られていないのは、明治古都館の裏手(東側)の区画。「東の庭」と呼ばれる小高い丘の一角には、朝鮮半島の石造物を各所に配置した庭園や数寄屋造りの茶室「堪庵」も設けられています。

ロダンの傑作彫刻も!東の庭と『考える人』

写真:乾口 達司

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中腹には、方広寺の石垣の裏から出土した五輪塔や石仏も集められています。特に五輪塔は笠形の大きな火輪に対して、円形の水輪が小さく、何ともかわいらしく感じられます。

東の庭まで足を運ぶ人は少ないため、静かに散策することができますよ。

ロダンの傑作彫刻も!東の庭と『考える人』

写真:乾口 達司

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こちらの彫刻、ご存知の方も多いのではないでしょうか。そう、これはまさしくオーギュスト・ロダンの傑作『考える人』です。

日本国内には数体のオリジナルが存在しており、京都国立博物館の敷地内に置かれているのも、そのうちの一体。日本国内の文化財を多数収蔵している京都国立博物館でロダンの『考える人』に出合えるなんて、意外性があって面白いと思いませんか?

京都国立博物館の魅力の一端がおわかりいただけたでしょうか。ほかにも、2013年竣工の平成知新館(設計・谷口吉生)など、敷地内にはまだまだ見所が満載。特別展の観覧だけで満足せず、歴史的建造物の数々や館外の展示品にも目を向け、京都国立博物館を満喫してください。

京都国立博物館の基本情報

住所:京都府京都市東山区茶屋町527
電話番号:075-525-2473
休館日:月曜日(祝日・休日の場合は開館、翌日の火曜日休館)/年末年始など

2023年9月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

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掲載内容は執筆時点のものです。 2023/04/30 訪問

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