埼玉県・見沼自然公園でたくさんの四季の生きものに出会う旅

埼玉県・見沼自然公園でたくさんの四季の生きものに出会う旅

更新日:2015/08/23 20:41

鷹野 圭のプロフィール写真 鷹野 圭 首都圏自然ライター
見沼自然公園は、約1260haにおよぶ広大な田園地域「見沼田んぼ」の一角に位置する自然いっぱいの公園です。遠い昔、徳川家康の命によって新田開発や用水路整備が始まり、やがて八代将軍吉宗の時代に今ある見沼田んぼの原型ができました。現在も当時さながらの武蔵野の里山風景を残すこの地区において、大きな池を中心に整備された見沼自然公園は、レクリエーションと自然体験を共に楽しめる埼玉県でも稀有なスポットです。

今の見沼の礎をつくった、偉大な土木技術家に敬意

今の見沼の礎をつくった、偉大な土木技術家に敬意

写真:鷹野 圭

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公園の正面入り口から駐車場を通り抜けると、公園の軸である野鳥の池が見えてきます。この池の畔に堂々と立つ写真の像。将軍徳川吉宗の時代に、日本市でも有名な享保の改革の一環として、見沼田んぼの要となる見沼代用水を開削した井沢弥惣兵衛為永(いざわやそべえためなが)の銅像です。彼が利根川から水を引いて農業用水を造ったことにより、広大な田んぼを整備することに成功しました。言うなれば、今の豊かな見沼田んぼの創設者といってもいい人物なのです。

ここで整備された見沼田んぼは、時を経て昭和時代、台風による水害を大幅に軽減したことで高い遊水能力があることが判明しました。以降高度成長期の煽りを受けることもなく、長らく美しい田園風景が維持されてきたのです。このことは今話題の生物多様性にももちろん大きく貢献しており、水生昆虫やカエル、それを狙うヘビやタカなどの高次消費者が集まり、健全な生態系を作り上げています。

公園ひいては見沼地区を散策する際には、まずこの銅像へ。見沼の祖と言っても過言でない人物だけに、初来園時は忘れずにご挨拶しておきましょう(笑)。

野鳥の池を中心に、トンボの楽園となっています

野鳥の池を中心に、トンボの楽園となっています

写真:鷹野 圭

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公園の中心にある“野鳥の池”は、自然護岸で植物の豊富に生えた岸辺も多く、そうしたエリアはトンボたちにとって格好の生息場所となっています。都心部でもお馴染みの赤トンボたちやシオカラトンボはもちろんのこと、郊外でないとなかなかお目にかかれない種もここではごく当たり前のように飛びまわっています。写真のチョウトンボもその一つ。不思議な光沢のある美しい大きな羽で、まさしくチョウのようにひらひらとゆっくりと舞います。真夏であれば池の周辺だけでなく、ピクニックなどによく利用される芝生広場でも数え切れないほどたくさん飛んでいますので、都心で減っているというのが信じられないほど。これも、見沼田んぼを軸としたこの地区の自然が健全に保たれていることの証といえるでしょう。

また、池から少し離れれば豊かな草原と森林、そして湿地帯があり、ここもまたトンボを始めとした昆虫たちの隠れ場。特に木々に囲まれた薄暗い湿地帯では、夏から秋にかけてメタリックな緑色の身体が美しいハグロトンボが数多く舞います。

公園からちょっと足を延ばして、見沼田んぼへ!

公園からちょっと足を延ばして、見沼田んぼへ!

写真:鷹野 圭

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公園を出て一本車道を渡ってみれば、そこには地平線が見えてきそうなほど広々とした水田が……。これこそトップでも挙げました見沼田んぼです。個人所有の田んぼですのでもちろん下手に畦道などに足を踏み入れるのはご法度ですが、田んぼの中を流れる川に沿って公道が通っていますので、田園風景を存分に間近で堪能いただけます。田植えの初夏、緑の濃くなる真夏、収穫の秋……冬場には稲穂も刈り取られて殺風景になってしまいますが、今度はたくさんの野鳥が飛来してバードウォッチングの名所となります。オオタカやチョウゲンボウなど、猛禽類の飛来も多く確認されている人気スポットです。

もちろん冬場以外でも、この田んぼでは数多くの生きものが観察できます。春から夏にかけては、ツチガエルやヌマガエルなどのカエルの仲間、それを狙うヤマカガシ(ヘビ)、そして河原ではシーズンを問わず頻繁にカワセミが出現。里山の生態系を知りたいのであれば格好のスポットといえるでしょう。ただし、管理された公園ではありませんので自販機は置いておらず、日よけもないので基本的に常に直射日光にさらされます(汗)。特に真夏は極端に気温が上がりやすいので、熱中症対策は慎重に!

冬は一転、バードウォッチングのメッカに!

冬は一転、バードウォッチングのメッカに!

写真:鷹野 圭

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自然豊かな見沼自然公園では、冬になると北国や山地からたくさんの野鳥が飛来します。中心となるのは、その名の通りといいますかやはり野鳥の池。冬になると多くのカモ類が飛来します。そのカモを狙って時折現れるのが、オオタカなどの猛禽類。上空を旋回しているか、時には近くにある大きな鉄塔などを足場とし、獲物を狙っていることも。人が近くにいる間はなかなか降りてくることはありませんが、運が良ければダイナミックな狩りが見られるかも?

その他、背丈の低い草原にはシロハラやアオジなどが、森林にはベニマシコなどがコンスタントに毎年姿を現します。池の畔で定点観察するのもいいですが、運動がてら園内を歩き回って様々な鳥を探してみるのも面白いですよ。

思わずニッコリ。人とカモのこの距離感!

思わずニッコリ。人とカモのこの距離感!

写真:鷹野 圭

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餌付けをされているのか、普段からあまりに人が多いので慣れてしまっているのか、ここの野鳥の池では、接近してもここのカモたちはなかなか逃げ出そうとしません。足元で堂々と腰を下ろしたり、時には足の間を通り抜けたり……生態系の観点から見れば色々と問題もあるのかもしれないですが、これもまた人と野鳥の一つの共存スタイルと言えるのかもしれません。子どもたちがカモと一緒に走り回っている姿は、何とも微笑ましいもの。寒さの厳しい冬に、ほのかに心がほっこりしてきます。

冬場、池の周囲にいるカモは、カルガモを始めとしてオナガガモ(写真手前に写っているもの)、ヒドリガモ、マガモ、コガモなどが中心。まれに首都圏では少ないオカヨシガモも訪れます。その他にカモのような鶴の仲間であるバンやオオバンなども現れます(彼らは留鳥でオールシーズン見かけますが、冬場にカモに混じってエサをねだりに来ます)。

驚くほど鳥が近いので、せっかくなら色々な写真撮影にチャレンジしてみましょう。低い視点から見上げるように撮影してみると、小動物の視点のように見えて面白いです(写真参照)。カモたちの表情も普段とは違って見えてくることでしょう。

在りし日の里山ならではの春夏秋冬があります

昔ながらの田園が延々と広がる見沼地区では、春の野の花、夏の昆虫、秋の紅葉、冬の野鳥……かつて日本中でごく当たり前に見られた四季の移ろいが今でも明確に見られます。大宮駅または浦和駅からバス1本で行ける立地ですが、田舎に出かけたかのような自然豊かな里山風景を存分に堪能できることでしょう。近隣に飲食店がありませんので、お弁当などを持参して訪問するのがベスト。池のすぐ近くに広い芝生広場がありますので、ご家族でピクニックをされるのにも最適です。

【アクセス】
JR「浦和駅」または「大宮駅」より国際興業バスで約30分、停留所「締切橋」下車して徒歩1分

掲載内容は執筆時点のものです。 2013/12/15 訪問

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