祝・世界遺産登録!五島列島・頭ヶ島天主堂と上五島教会めぐり

祝・世界遺産登録!五島列島・頭ヶ島天主堂と上五島教会めぐり

更新日:2019/06/18 11:46

風祭 哲哉のプロフィール写真 風祭 哲哉 B級スポットライター、物語ツーリズムライター、青春18きっぷ伝道師
長崎県を中心とした教会群とキリスト教関連遺産は、ユネスコの世界遺産暫定一覧表に登録されて以来、世界遺産への登録に向けたさまざまな活動が行われていましたが、ついに2018年6月、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」として見事に世界遺産登録を果たしました。

今回はその構成資産のひとつである頭ヶ島天主堂をはじめ、特に自然豊かで美しい、五島列島の新上五島町にある代表的な教会めぐりをご案内します。

五島列島、新上五島町へのアクセスと教会めぐりの交通機関

五島列島、新上五島町へのアクセスと教会めぐりの交通機関

提供元:ながさき旅ネット

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五島列島は、五島のうち最大の福江島を中心とする南西部の島々を「下五島(しもごとう)」、2番目に大きな中通島を中心とする北東部を「上五島(かみごとう)」と呼んで区分されることがあります。両者の特徴を非常に大まかに表現すると、下五島は列島の中心都市、五島市がある比較的開けた地域、上五島はより一層豊かな自然が残る未開の地域、ということになるでしょうか。

現在、上五島地域は、中通島と若松島を中心として、2005年に周辺5町が合併して新上五島町となっています。新上五島町へのアクセスは、博多から夜行フェリーで中通島の青方港まで約6時間。長崎からは中通島の有川港まで高速船で2時間、佐世保からは同じく有川港まで高速船で1時間20分、フェリーで約3時間で結ばれています。

新上五島町内の主な地域へは路線バスで行くことができますが、本数が少ない路線も多いため注意が必要です。一方、新上五島町は電気自動車の普及が進んでいて、レンタカーでも気軽に借りることができるので、コンパクトで環境にも優しい、こうしたエコカーで教会めぐりをするのもおススメです。

世界遺産の頭ヶ島天主堂は、珍しい石造の教会

世界遺産の頭ヶ島天主堂は、珍しい石造の教会

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新上五島町を代表する教会といえば頭ヶ島天主堂。ここは町内で唯一、今回の世界遺産として構成される12の資産のうちのひとつとなっています。

頭ヶ島は、中通島の東端と頭ヶ島大橋で結ばれた小さな島。1軒をのぞいて皆キリシタンだったという頭ヶ島の信徒は、明治政府のキリシタン弾圧(五島崩れ)の際、牢から全員逃げ出して島を離れ、迫害が終わってからこの地に戻ってきたといいます。

この珍しい石造の教会は、上五島・中通島(現在の新上五島町)出身の棟梁であり、建築家である鉄川与助により設計施工されました。島の外から石工を招き、信者たちが近くの島から切出した石を積上げて、11年以上を費やしながら完成させた信仰の結晶だと言われています。

世界遺産の頭ヶ島天主堂は、珍しい石造の教会

写真:風祭 哲哉

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頭ヶ島天主堂の建物の内部には柱がなく、天井や壁面など随所に五島のツバキをモチーフにした花柄文様があしらわれていることから「花の御堂」と言われています。外観は石造で男性的、重厚なイメージですが、内装は女性的で華のある、独特の教会として、国の重要文化財にも指定されています。

世界遺産の頭ヶ島天主堂は、珍しい石造の教会

写真:風祭 哲哉

天主堂の目の前には、真っ青な東シナ海を見下ろすように、頭ヶ島キリシタン墓地が広がっています。
頭ヶ島は、安政年間の1858年頃から入植が始まったのですが、役人の目もあまり届かないことから、多くのキリシタンが潜んでいたようです。五島や長崎、天草をはじめとする潜伏キリシタンたちに守られてきた教会は、この頭ヶ島同様、昔は小船でしか来られなかったような海と崖の果てに数多く残されています。
その環境の厳しさと、信者たちの信仰の深さは比例するのでしょうか、そんな場所に残された教会ほど、厳かで、気高く、美しく感じられるのです。

<頭ヶ島天主堂の基本情報>
住所:長崎県南松浦郡新上五島町友住郷頭ヶ島638
事前連絡先(1日前まで):095-823-7650  
当日連絡先:0959-42-8118
見学受付時間:9:00〜18:00(ミサ等の教会行事の際は見学不可)
アクセス:上五島空港からシャトルバス(パーク&ライド形式となり、車での訪問はできません。詳細は関連MEMO参照)

レンガ造り教会の代表的作品、青砂ヶ浦天主堂

レンガ造り教会の代表的作品、青砂ヶ浦天主堂

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中通島の北部、奈摩湾を見下ろす小高い場所に建つのが青砂ヶ浦天主堂。1910年建立の現教会堂は、鉄川与助設計施工によるもので、眼下の奈摩湾から信徒が総出で煉瓦を運びあげて造られました。この天主堂は、内外ともに意匠が優れているため、日本人の手による初期煉瓦造キリスト教建築の代表的作品の一つとして2001年に国指定重要文化財に指定されました。

この教会は残念ながら世界遺産を構成する資産からは外れてしまいましたが「世界遺産の構成資産と一体的に保存・継承していく資産」として五島列島を代表する教会のひとつです。

レンガ造り教会の代表的作品、青砂ヶ浦天主堂

写真:風祭 哲哉

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青砂ヶ浦天主堂の魅力はなんと言ってもステンドグラスの美しさ。赤、青、緑などの鮮やかな色の窓枠の中に整然と描かれる花々。
特に美しいのは、夕刻の時間帯。教会堂の正面入口が西を向いているため、夕刻時は正面の丸窓から差し込んでくる太陽の光が祭壇方面へと一直線に伸びてくるのです。それは春分・秋分の頃、丸窓の色が祭壇の中央に映えるように建築されているからです。

レンガ造り教会の代表的作品、青砂ヶ浦天主堂

写真:風祭 哲哉

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青砂ヶ浦という名の通り、この教会は美しい奈摩湾の海岸を見下ろす高台にあります。アクセスは新上五島町の中心部、青方バスターミナルから路線バスで約20分と、比較的便利な場所にあります。

<青砂ヶ浦天主堂の基本情報>
住所:長崎県南松浦郡新上五島町奈摩郷1241
見学受付時間:9:00〜17:00(ミサ等の教会行事の際は見学不可)
アクセス:青方バスセンターから西肥バス立串行きで20分、教会前下車すぐ

冷水教会、大曽教会も新上五島町教会めぐりの王道コース

冷水教会、大曽教会も新上五島町教会めぐりの王道コース

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青砂ヶ浦教会から奈摩湾をはさんでちょうど対岸にあるのが冷水教会(ひやみずきょうかい)。この教会は、頭ヶ島天主堂や青砂ヶ浦教会を手掛けた鉄川与助が初めて自ら設計施工した教会として知られています。

白壁の木造で質素な造りですが、トンガリ帽子のようなキュートな塔の建つ聖堂は、重厚なレンガ造りの教会にくらべて女性的なイメージです。

冷水教会、大曽教会も新上五島町教会めぐりの王道コース

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新上五島町の中心地、青方から比較的近くにあるのが大曽教会。こちらも鉄川与助の設計・施工による教会です。眼下に青方湾を望む木々に囲まれた丘の上にあり、八角形のドーム型をした鐘塔を持ち、上五島で最も美しい、といわれることもある教会です。

冷水教会、大曽教会も新上五島町教会めぐりの王道コース

写真:風祭 哲哉

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今回紹介したすべての天主堂の棟梁として名前が出てきた鉄川与助は、日本を代表する教会建築家。1879年、上五島の中通島(今の新上五島町)に生まれ、27歳で大工棟梁の長男として家業を継いでからは、外国人宣教師からの教えを受けながら、木造、レンガ、石造などさまざまな種類の教会を造り、97歳で生涯を閉じるまで、信徒たちの想いを背負って美しい教会堂を生み続けたのでした。

与助は、特に自らの出身である五島列島の島々に多くの有名な教会を残し、先ほど紹介した「頭ヶ島天主堂」、現在は無人島となっている小値賀町野崎島にある「旧野首教会」、奈留島にある木造の美しい教会「江上天主堂」の3つが、世界遺産の構成資産となっています。

頭ヶ島天主堂および新上五島の教会めぐりの注意点

五島列島、とくに上五島の島々は静かで美しいところばかり。反面、数多くの観光客を受け入れるためのインフラはまだまだ十分とは言えません。富岡製糸場などの過去の例を見てもわかるように世界遺産登録と同時にたくさんの人々が押し寄せることは想像に難くありません。

そのため、こうした教会めぐりにはいくつかのルールがあります。
まず、今回世界遺産に登録された教会見学には、事前連絡が必要となりました(詳細は下記関連MEMOを参照)。特に頭ヶ島天主堂は直接車で乗り入れることができず、シャトルバスに乗り換える必要がありますので、必ず事前連絡のうえ予約が必須です。ご注意ください。

また世界遺産でなくとも教会訪問の際は見学マナーを守り、厳粛な雰囲気の中でぜひ心静かにお過ごしいただくようお願いいたします。

※写真撮影・掲載に当たっては大司教区の許可をいただいています

2018年7月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2012/09/12 訪問

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